子どもが減ればコーチも減る。押し寄せる少子化の波。解決の手立てはあるのか

2019年12月11日

育成/環境

現在、4種の競技人口は少しずつ減っている。地方からどんどん少子化の波が押し寄せるなか、サッカークラブに限らず、この問題はすべてのスポーツクラブを運営・協力しているコーチや保護者が向き合わなければいけない。

私たち「今」を支えるクラブ指導者は一体何ができるのか?

12月の特集では「ジュニアクラブはどう地域と関わるべきか」を軸に、これからのジュニアサッカーの在り方について考えていきたいと思う。そこで昨年に引き続き、3名のサッカー指導者に現場の立場から率直な意見を語っていただいた。第二弾のテーマは「試合環境とプレータイムの確保」「指導者が育つ環境」について話してもらった。

【12月特集】ジュニアは地域とどう選手を育むべきか

【司会】編集長/高橋大地
【指導者】FC市川GUNNERS(ガナーズ)=南里雅也  大豆戸FC=末本亮太  FC大泉学園=小嶋快
【担当ライター】木之下潤


※第1回はコチラ
選択肢が増えたからこそ生まれた「地域クラブの選手人口の二極化」地域クラブの理想像とは何か


スポーツ少年団 イメージ

問題は試合環境の作り方とプレータイムの確保

高橋 地方遠征に行ったとき、クラブ数や選手数の減少に関する話題になったことはありますか?

末本 大豆戸FCは被災地訪問活動として東北に行っています。毎年、石巻のクラブの指導者に話を聞くと、「すごく大変」だと。選手の数を増やすためには、親の負担を減らすことも大事だと言っていました。選手の送迎をしたり、NPO化してお父さんコーチにも報酬を出したりすると、少しずつ人が集まってくるそうです。

南里 少年団は運営の手伝いを親もしているので、保護者の負担は大きいですよね。うちのクラブは駅まで送迎をしています。「そのサービスがあるから預ける」という保護者もいますから。今は共働きが当たり前ですから、子どもの送迎は意外にハードルが高いかもしれません。

末本 市内の某チームの指導者は子どもが集まらないと嘆いていました。最近の保護者は「土日を丸一日取られたくない」「自由な時間も欲しい」と言っています。そういう世代の保護者も増えていて、「もう理解できない」と嘆いている上の世代の指導者も増えてきています。一方で、別のチームはやり方を変えて選手が増えたという例もあります。土日の活動を半日にしたりして、保護者の負担を減らしたそうです。「保護者にも目を向けて現代に合わせて柔軟に考えて運営しないとダメだね」と言っていました。伝統あるチームですが、そのように柔軟に変化できるチームが生き残っていく、選ばれていくのは当然だと思います。

南里 土日しか活動がない少年団も、熱心に3〜4時間活動していますが、そういうチームのほうが実は選手数が増えていない現実は見かけます。価値観は変わってきているので、家族の時間も必要ですし、長時間の活動を負担に考える保護者も増えてきていると思います。そこは柔軟にやるのが大事かなと思います。

高橋 社会と競技人口の数はリンクしていると感じます。千葉も、東京も、ボランティアクラブはかなり厳しいように思うのですが、少子化という波に対して、サッカークラブとして何か考えることはありますか?サッカー人口を増やすという意味について。

末本 気軽にスポーツを楽しめる。そういう間口を作りに行く。私たちができるのは、前回話した土曜日の学校開放と日曜日に開催している個サル。チームには入りたくないし、面倒だからと言う人たちも増えています。日曜の夕方だけちょっと個サルに来てサッカーする。でも、そういう子どもたちが「自分がどれだけできるのか」「サッカー楽しいな」「これをきっかけにチームに入りたい」と思って、別に大豆戸FCじゃなくても、他のチームでやるキッカケになればいいと思っています。大豆戸は定員いっぱいで締め切っている状態で入れないので、他のクラブに紹介したりしていますし、個サルが入り口になればいいな、と。地域の子どもたちに対して「自分たちのチームありき」ではなく、気軽に楽しめる環境を作っていく努力は必要だと考えています。

