「守る楽しみ」を経て「止める技術」へ。GK育成に不可欠なプロセスとは?【5月特集】
2019年05月08日
育成/環境今、世界各国はジュニア年代のGK育成プランを独自に練り上げている。一方で日本はJクラブでさえ、GK育成についてはまだ十分ではない。町クラブで言えばそもそもGKコーチが在籍していないケースが多く、名を連ねていたとしてもしっかり指導できているかは疑問が残る。もちろん、各クラブはGKを育成するための努力はしているが、先進国のGKトレーニング、メソッドをそのまま導入したとしても指導者が理解していなければ意味がない。そこで、5月は「GKの育成に向き合う」を特集テーマに、地域の現場も知る二人のGKコーチに話をうかがった。第1回目は日本とタイでプロサッカー選手として活躍したノグチピント・エリキソンさんに、「“いま”現場でできるGK育成」について語ってもらった。
【5月特集】GKの育成に向き合う
文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部 取材協力●株式会社ビィズデザイン
まず、子どもにGKの楽しみを感じてもらう!
――5月は『ゴールキーパー』(以下、GK)を特集することにしました。理由は、世界でもGKという分野がようやく体系化されてきていて、専門的な指導がなされるようになってきた印象があります。日本にもそういった情報が入ってきていますが、それをそのまま地域の町クラブに持ち込めるかというとなかなか難しい部分もあると感じています。実際、どうグラスルーツの現場に組み込めばいいのか。そういうことに関して、ピントさんはどう思っていますか?
ピント「町クラブもセレクションをしますが、レベルの高い選手はJクラブのアカデミーに集まっています。当然、ヨーロッパで行われているようないいことは取り入れたらいいと思いますが、町クラブでそのままは厳しいのではないでしょうか。やっぱり練習をしようとすると、できないことも多いです。
だから、順序が大事になってくる。
私も町クラブで指導していますが、苦戦することも多々あります。3、4月にスペインに行ってきて、おもしろいトレーニングをたくさんやっていたので『日本でもやろう』と思って試してみたのですが、しっくりきませんでした。リズム感とか、感覚がちょっと違うんですよね。スペインの選手たちはリズムに乗って軽快にプレーしていました。なんだか日本だと少し硬いんです。楽しめていないというか、やらされている感があったりしてそういう受け身の選手が多い印象を受けています」
――その原因は何だと思いますか?
ピント「例えば、ジュニア年代に対してはがっつり練習というより、『ボールに触る楽しみ』『守る楽しみ』みたいなトレーニングをしています。子どもたちも『止めたいな』とか、『コーチ、シュート打って』とか、『次、僕ね』とか、彼らからも『GKが好きだな』という気持ちが伝わってきます。選手たちはそういうことを続けていきたいんじゃないかと思います。
町クラブが指導しているのはちょっとサッカーを経験したお父さんコーチだったり、スタッフだったりするわけです。本当にGKのことを知っている人というのは少ないのが現状です。そういう意味では、これから少しずつGKのことにスポットライトが当たってくるんじゃないかな、と」
――ジュニア年代では、特に楽しさは大事な要素です。どういうマインドでGKの練習に取り組んだらいいでしょうか?
ピント「私はトップレベルの選手たちがプレーしている試合を見せるのが一番いいと思います。きっと『ちょっとやってみたい』と、かっこいいプレーは真似したがるんです。例えば、子どもって『飛ぶ』のが好きなんですよ。でも、GKを知っている人は、飛ぶことが本当はよくないことだと知っているんです。でも、『飛ぶことは楽しい』というところからGKの道に入っていかないと今後やっていく上でも続いていかない。
GKは責任の大きなポジションですし、精神的に強くならないといけないポジションですから。何か言われてシュンとしてしまうところですが、『うるさい』と言えるくらい強いハートを持っていないと続けられない。でも、日本だと『なんでそんなこと言うの?』となる選手が多いような気がします。海外のGKは感情を表に出してプレーしているので、周囲の選手からしても理解しやすいですよね」
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