日本の育成はいつ「ハーフウェーライン」を越えるのか?
2019年06月26日
育成/環境

【図1】
日本と海外のビルドアップの原則の違いとは?
冒頭では、レアルがU15年代よりU16年代のほうがチームとして組織をより重視するようになったと記した。ここは成人した選手により近づくわけなので当然の流れだが、もう少しわかりやすく事例をもって説明したいと思う。
端的に言えば、判断基準が個人なのかチームなのかということだろう。
ただサッカーはチームの一員が前提になり、その先に個人としてどう判断するかがベースになるので両方を考えるわけだが、これだと抽象的すぎる。だから、チームとして“チャレンジをしてプレーするか”“リスクを負わずに安全にプレーするか”という考え方で噛み砕いて話を進めたい。
この点では、レアルはU16年代になり、チームとしてリスクを負わずに安全にプレーする比重が増えた。それは特集第3弾でブラジルのパルメイラスのビルドアップの優先順位を一例としてあげたが、基本的なものはレアルも同じだった。
【サイドからのビルドアップの前進に対する優先順位】
1.ボール保持者と同サイドから
2.CBやGKを使ったサイドチェンジ
3.サイドから中央を活用する
※海外チームの傾向
この優先順位は言い換えると、チームとして“リスクが少ない”優先順位とも表現できる。自陣からのビルドアップは、まずハーフウェーラインを越えて相手陣内に侵入することが目標だ。しかし、それを闇雲に個人の判断だけでプレーしてしまっては、チームがリスクを抱えることになる。だから、チームとして「こういう優先順位を基準に持ちながらプレーしていきましょう」と日ごろのトレーニングを通して伝えられているわけだ。
つまり、ビルドアップ時のチームのプレー原則とも言える。
これらをもとに個人がその時々で状況を判断しながらプレーする。だから、レアルのビルドアップはむやみにボールを失わずに確実に前進する確率が高まった。U15年代とは異なり、DFラインから相手DFラインの背後に挑戦的なロングボールを放ることがなくなっていた。もちろん必要に応じてそういうプレーも見られた。特に今大会のFC東京との決勝では、1-5-3-2-1のシステムを敷く相手に前線でのプレースペースを消され、それを崩すために打開策のひとつとして時間帯によってはロングボールを多用していたからだ。
昨年はスピードのあるFWを利用する形でロングボールを選択してゴールを取るチャレンジ的な意味合いが大きかった。だが、今年はそういうプレーよりも同サイドで前進し、ダメならDFラインを使って逆サイドにボールを展開してゲームを作り直す。時に中央にいるCHにプレースペースがあればボールを渡し、そこから逆サイドなのか、DFラインなのか、さらに前にいるFWやCHなのかを相手チームの状態に応じて選択していた。
一方で、日本チームに目を向けるとどうだっただろうか? 全試合のデータを取ったわけではなく、あくまで個人の取材によるものだが、次のようなプレーの傾向にあった。海外チームの傾向と比較すると、優先順位の「2」と「3」が入れ替わっている。
【サイドからのビルドアップの前進に対する優先順位】
1.ボール保持者と同サイドから
2.サイドから中央を活用する
3.CBやGKを使ったサイドチェンジ
※日本チームの傾向
ここから何が見えてくるのか。
それは年齢を重ねても、日本のチームは優先されるべきことに何の変化も起こっていないということだ。その証拠に日本のチームはどんなに難しい状況でも中央にいるCHを活用しようと試みる。だが、実際の試合では、海外のチームを相手にすると前進できる確率はかなり低かった。それが日本チームとの対戦であっても、U12年代では成功も多いが、U14、U16と年代が上がるごとに成功率も下がっていた。ここは記しておくべきところだと思っているのだが、日本チームはCBやGKを使ったゲームの作り直しが海外チームと比べると極端に少ない。
そもそもビルドアップの目的は、確実にボールを前に進めることではないのだろうか。だとすると、日本のチームはいつまで“チャレンジをしてプレーする”ことを続けるのだろうか。ジュニア、ジュニアユース、ユースと年代が上がるごとに成人した選手に近づくわけなので、チームの一員として“チャレンジをとるか”“リスクを負わず安全にプレーするか”は判断できなければならないはずである。育成年代だからと、いつまでもチャレンジが許されるわけではない。でも、現実は一連の特集記事のとおりだ。
最後に、もうひとつだけ伝えたい。
今回の特集をすべて読んでもらうと理解できると思うが、ハーフウェーラインを越えたあとの現象を取り上げていない。「それは取り上げる人間次第だろう?」と疑問をぶつける方々もいらっしゃるだろうが、安定的にハーフウェーラインを越えることが少ないのに傾向を見つけ出すことは難しい。私は、これが“今”の育成の現在地だと思っている。なぜなら実際の試合で起こった現象をもとに執筆しているからだ。ぜひ、みなさんもひとつの年代だけでなく、二つ、三つと年代をまたいで試合を観戦してほしい。そこでは代表、Jリーグへと通じていく日本の長所や短所を垣間見ることができるから。
※7月の特集第1弾は7月3日に公開予定です
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