南里 うちは、地域のチームとトレーニングマッチを組んだりしています。今の話でいうと、そこまで経済的に恵まれていない子や気軽にサッカーしたい子にとってはプレーが楽しみの一つです。リーグ戦のヒエラルキーをしっかり作り、同じ競技レベルの選手たちが集まるようにすること。週一回のリーグ戦があれば、2時間で1試合をこなし、その中には競技強度の低い試合も用意したらいいと思うんです。子どもたちは同じレベルの選手同士で試合をしたほうが楽しめるんですよ。例えば、個サルを見るとレベル分けがされています。みんな楽しんでいるのは、拮抗したレベルがコントロールされているからです。

 そうしないと、競技志向の強いクラブだけが生き残っていく。

 子どもがプレーする環境がなくなっていきます。それは拮抗したレベルを作るリーグ戦が地域にあればいいと考えています。年間の試合数が決まれば、クラブも予定が立つし、選手も保護者も予定が立つから自分たちの時間が持てます。ジュニア年代にはリーグ戦と同時に全選手のプレータイムの確保が必要です。これは、もうルール化していい問題。

 保護者もせっかく試合を見に行くのに、自分の子が出なかったり数分しか出場しなかったりしたら不満もたまるでしょう。海外みたいに所属した選手は必ず全員出場させるとかルールがあれば、保護者も応援ができるし、選手もプレーできるからみんなが楽しめ、成長できると思います。私もできないときもありますが…。もちろん競技志向のチームは上のレベルでやればいいんですが、育成年代はプレー時間の確保は重要です。

 正直、ヨーロッパも過去そういう経験があるなか、いろんな衝突がありながらルール化されていったと思うんですよ。結局、ジュニア年代の選手が増えないと、競争人口も増えていきません。これからはもっと個人競技や他のスポーツがどんどん盛んになれば、子どもがそちら流れてしまいます。でも、やはり思い切り体を動かすスポーツのサッカーは健全だし、集団行動も学べるすばらしい側面もあります。年間スケジュールの決定やプレータイムの確保という仕組みづくりができれば、サッカーの価値はあがると思います。保護者にすればお金がかかっていることなので、毎週スケジュールも決まらない、子どもの出場もわからないなんてストレスしかたまりません。ここは大事なんじゃないかと思っています。

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指導者数の減少は深刻な問題になってきている

高橋 少年団のチームには、お父さんコーチをする人が少なくなっている印象を受けるのですが、みなさんのチームでは指導者の数はどうでしょうか?

小嶋 うちは会員数が多いので、指導者は多ければ多いだけ助かる状況にあります。別に足りていないわけではないですし、うまくOBが手伝いに来てくれています。もちろん、卒業するときに何人かには早めにオファー、いや声はかけています。「手伝ってね」って(笑顔)。

末本 クラブでは感じませんが、関わっているチームや交流しているチームと話をしていると非常に感じますね。子どもが卒業してもたずさわってくれるコーチが多いところはいいかもしれませんが、お父さんコーチが必要なチームは毎年コーチの確保が本当に大変だと思います。低学年は審判1人で十分なのに、公式戦は3人出しを運営側は要求します。指導者不足で大会参加も見送るチームが多いのではないでしょうか。

 一から始めるコーチは知識を得る時間もなければ、指導場所もないのが実情だと思います。にも関わらず、興味関心も競技志向もエンジョイ志向もバラバラな子どもたち、保護者を全部一緒にしてマネジメントしていかなければいけません。一番難しい現場を週末だけ見るのはとても大変です。

 Jアカデミー、街クラブと、地域ボランティアチームが対立構造になるのではなく、
ともに知識や場を共有することで解決できることもあると考えています。私は地元の地域ボランティアチームの現場に時間の許す限り行き、コーチと場を共有していますが、同じ立ち位置で悩みを共有し、解決し、グラスルーツのボトムアップを行っていくことが私たちに求められていることだと自分なりに使命感を持ってやっています。

高橋 実際の話、私たちのような30代、40代の働き盛りの社会人がボランティアコーチを務めるのは難しいです。

末本 Jクラブのスクールには、若い指導者がたくさんいます。しかし、週末彼らの中で現場に立っている人はどれだけいるでしょうか?

