サッカーはすぐに上手くならない。美術から学ぶ「才能」の正体【サッカー外から学ぶ】

2019年06月13日

育成/環境

 
naritomi_miwori
【「絵は才能だけで描くものではない」と語る成冨ミヲリさん】
  
才能を分解して切り分け、個々の能力を伸ばす
   
「絵を描いてみてうまく描けなかった。ただうまく描けなかったで終わらせるんじゃなくて、アイデアはよかった。でもテクニックが追いついていないからアイデアを表現することができなかった。じゃあどうしよう? と考えていくのが正しいあり方ですよね。できていることから逆引きで練習してみるのもいいし、できていないことをやってみるのもいい。いいものは伸ばしつつ、苦手なものは努力していく。能力のチャートがいびつでもいいから、どこをどう伸ばすかを一緒になって考える。外から見たら才能とひとまとめにされているものも、実はいろいろな能力が組み合わさっている何かの集合体だと思うんです」
 
 いいところを伸ばすのか弱点を補うのかについてはサッカー界でも議論があるが、子どもたちの得手、不得手、長所、短所を指摘するだけでは指導にも育成にもならないことは周知の事実だ。成富さんが絵を教える際の例にならえば、「アイデアは良かった=認知、選択はできていた」「テクニックが追いついていないから表現できなかった=技術不足、筋力不足などの理由で実行がうまくいかなかった」という指導になぞらえることができる。これが分かれば、子どもたちにかける声は怒声などではなく、明確な課題の提示とその改善法になるはずだ。
 
「ここが足りていないというのは改善のしようがありますけど、才能がないと言われたり感じたりしたら、嫌になって当たり前です。同じ理由で、講座では『センス』という言葉も極力使わないようにしています。持って生まれた才能やセンスというものがあるとしても、その話をしても絵はうまくならないし、できたことの理由、できなかったことの理由を才能やセンスに当てはめた時点でそこより上に行けないと思うんですね」
 
 ①アイデア②オリジナリティ③形状ストック④構図構成力⑤形を取る能力⑥立体を把握する力⑦テクニック⑧完成させる力、の8つの能力についても、サッカーに共通することがありそうな匂いがプンプンするが、各項目を細かく見ていくのは次回に譲るとして、今回は絵を描くこと、美術や芸術についての偏見を解いて連載のプロローグとしたい。
 
「日本は特に“自由”ということを間違えがちですよね。サッカーもそうかもしれませんが、絵は外から見るとすごく自由に見えると思うんです。本来の意味とは離れたところで『芸術は爆発だ!』のイメージだけが一人歩きしているというか。だけど、筆ひとつ、絵の具ひとつを選ぶにしてもすごく緻密な計算をして描くものなんです。どんな天才でもザザッといきなり描き出すわけじゃないんです」
 
 サッカーが芸術的なスポーツであること、優れたプレーヤーの動きが芸術の域に達していることには賛同しかない。しかし、芸術という言葉が上達のブラックボックスをつくっているとしたら、芸術の定義をもう一度見つめ直す必要があるのではないか?
 
 絵を描くこと、美術、芸術、その上達の過程を見せてもらうことは、サッカーコーチにとっても大きな学びがあるのではないだろうか。
 


【連載】「サッカーを“サッカー外”から学ぶ重要性」


成富ミヲリ(なりとみ・みをり)
デザイナー・アニメーター・シンガー。東京藝術大学美術学部工芸科卒。ゲーム会社などを経て2002年に有限会社トライトーンを設立。商業施設の企画デザイン、TVCMのCG制作、アニメDVDの監督など活動は多岐にわたる。プロ向けのデッサンスクール「トライトーン・アートラボ」で講師を務め、主な著書に『絵はすぐに上手くならない デッサン・トレーニングの思考法』などがある。twitter 


 

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