「ダノンネーションズカップ」王者ヴァンフォーレ甲府U-12が披露した3つのプレー原則。垣間見えたトップからの逆算
2019年06月05日
育成/環境
甲府の西川監督が答えたボール保持の考え方
特に育成年代では“積み上げ”が大事になる。
成長過程にある未熟な選手だけに、プロサッカー選手のように修正点を与えたからすぐに改善できるはずがない。選手たちはいつもの練習からコツコツとトレーニングのテーマに向き合い、試合を通じて試すことでしか「自分に何ができて、何ができていないのか」を推し量ることはできないのだ。では、それに対して指導者としてはどうしたらいいのか? 西川監督は、2年前のインタビューでこんな風にを答えている。
「『今、何かをつかんだな』『何か物足りなさそうだな』と選手の様子を見て、指導者がそういうことに気づくかどうかが重要だと思います。『興味がなさそうだな』と感じたら180度違うことをいきなり落とすんです。すると、選手に混乱が生じます。でも、それが必要なんです。どうすれば解決できるかを考え始めるキッカケになりますから。私たちは日常からそれをやっています」
課題を単純に指摘されるだけでは、本当に本人の意識レベルで修正の方向へベクトルは切り替わらない。投げかけられた本人がその課題を意識して、ようやく修正の第一歩としてスイッチが入る。だからこそ常日ごろからひとつひとつのトレーニングで指導者がどうテーマを意識させ、選手が思ったプレーをし、それにまた指導者が課題を指摘したり、修正へのヒントを与えたり、自分で発見させたりと、より良いプレーをできるようになるために、これを根気強く何度も繰り返すことができるかが重要なのだ。
その積み上げとして、たまたま今大会で実を結んだのが甲府だっただけだ。もちろん優勝したことはとても喜ばしい。でも、西川監督は、ボールサイドから遠い選手のプレーに関する話題になったときに、こんな風に自分たちの取り組みや考えを語ってくれた。
「自分たちがボールを握ることは大切にしています。でも、エリア別にどうターゲットを持ちながらプレーするのかが大事なことです。安定して運ぶこと、サイドを揺さぶること、フィニッシュのダイナミックさ、そういう部分で今落とし込んでいることが少しだけ成果として出てきただけのことだと思っています」
甲府は4~6年生の間に、トップから逆算されたベースとなるいくつかのシステムに応じてどうプレーするかに取り組む。それは8人制サッカーの勝ち方ではなく、11人制サッカーにどうつなげるかという育成年代における目的が明確だからだ。だから、西川監督からは「サッカーをどうベーシックにプレーするか」という視点のコメントが数多く発信される。
出場した全員がチームとして決められたシステムをベースにどう有機的に動き、絡み合いながら攻撃と守備を行っていくか。それを、西川監督は“ときに具体的”に、“ときに抽象的”に選手たちに接しながら、彼らに成長を促す刺激を与え続けている。最後に、一昨年のインタビューで「8人制サッカーをどう思うか?」という質問に対して答えてくれた西川監督の言葉を紹介したい。
「8人制での勝ち方ではなく、11人制にどうつなげていくのかを念頭に置いているから移行の違和感はありません。そう感じているJクラブは多いと思います。もちろん指導者が条件や設定、例えばピッチサイズなどを調整しなければなりません。個人的には、中学1年生では8人制をうまく使ってもいいのかなと感じることはあります。中1になるといきなり11人になってピッチサイズも変わりますし、選手や指導者も最初は違和感を持つことがありますから。ただ、8人制であっても11人制であっても、この年代では個の部分にフォーカスすることを絶対に忘れてはならないということです」
サッカーも、育成もひとつの要素だけで語ることができない。
だからこそ、目の前のチーム、選手に対して“今”何ができるのかと試行錯誤し、それが“数年先”、そして、“成人の選手”になったときにどうつながっていくのか、にチャレンジすることは大切なことである。これから先も大人が創造力を持って子どもを指導していくことに変わりはないと、私は思う。
※6月の特集第2弾「U12の全国大会で見られる2つの課題とは?」は6月12日に公開予定です
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