“13歳の戦術分析家”が明らかにする“ドイツの新鋭クラブ”の緻密な戦略

2020年02月06日

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フットボール批評編集部は“13歳のサッカー戦術分析”なる名をネット上で発見した。戦術クラスタ界隈で最も若い部類に入る“13歳”は、緻密な分析と文章で精度の高い記事を発信している。コンタクトに成功した今回、編集部から猛威を振るい続けるRBライプツィヒの戦術分析というお題を出した。まずはQ&Aをウォーミングアップに、春秋に富む“13歳”にライプツィヒを丸裸にしてもらった。

フットボール『戦術』批評より一部転載

文●13歳のサッカー戦術分析 写真●Getty Images


Borussia Dortmund v RB Leipzig - Bundesliga

異彩を放つドイツの新鋭奇才ナーゲルスマンとともに

 レッドブル、翼を授ける。何本飲んだとしても翼を実際に授かることは不可能であるが、本当に翼を授かったかのようなワクワクするサッカーを展開し、リーグ前半戦で首位に立つのがRBライプツィヒだ。果たして何本飲んだのだろうか。いや、翼を授けたのは今夏監督に就任したユリアン・ナーゲルスマンだろう。この戦術家の下、毎試合のように大量得点を挙げる攻撃的なサッカーを披露するドイツの新鋭ライプツィヒの戦いを分析していく。

 以前のライプツィヒといえば高い位置からアグレッシブにハイプレスをかけにいくような守備を展開していたが、ナーゲルスマンは前任者から守備方法を大きく変えた。基本システムはホッフェンハイム時代から愛用する5-3-2(3-3-2-2)ではなく2トップが縦関係となる4-4-1-1でセット。ピッチを横に3分割した時の敵陣側に相当するゾーン3からプレッシングを行う試合は少なく、基本的にはハーフラインよりも少し前の位置からプレッシャーをかけていく。

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図1 中央で三角形を作ることでパスコースを消しサイドへボールを動かす

 最前線のCFヴェルナーはバックマークプレス(特定のエリア・相手を背中で消す寄せ方。図1参照)で片方のサイドを消しながら相手CBへプレッシャーをかけ、相手2ボランチはトップ下のポウルセンとその後ろの2ボランチ・ライマー、デンメ(デンメはナポリに移籍)で監視し、自由にパスを受けさせない。ヴェルナーを頂点としライマーとデンメがそれを支え、その中点にトップ下ポウルセンが位置取る〝中央の三角形〞で相手に中央からビルドアップをさせず、サイドへのパスに誘導する。

 サイドにパスを誘導できたら、逆サイドの選手はセンターサークルの辺りまでスライドし、全体の陣形を圧縮。ボールサイドにかける人数を増やすのだ。そして〝中央の三角形〞の次に出番がくるのはSH、SB、CHで形成する〝サイドの三角形〞。相手SBに対してSHザビッツァー、相手SHに対してSBクロスターマンがマークにつき、ボランチのライマーがそこに加勢。ボランチが加勢することで相手SB、SHに対して3対2の数的優位を作り、さらにタッチライン際へ追いやると同時に数的優位を生かしてボールを奪いにいくのだ。ボランチはサイドから中央への道を塞ぐような立ち位置を取る。そのことによってプレーの選択肢を限定して相手に逃げ場を与えない。それに加え、サイドでのボール奪取を助ける中央からの助っ人役の効果を果たしており、ライプツィヒの守備において非常に重要な存在と言える。〝全体のボールサイド圧縮〞〝サイドの三角形〞によって人口密度を高めてサイドで一気にボールを奪うのがライプツィヒの守備のプレー原則だ。

 また、CF、トップ下、SH、ボランチ、SBの守備時のタスクは以上の通りだが、CBだけは他の選手たちとは大きく異なるタスクを担っている。CB以外の選手はいわゆる〝ゾーン〞で守っており、ボールと味方の位置を優先してサイドにパスが入れば大胆にスライドし、選手間の距離感を縮める。だが、CBウパメカノ、イルザンカーは相手CFをマンツーマン気味でマークするタスクだ。SBがタッチライン際の相手SHに寄せることでハーフスペースが広がっても埋めにいかず相手FWを注視し、ハーフスペースのケアはCHライマー、デンメに任せている。CBで起用されるウパメカノ、イルザンカーは両方共通して〝前〞に強くボール保持者に激しく寄せて潰しに行ける選手であるためこのタスクによって対人の強さを発揮。ハードマークで相手CFを抑えにかかる。

