元日本代表MF石川直宏が乗り越えた“成長期の壁”。小学生時代は無敵でも「昨日できていたことができなくなる」

2019年10月11日

メンタル/教育

かつてFC東京や日本代表で中心選手として活躍した石川直宏。小学生の頃は敵なしだった石川も、中学生になると「大きな壁」に直面した。それでも、いつも身近で見守っていた恩師の支えが、石川が何度も壁を乗り越える原動力となった。

『素直 石川直宏』から一部転載

文●馬場康平 写真●Getty Images


素直 石川直宏

不安そうにボールを蹴っていた

 散々いろんなことを試した。それでも思ったほど、身長は伸びなかった。だけど、不安な顔でボールを追い掛ける少年に、手を差し伸べてくれる人がいた。クラブは、ナオが2年生へと進級した年から下部組織専任のアスレティック・トレーナーを置いた。それが、後関慎司だった。いつも不安そうにボールを蹴るナオを気遣い、励まし続けた。後関は言う。

「出会ったころの直宏は周りと比べると頭一つ小さく、それでもすごくサッカーがうまかった。中学2年生で、すでに追浜では中心選手でしたけど、いつもどこか不安そうだった。この子の不安を取り除いてあげたいと勝手に思っていたんですよね」

 2人の出会いから1年後、止まっていた身長は中学3年後半から高校1年で徐々に伸び始めた。「これでようやくサッカーがまた楽しくなる」。そう思えた。

 そんな多感な思春期に、もう一つの出会いが存在した。身長が伸びずに苦しんでいたころに、ライバルが出現する。後に、共にトップチーム昇格を果たす大橋正博だった。本家と呼ばれた新子安で同じ花形のトップ下を任されていた大橋を意識せずにはいられなかった。

 事件は中学3年生のときに起きた。2人は、一つ上のカテゴリーだったユースのスペイン遠征に飛び級で参加した。その遠征中の試合で、大げんかを始めてしまったのだ。他愛もない意見の食い違いが発端となり、口論から取っ組み合いのケンカにまで発展。試合が終わっても収拾がつかず、宿舎でも襟首をつかみ合った。

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