「守る楽しみ」を経て「止める技術」へ。GK育成に不可欠なプロセスとは?【5月特集】
2019年05月08日
育成/環境
【日本とタイでプロとして活躍したノグチピント・エリキソンさん】
GKは発育発達に合わせた練習が重要だと思う
――感情の側面に目を向けても、今GKをやっている子どもたちはあまり手本となるようなシーンを見ていることが少ないのかもしれません。
ピント「それはメディアの登場回数が少ないのを見ても明らかです。Jリーグの試合でもGKにスポットライトが当たる機会はフィールドよりも少ないです。特に、最近のJリーグのGKは韓国人選手がたくさんいます。そういうことを含めて『寂しいな』と感じます。私自身も『どうしたらいいんだろうな』とはっきりした答えは出せていないのですが、ただ、明確なのは『日本人GKを増やしていく』しかないです。トップリーグで活躍しているGKが日本人だと、胸を張って言えるように。
当然どのクラブも勝ちたいから優秀なGKを獲得したい気持ちはわかるのですが、裏を返せば『育てられていないんじゃないかな』と思います。
もしかすると、GK界にとっては昔ジーコさんやレオナルドさんがJリーグに来た時のようなタイミングなのかもしれませんが、それだったらヨーロッパでバリバリ活躍しているGKを連れて来た方がお手本になります。今は手っ取り早く日本に近い韓国人GKを補強しているように思えてなりません。確かに日本人GKに比べると、体が大きくて、精神的にも強いです。戦えるという側面から見ても選ばれるのは理解できます。だからこそ二番手、三番手になっている日本人GKがその現実をどう受け入れ、練習に取り組んでレベルアップをはかるのかは大事です。違うチームに移籍するのか、J2やJ3で実戦経験を積むのか。いろんな考え方ができますが、現状は少し寂しいですよね。
だから、JリーグやJFAがもっとGKの育成に力を入れてほしいと思っています。もちろん、『やっている』とは言っていますが、なかなか目に見えてこない。例えば、子どもたちに『GKをやりたい人?』と聞くと、『僕、やりたい』という子はまだまだ少ないです。でも、『すごい! 速いボールを止めた』というシーンをたくさん目にすれば、『ちょっとやってみようかな』と思う子も出てくると感じるんです。そういうスタートが自然なのかなとも思います」
――ピントさん自身はどういう段階を踏んでGKを指導していくのがいいと思いますか?
ピント「簡単に説明すると、ジュニア年代は技術はもちろんなのですが、まず『楽しい』と感じてもらうトレーニングをしています。仲間たちとワイワイしながら、どんなに速いボールが向かって来てもボールを怖がらずに飛び込むというメンタリティを養ってもらいたいと考えています。そもそも楽しくないとボールに飛び込んでいけません。それはすごく意識しているところです。
ジュニアユースでは、楽しさを持ちながら『ちょっとかっこいいプレーがしたい』『速いボールを止めたい』などと欲が出てくる時期です。これまではただ弾いていたボールを止めてみたいという風な気持ちに変化するので、より技術的なものやステップ、ハイボールの処理などバランスよく学ぶことが大事だと思っています。サイドステップひとつにしても頭をグラグラさせることなく、体の中心をぶらさずに足をしっかり動かせるとか。ステップを含めて、そういう細かい部分を意識してトレーニングするのがジュニアユースです。
ユースになるとジュニアユースからの積み重ねにプラスして、やっぱりパワーが必要になってきます。ある程度、筋肉がついてきて、身長がグッと伸びてきたりもしますから、これまで蹴られなかったボールがいつの間にか蹴ることができるようになったりします。それは筋肉がつき、体のバランスも上がってくるからです。パワーだけではなく、しなやかさが出てくるんです。だから、今年から高校の選手も指導していますが、私はそういう意識でやっています。
正直、私はまだ専門的に勉強しているわけではありません。指導者ライセンスもC級しか取得していませんから『ストイックに勉強しているか?』と問われると自信を持って言えません。でも、これまでプロのGKとしてプレーしてきた感覚と指導現場を経験してきた感覚で、『こうしたらいいんじゃないか』といろいろと試しながら進んでいる感じです。それが正解かどうかはまだわかりません。でも、選手たちが『楽しくやってくれているな』という実感は身近に感じています。だから、『高校のサッカー部でも教えてみよう』と思ったんです。
ジュニア向けのスクールを開いて、ジュニアユースのGKコーチとしてグランデFCで指導を研鑽し、去年までは東京23FCで社会人に対しても学びました。やはり社会人は環境にかなり左右されるんです。朝7時から練習があり、10時には仕事に向かわないといけないなど、ウオーミングアップ程度で終わってしまったり、全体練習でも細かいセットプレーに合流するだけの感じになってしまったり。私もクラブも含めてもう少しバランスよくできなかったかなと精神的にモヤモヤしたので、もっとサッカーに集中し、意欲的な選手たちを指導してみたいと思っていたら、高校のサッカー部から依頼を受けました。高校は目がギラギラしていて意欲的ですし、気持ちも熱いのでそういう選手たちを相手に経験を積んでいます」
※第2回は5月15日公開予定です
<プロフィール>
ノグチピント・エリキソン
1981年、ブラジル生まれ。2001年に帝京高校から大分トリニータに入団。2002年にサガン鳥栖に期限付き移籍。2003年に日本に帰化し、2004年に柏レイソルに移籍。2007年にアビスパ福岡に完全移籍したが、2008年に契約満了。バリエンテ郡山を経て、同年7月にAC長野パルセイロに完全移籍。2010年からはタイに活躍の場を移し、プレミアリーグのサムットソンクラームFC、ディヴィジョン1のPTTラヨーンFCではタイ・プレミアリーグ昇格に貢献し、ベストゴールキーパー賞に輝く。サムットソンクラームFC、アユタヤFCと渡り歩き、2015年に引退。その後、一般企業に就職するも、GKコーチとしてサッカー界に戻り現在に至る。
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