「eスポーツ」はスポーツか? サッカー選手を目指した少年がeスポーツ選手になるまで
2021年01月20日
サッカーエンタメ最前線近年、急速に拡大し、メディアに取り上げられる機会も増えているeスポーツ。日本ではまだピンと来ない方も多いかもしれません。しかし、世界的には優勝賞金が数十億円の大会もあり、「プロゲーマー」は子どもの憧れの職業となっています。サッカーキッズ憧れのFCバルセロナやマンチェスター・シティといった海外のサッカークラブもeスポーツチームを結成しています。かつて東京ヴェルディの育成組織でサッカーに打ち込み、現在は東京ヴェルディeスポーツに所属し、プロゲーマーとして活躍する『らんこむ』さんにお話をお聞きしました。
文●島田佳代子 写真提供●らんこむ
―サッカー歴を簡単に教えてください。
サッカーを始めたのは小学2年生の時です。小学3年生の時に東京ヴェルディのスクールに入り、中学、高校はジュニアユース、ユースと9年間活動していました。ユースの後は大学への推薦を頂き、進学しましたが、プロサッカー選手にはなれないんだなということで区切りはつけていました。
―サッカー選手の道から、プロゲーマーを目指された経緯はどういったものでしょうか?
オンラインでゲームをやるとランキングが出るじゃないですか。それで、自分はゲームが上手いとは思っていました。18歳の頃は、もしプロになれなかったら、仕事としてゲームができないか漠然と考えていましたね。とはいえ、その頃はまだeスポーツという言葉もありませんでした。
eスポーツという言葉が流行りだしたのはこの4年位ですかね。2、3年前に東京ヴェルディeスポーツができると聞いて、「いまだ!」と自分から連絡を入れたんです。そうしたら、次の日にヴェルディから「一緒にやりましょう」と返答を頂いて。そこからですね。自分から動いたことも良かったのかなと思います。
―高校まで所属していた東京ヴェルディに、このような形で戻れることは考えていましたか?
全く考えていませんでしたね。ゲーミングチームもですが、ヴェルディはサッカー以外にもホッケーやバスケなどがあって、フットサルチームが新しくできたんです。できたタイミングでフットサルチームにも入団させて頂きました。サッカーをやっておいて良かったなと思いましたね。
―らんこむさんにとってeスポーツとはどういうものですか?
サッカーのナイキカップやクラブユースといった全国大会に出場したことがありますが、そういった大会と同じくらいの臨場感を味わえるものです。それに、僕の周りでやっている人の中には、体が不自由な方もいますが、そういう方とも一緒に楽しくやっていて、魅力的なスポーツだと思います。
―eスポーツはスポーツじゃないといった声もありますが、その声に対してはどう感じますか?
ヴェルディの中で一番ガチにサッカーをやっていた僕からしても、eスポーツはスポーツだと思います。確かに、使うのは体ではないけれど、実際やってみると、体力もめちゃくちゃ使うんですよ。だから、炭酸飲料は飲みませんし、試合前はアミノバイタルのサプリやゼリー飲料を飲んでいます。ヴェルディのメンバーはスタッフも含めて、誰もタバコは吸いません。健康的です。それにメンタルトレーナーさんもいるんですよ。気持ちも大事ですね。
―日本人でも海外の強豪チームに所属することは可能なんですよね?
はい。世界のゲーミングチームの所属だけれど、日本で活動しているという人も結構いますね。ACミランのアカデミーのゲーミングチームも今年できて、そこに所属している選手もいます。僕はどちらかというとヴェルディを背負いたいという気持ちが強いです。今年からはヴェルディの一員として、タイを拠点に行われる『E-LEAGUE2021』で戦うんですよ。色々な可能性がありますよね。
―お子さんが毎日ゲームをやるようになったらどうされますか?
このページを見て頂いている親御さんは、お子さんにはあまりゲームをして欲しくないと思います。ゲームをやるって反対されるじゃないですか。僕もやっぱりそこは言われてはいました。
僕自身、ゲームはやっても実は1日1時間とか2時間なんですよ。サッカーの練習と一緒で、最初はある程度必要だと思いますが、やればやるほど集中力が低下するので、ずっとやることがいいことだとは思いません。だから、親に言われない程度にほどほどにやることがいいですよね。僕も子どもが長時間やったら止めさせます。目も悪くなって欲しくないので・・。
ただ、今はゲームでプロになる環境、道のりも以前より整っています。僕がやっているウイイレの他にも、色々なゲームタイトルがあって、プロになって食っていける時代なので、子どもにはそういう世界があることは伝えてあげたいです。
―サッカーとサッカーゲームの相互関係のようなものはありますか? また、上達するコツがあれば教えてください。
イタリア人や韓国人のゲーマーと試合をすることがありますが、韓国のゲーマーは負けん気が強くて、タックルがすごい。イタリア人は守備的で、ほぼ全員ゴール前を固めている。リアルなサッカーと通じるものがあるんですよね。だから、実際の戦術を知っていることも大事だと思います。
サッカーと同じで、この場面ではこうしたら強い、ここをこうしたら勝てるというものがあります。それを知っているかどうかといった知識勝負です。それらをどれだけ速く理解できるかも重要ですね。
―今後どういった活動を行っていきたいですか?
ゲーマーのイメージを変えていきたいと思っています。昔はゲーマーっていうと、ひとりで家に閉じこもってやっているイメージですが、今はオンラインで喋ることもできるし、オフラインの大会もあります。オフラインの大会で集まると、「〇〇でサッカーやっていたよね?」とか、「俺、どこでサッカーをやっていたよ」と、本当に楽しいんですよね。
それから、今後ウイニングイレブンがオリンピックの種目になると思っているので、そこに向けて準備をしておきたいです。それもまだ時間があるので、もし今見てくださっている中学生、高校生の方で、僕と一緒に戦ってくれる方がいれば連絡をください。親御さんの了承が必要ですが、ヴェルディにも14、15歳の選手がいますよ。僕も講師ではないですが、教えることもしています。
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