小嶋 やはりある程度は「お金がもらえるんじゃないか」と思ってコーチを始める子が多いと思います。

南里 指導者の現状は稼げないですからね。上の世代の人たちががんばって長時間活動するだけ、下の世代の指導者は「やりたくない」となりますよ。価値観が違いますから。休みもなくやればやるだけ、「俺はああなりたくない」と。それこそダブルワークでもいいと思います。スポーツビジネスが確立されていないことや賃金の安さなどに、いまの若い世代は敏感です。ボランティアコーチは本当にがんばっています。うちも息子が土日だけで活動する少年団に入っていて、稀に私も見学にいくんですが、お父さんコーチがやって来て「こんな感じでいいですか?」と聞いてきます。

 私は「大丈夫ですよ。お任せします」と答えています。子どもが楽しんでいればそれでいい。土日だけのボランティアコーチも、そこでできる指導の仕方、試合の仕方というのがあります。そういう人たちを指導者養成したいなら、情報提供をする場を作ることは大事です。ヨーロッパではそういう適切な情報提供する場が多くて、ボランティアコーチにもその情報がしっかり回っているし、共有する環境は良くなってきていると聞きます。

 お父さんコーチも本当は指導実技を学びたいんだと思います。情報はあっても、経験値がなさすぎて現場では実践できないんです。サッカーとの関わりは、毎週土日だけですからね。その中で、レベルの違う子どもたちへのアプローチやトレーニングなどは難しいと思います。私も聞かれれば「こういうものがありますよ」とアドバイスをしたりすることもあります。

 海外ではアライアンスもしっかり確立されているので、「選手の輩出をしてもらうかわりに、地域のトップクラブチームから指導者を派遣したり、チームコーチへの指導講習を行う」という循環があり、地域の指導者たちを育成するような仕組みを作っています。日本にも一部ありますが、そういうサイクルもヨーロッパからは学ぶところがあります。それと他人の指導を見る場がないのも問題です。「トレーニングをどうオーガナイズするか」とか、もっと身近に現場の指導が見られて学べる柔軟性のある講習会が増えていけばと思います。そこを私たちプロコーチがうまくサポートしてお互いの情報が共有できるようにするのは必要です。時代は、すでに共有する時にきていて、いいものはみんなで共有していかないとサッカー界全体が縮小してしまいます。

 また、圧倒的に強いチームでも指導者は不足していると聞きます。強いだけで存在していても難しくなってるようです。強いチームは強いチームのコンペティションがあり、その強度が高ければ経験の浅い指導者がそこで求められるような責任を負う力はありません。情報共有できるオープンな関係をいかに作るかは大事で、経験の浅い指導者の失敗を許容できたり、経験を見守れる環境づくりは今後かなり重要度が増すはずです。

 でも、コーチを教えている余裕がないというクラブが多い。指導者の育成をする環境を作れていないから、新しい指導者が入ってこないのだと思います。若い指導者たちも「これから本当に家族を持てるのか」とそんな不安を抱えています。そこを解消できないなら「サッカーコーチは職業としては選ばない」というふうになりますから。もちろん指導者という一つの仕事だけでなく、他の仕事があって夕方から「コーチを行う」という複業の形での形態も増えていくと思いますが、いずれにせよサッカー指導者の環境改善と雇用形態を見直さないと指導者の担い手は減っていくという懸念はあります。そこも踏まえて業界全体で取り組むべき課題だと思います。

>>12月の特集第三弾は「12月18日(水)」に配信予定


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