日本の育成はいつ「ハーフウェーライン」を越えるのか?
2019年06月26日
育成/環境6月の特集は「U12・14・16の大会から見る育成の現在地」と題し、各年代で見られた日本チームのプレーや海外チームのプレーなど、試合で起こった現象をもとに育成年代の課題やその修正の考え方について掘り下げていきたいと思う。特集最終回では、U16年代の『キリンレモンカップ』を取り上げる。この大会にはレアル・マドリーが参加し、ちょうど1年前のU15年代でも同大会で来日したため、どのような成長を遂げたのかを観察することができた。そこで、その成長を議題としてピックアップしながら、一方で日本チームはどうだったのかを比較して議論を少し深めてみたい。
【取材対象】
3月 U12ダノンネーションズカップ
4月 U16キリンレモンカップ
5月 U12チビリンピック
5月 U14東京国際ユースサッカー大会
なお、この企画は全国大会規模の試合で多く見受けられたプレーの傾向を前提にしていくが、地域の育成現場でも類似した現象はたくさん起こっていると感じている。そういう背景を考慮したうえで、ぜひ参考のひとつにしてもらえたらありがたい。
【6月特集】U12・14・16の大会から見る育成の現在地
取材・文・図●木之下潤 写真●松岡健三郎
U12・U14・U16を通して見えた育成の課題は?
U16年代になると、レアル・マドリー(以下、レアル)は「チームとしてより組織が重要視される」ようになっていた。
昨年の『キリンレモンカップ』はU15年代の大会として同チームも出場していたが、その年代ではさまざまな局面を個人ベースで解決していることが多かった。だが、今年は違った。これは日本でいう“ユース年代”に突入し、トップへの途中段階がよりリアルに近づいたからだと言えるだろう。自然に監督の選手に対する評価基準も“チームを優先する”方向へとシフトした印象だった。だから、選手たちもそれをくみ取るように、昨年より確実性を意識したプレーの選択が優先順位として高いように感じた。
ここで今回の特集を企画した意図として伝えたかったことについて少し触れさせていただきたい。“今”当たり前のようにプレーの選択、優先順位、確実性、評価基準などの言葉を用いているが、それが“何を前提に話を進めているのか”ということだ。そのことにお気づきの読者はどれくらいいらっしゃるだろうか?
6月の特集では、これまでのように“U12年代”だけに焦点を当てて言及しているわけではなく、「U12→U14→U16」と年代(カテゴリー)を上げるような構成を行っている。記事そのものでは、それぞれの年代での課題や解決に関する考え方を書かせてもらっているが、一連の特集記事を通して読むと、日本の育成には“年代ごとの積み上げ”が決定的に欠けていることがわかる。
【6月の特集企画の構成】
第1弾 U12年代/全国大会
第2弾 U12年代/全国大会
第3弾 U14年代/国際大会
第4弾 U16年代/国際大会
それぞれの年代だけを捉えると、できているものとできていないものがある。しかし、年代を通して観察してみるとどうだろうか? 確実にステップアップをしていると思うだろうか? U12年代で身につけていないものを、U14年代でプレーとして表現できるはずもない。U14年代で理解できていないものを、U16年代が判断できるはずもない。きっと、国内のチームだけが集まる大会が取材条件であれば浮き彫りにならなかったことだろう。だが、今回は幸いにも、U14とU16の大会に海外のチームが参加していたので日本チームの課題を目の当たりにすることができた。
確かに目の前の年代の選手たちに対して、一生懸命に今必要なことをトレーニングさせることは大切なことだ。それがあっての将来だから。ただ、それぞれの年代の試合で起こっている日本チームの現象をつなげてみると、海外チームのように各年代で不可欠な段階を踏んだプレーだとは思えない結果が現実としてある。
だとしたら、育成指導者たちは前後の年代とのつながりを今よりもう少しだけ意識し、トレーニングに反映させていくべきではないだろうか。JFAと各都道府県協会は、その育成指導者たちに何を意識してもらえたら各年代のつながりを持てるようになるかを具体的に提示すべきではないだろうか。
これ以上踏み込むと、今回の特集企画からは逸脱した内容になってしまうので、ここで止めさせていただくが、“ジャパンズ・ウェイ”なるものがJFAの中で具現化されているのであれば、地域の育成指導者たちの誰もがわかる形で具体性のある資料としていち早く届くことを願いたい。
では、U16キリンレモンカップの試合で起こっていた現象をもとに話を進めたい。
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