ボールを掴みにいかず、待つ!ボールをファンブルしないための正しいキャッチの仕方

2020年03月26日

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例えシュートを体の正面で受けてもファンブルしていまい、失点につながるシーンはプロの世界でもよく見られます。また、ボールをはじくのではなくキャッチすることで自分たちがボール保持をする時間が増えるので、GKにとってシュートをファンブルすることなくキャッチすることはチームの攻撃のスタートにもなります。世界レベルのGKコーチであるジョアン・ミレッが考える“正しいキャッチの仕方”を知っていきましょう。

『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座』より一部転載

著●倉本和昌  監修●ジョアン・ミレッ 写真●Getty Images、高橋大地


ヤン・オブラク

やってはいけないキャッチの仕方から学ぶ 

 まず、正しいキャッチの方法について学ぶ方法の第一歩として、どうやってやってはいけないかを教えることが重要です。

 こうやって取りなさいと言うだけだと選手に迷いが出てきます。「この場合はどうなんだ?あの場合はどうなんだ?」というように。

 「これはやってはいけない。なぜならこういう理由があるから」とダメな理由から詰めていき、結果的に残った「このやり方が正しい」となると、迷いがなくなります。

 教えているGKに確信を持たせたいならば「これが正しい!」と教えることも重要ですが、やってはいけないことから教えるのも一つの手です。私自身が30年にわたる指導を通して、「このやり方はどうなんだ?」「これだとこういうデメリットがあるな」と失敗をし続けながら、より効果的なやり方を追い求めているのです。最後はみなさんがどのやり方でやるかを選択してください。

①手の正しい置き方

手の正しい置き方

①ボールの大きさをきちんと理解させることが必要です。ほとんどの選手は「手を上げてキャッチングの形を作って」というとボールの大きさよりも大きい形を作ってしまいます。それだとボールがこぼれてしまうのは当然です。みなさんもボールなしで、「キャッチできる手の形を作ってみてください」手の平が下を向いていませんか?その場合は実際にボールが来たら下に落ちてしまいます。

②指先に力を入れないといけません。選手に目をつぶらせて頭をボールに見立てて掴んであげると感覚を掴みやすくなります。ここでボールを両手で挟むように動かしてしまうと、ボールはこぼれてしまいます。
重要なことは「ボールをお母さんのように扱うこと」です。つまり愛情を持って、優しく扱うのです。お母さんをはたいたりしないですよね?力を入れるべきなのは手の平ではなく、指先です。指を曲げてボールの形を作ります。

③親指から手の平にかけての部分がボールを一発でキャッチするために大切であることを理解させます。多くの選手はボールをキャッチさせた際にその部分がボールから離れてしまっている(極端に言えば指だけでキャッチしているような状態)、手の平とボールの間に空間ができているというのは手全体でボールを包んでいないことになります。手の甲が自分の方を向いているのはおかしいのです(ボールの形に合わせると手の甲は自然と外側向くようになります)。

④キャッチング時に親指同士が平行の状態になっている必要があります。また親指同士の距離は指三本分空けます。これがしっかりできていないと顔の正面にシュートがきた際に、シュートパワーに負けて手の平が広がりボールをこぼすことにつながってしまいます。または顔面にボールが当たります。指と指の間を広げるようなトレーニング、指の力を強めるトレーニングは必要になります。指と指の間が広がらない、親指に力が入らないということがあるとボールをこぼしてしまいます。

⑤キャッチング時に手の平全てがボールを感じる必要があります。特に小指の下から手のひらにかけての部分に注意します。この部分も必ずきちんとキャッチさせます。手の平全体でボールを感じさせることが必要です。ここまで確認すると実はボールは自分が思っているよりも小さいことに気がつきます。

⑥怖がらずボールをきちんと見続けることです。両手の間からボールがしっかりと見えている状態が正解です。もう取れたと思って、次のプレーのために目をボールから切ってしまうことでキャッチミスが起こることは意外と多い事例です。この習慣がついていないとセービングの時に両腕の間から顔を出していないことで、ボールが自分の腕に隠れてしまい見えていないということが起こります。

⑦キャッチの瞬間に指を動かしてしまう選手が多いので注意が必要です。あくまで正しく手を置いてそこにボールが「入ってくる」だけ。待っているという感覚です

⑧ボールの真後ろに両手を添えます。上すぎたり、手の位置が誤っていたりすると、手の力が正しくボールに伝わらないためキャッチできずにファンブルしてしまう可能性が高まります。

②手の出し方

 両手は正しい手の置き方を作った状態で太もも前あたりから「ボールの形そのまま」に出します。

 身体の後ろに腕を降り上げてからキャッチしにいったり、両手を広げてボールを掴みにいったりしてはいけません。正しい手の置き方のままでボールの軌道上に手をあげて、ボールがそこに「入ってくる」イメージです。

 ボールを掴みにいくと、正しい手の形に軌道上で手を修正しなければいけないですし、そもそも正しく手を置けない可能性が高まるためミスが起きやすくなってしまいます。また、軌道上に手を置くまでに時間がかかることも理由の一つです。ハイボールの対応も同じで両腕を身体の後ろに振り上げてはいけません。先に軌道上に手を出して空中で「待っている」イメージです。手を出すスピードは今まで言われていたタイミングよりもはるかに早く出さないと間に合いません。