ブンデスリーガ第16節ドルトムント戦

 これらのプレー原則を踏まえた上で、ナーゲルスマンが〝奇策〞を仕掛けたブンデスリーガ第16節ドルトムント戦の事例を見ていこう。

 この試合は3-4-2-1で攻撃を展開するドルトムントに対して4-3-3で臨んだ。CFにフォルスベリで左右のWGにヴェルナーとポウルセンが並ぶ。この3トップはMFラインには加わらず常に高い位置を維持し相手3CBにプレッシャーをかけるタスクを担っており、相手WBにパスが出るとIHザビッツァー、ライマーがスライドして寄せる仕組みになっていた。つまり〝リヴァプール的〞な守備をしたのだ。

 しかし、この奇策は失敗に終わっている。ザビッツァー、ライマーが相手ボランチのブラント、ヴァイグルを消してフォルスベリがバックマークプレスによって片方サイドに誘導することで中央からビルドアップさせずWG、IH、SBの〝サイドの三角形〞(アンカーのデンメも加勢)でボールを奪おうとするプランだったが、最前線の守備が機能しなかった。なぜならフォルスベリは相手CBフンメルスに対してのプレッシャーを怠ることがあり、フンメルスに自由自在な球出しを許していたからだ。最前線からの誘導が機能しないため後方の選手は連動が困難になりライン間にスペースを与え、ドルトムントのアタッカー陣のコンビネーションに切り裂かれてしまった。

 加えて、中盤にボールが入ってきて3MFザビッツァー、デンメ、ライマーが激しく寄せて奪いに行ったけれど奪えずプレッシングを剥がされるというシーンも多く見られた。特に相手左CHブラントの巧さが際立っており、ブラントの質的優位にライプツィヒ守備陣は苦戦を強いられていた。

 ナーゲルスマンは23分に1失点目を喫した後、28分にフォルスベリとヴェルナーの立ち位置を入れ替えた。ヴェルナーにフンメルスを抑えるタスクを与えることで守備を改善しようと試みた。だが、歯止めはかからず34分には2失点目を喫した。

 後半4-4-2にシステムを変えて全体のバランスを担保した。プレッシングをやめて守備ブロックを下げたことで前半に比べて、ドルトムントのアタッカーを抑え込むことに成功。相手のミスもあって何とか3―3の引き分けに持ち込んだ。後半はミスが多く、特にプレー精度が低かった。ドルトムントの選手との技術レベルの差を見せつけられた試合となった。

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図2 フンメルス対策”をすることでビルドアップを封じるはずが、奇策はうまくいかなかった

 普段の4-4-1-1ではなく4-3-3で3トップを使い、ドルトムントの攻撃を司るフンメルスに対して明確に人を当てることによる〝フンメルス対策〞と、それに伴って走力のある選手を中盤に3人並べてブラント、ヴァイグルに対してデュエルに強いザビッツァー、ライマーが対応。中央を閉めてからサイドにスライドして奪いに行くというタフなタスクを任せるという発想は面白く、実際に狙い通りにボールを奪ってカウンターを仕掛けるシーンもあった。しかし、〝フンメルス対策〞をフォルスベリがうまく遂行できなかったことがこの奇策の機能不全に直結したと言える。今季ここまでのほとんどの試合で左SHとして守備をしていたフォルスベリには、不慣れなポジションでのプレーによる若干の混乱があったのかもしれないというのが筆者の見立てだ。

つづきは発売中のフットボール『戦術』批評からご覧ください。


フットボール戦術批評

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【発行】株式会社カンゼン
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 フットボール批評の新たな試みである別冊『戦術批評』では、最新にして最強の戦術コンセプト“クロップ魔法陣”の全貌を、古今東西の戦術ライター、戦術アナリストたちが解き明かす。賢者たちは、実はリヴァプールが“堅攻”であることを我々に教えてくれる。

 コンパクトな陣形を保ちながらの高い位置でのボール奪取は、すなわち限りなくチャンスを創出しやすいからである。いや、“堅攻”という表現さえ当てはまらない可能性がある。

 指揮官のクロップには攻守の切り替えという概念すらないかもしれない。最適解のワードを見つけるべく、“クロップ魔法陣”の核心部に迫っていく。


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