③手を出すスピード

 手を出すスピードは可能な限り早く軌道上に手を置くことが重要です。早めに手を出して待っておいて、そこにボールが入ってくるイメージが正解です。ほとんどの選手はボールが身体の近くにきてからキャッチングにいきますが、それでは遅すぎます。

 ギリギリに手を出すと修正が難しくなり、焦って手を出すことになってしまいキャッチミスにつながります。練習する際は実際に手本を見せて違いをわからせるのはもちろんのこと、「手を軌道上に置いてから心の中で2秒数えられるくらい余裕がないといけない」と伝えるとわかりやすいです。

 この感覚をつかむのに時間がかかることが多いです。重要なのは、ボールに対して手を出して待っていることです。ボールの大きさに手が作れていないとこぼれてしまうことになります。

④クロージング

 ボールをキャッチしたら、そのボールをきちんとクローズ(ボールを胸元にしまう)する必要があります。これができないと走り込んできたFWや味方DFとぶつかった際にボールをこぼしてしまいます。クロージングはキャッチしたら必ず行う必要があります。

 これもクロージングできればなんでも良いではなく、正しい方法があります。

 片手をサポートに使い、ボールを回すように逆手を滑らしながら両手を「重ねる」。この際に両手からボールが離れてはいけません。また、どの位置でボールをキャッチしてもキャッチした位置から必ず最短距離で胸元にボールを持っていきます。つまり、正面の上でキャッチしたボールをまず下げてから改めて胸元にもってくるのではなく、上から直接胸元にもってくる必要があるのです。

⑤キャッチングの3ゾーン

キャッチングの3ゾーン

ゾーン1:胸下から上
ゾーン2:胸下から膝の少し上まで
ゾーン3:膝の少し上から下

 必ずゾーン1↓2↓3の順番で教えます。難易度が低いものから高くなっていくため子どももわかりやすく成長しやすいのです。

 ゾーン1とゾーン2の違いはゾーン1でボールの大きさに合わせた正しい手の出し方を維持したまま下に下げると体の構造上、これ以上ボールの形に手を維持することができない場所が出てきます。その地点から下がゾーン2となります。

 なんとなくお腹に来るボールはゾーン2で、という曖昧なものではなく、ここでも明確な基準を示す必要があります。ゾーン2のボールはボールとゴールの間に自分の体を入れて腕は下げる。最初にボールがコンタクトするのは腕ではなく、お腹になる。同時に腕でボールがこぼれないように閉じるイメージです。ここでもボールが入ってくるのを待つイメージとなります。

 腕を前方向に出して待ってしまうと最初に腕に当たることになり、そのまま上にボールが跳ねて失点につながってしまいます。腕を前に出してボールを迎えてはいけません。

ゾーン3の取り方

ゾーン3の取り方

 ゾーン3はゾーン2で手を下げた位置よりもさらに下のボールということになります。実質グラウンダーのボールになります。この手の出し方も同じくボールの形にしたまま、腕を真下に下げると同時に自分の体も下に下げるイメージです。強いボールがきたらボールを弾いてしまうのではないか?と思われるかもしれませんが、正しいボールの形に手を置いていれば、手と地面でボールを抑えることができます。また正しい腕の位置、足の閉じ方をすることでボールのスピード、衝撃を吸収することができます。

 そしてキャッチしたら必ずボールをクロージングするために前に跳んで倒れます。この時に膝を曲げた状態にしないことが重要です。さらに足が開いてはいけません。

 もしボールがこぼれた場合にもう一度立ち上がって、ボールにアタックしなければいけなくなってしまうからです。膝が伸びきった状態で倒れれば、1歩で起きて、2歩目でボールにアプローチに行くことができます。それ以外の体の使い方になっていると、次のプレーができません。ボールをキャッチしたら体を全て投げ出して地面に倒れることが必要です。お腹もしっかりと地面につけることがポイントです。


つづきは発売中の『ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座』からご覧ください。


<プロフィール>
ジョアン・ミレッ
1960年11月1日生まれ、スペイン・カタルーニャ州出身。選手としてスペイン2部でプレーしたのち、1985年テラッサ(2部)の育成GKコーチに就任。2000~2012年までゲルニカ(4部)のトップから育成までのGKコーチを務めた。2013年に来日し、湘南ベルマーレのアカデミーGKプロジェクトリーダーを経て、2017~2018年までFC東京のトップチームGKコーチ。

【商品名】ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座
【発行】株式会社カンゼン
2020年1月15日発売

【書籍紹介】
 選手は海外のビッククラブに所属し、指導者も海を渡る。そんな時代が訪れ、日本のサッカーは、凄まじいスピードで成長している。しかし、数十年前と比べても発展しているとは言えないものもある。そのひとつがゴールキーパーのトレーニングだ。

 GKはサッカーにおいても独自性が高いポジションであり、選手育成にも専門的な知識が多く必要になるポジションであるにも関わらずグラスルーツでは、大人が子どもにむかって強烈なシュート浴びせるばかりで、育成のためのトレーニングとは程遠いのが現状だ。

 このままでは、体格や身体能力的に欧米人や韓国人に劣る日本からは世界に通用するGKは輩出されないのではないか? そんな状況を打破するためのヒントが、この本にはつまっている。


 

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