サッカーは「1対1」ではなく「2対1」がベース。海外の指導者の8割がそう答える、海外では当たり前にある感覚

2025年06月04日

育成/環境

近年では欧州で生まれた『ヴィセラルトレーニング』『ライフキネティック』『エコロジカルアプローチ』といったトレーニングの手法が日本でも言語化され、それを導入しようと試みているクラブも出てきている。ただ、指導者たちはそれらの情報を書籍などで知識として手に入れても、いざ子どもに落とし込もうと試みる過程で苦労している。そこで今回は『認知→判断→実行の回路を繋げるジュニアサッカートレーニング』より、第2章「認知」の力を伸ばすトレーニング「2対1」を一部抜粋して紹介する。

著●池上正


サッカーは「1対1」ではなく「2対1」がベース。幼稚園生が感覚を掴むまで3年は待つ覚悟を

 私はジェフ千葉や京都サンガF.C.などJリーグクラブにいたときに、海外の指導者研修に10回以上は参加した経験があります。せっかくなので、海外の指導者たちに直接、こんな質問をしていました。

「サッカーは1対1がベースですか? それとも、2人の関係がベースですか?」

 結果は、8割以上の指導者たちが「2人の関係がベースだ」と答えます。それが海外では当たり前にある感覚なのです。ほとんどのトレーニングに味方がいます。1対1のドリブル突破を養うようなトレーニングはほとんどありません。

「味方とどう崩しますか?」

「味方とどう繋がりながら前進しますか?」

 そんなふうに問いかけるトレーニングをベースにしながら全体が構築されています。

 対する日本の場合、サッカーを始めた子どもに教えるのはまず「1対1」というのが日常なのかもしれません。そういうトレーニングが多いので、子どもたちも目の前に相手がいるときには「抜かないといけない」という感覚でドリブルを仕掛けてチャレンジする状況があります。

 私が幼稚園生の子どもたちを担当していたときには、初めから「2対1」などをベースにしながら、必ずこのような声掛けを意識していました。

「味方がいるよ? どうする?」

 当然、幼稚園生ははじめはボールがあるところに群がります。そしてボールを奪ったならば、一人でボールを運んでゴールを目指します。サッカーを始めたばかりのときは、それが自然な姿といえるでしょう。でも、サッカーには味方がいることを初めのうちから教えてあげることが大事です。

 こう問いかけてみてください。

「ねえねえ、こっちの子もボールが欲しいみたいだよ?」

「2人で協力してゴールを奪うと、2人とも嬉しいよね?」

 幼稚園生なので難しいことはわかりません。指導者として、子どもたちが楽しみながらボール遊びに興じている様子を見守りながら、ときどき「2人の関係性」を意識してもらうように、時間をかけながら感覚を掴んでいってもらうのです。

 ある指導者研修の場所で私が「幼稚園生の場合はなかなか2人の関係性などがまだわからないので、感覚を掴んでもらうまでに最低でも3年はかかりますよ」という話をしたことがありました。すると、会場のなかから、

「そんなに待つことはできません」と、おっしゃる方がいました。その指導者曰く、もっと早くできるようにしたい、ということのようでした。

 日本人の多くの指導者にとって〝教える〞ことは、そのような感覚なのではないでしょうか。教える、イコール、子どもができるようになる。それがセットになっているから、子どもができるようになると指導者として安心できるのです。

「今日はいいトレーニングをしたぞ」

「子どもたちが変わったぞ」

 そこには指導者が満足していることが十分に含まれています。だから、子どもに〝答えありき〞で無理矢理に教え込んだり、ときにはできない子どもを叱りつけたり、という方向に行ってしまうことがあるのです。


全文は『認知→判断→実行の回路を繋げるジュニアサッカートレーニング』からご覧ください。


【商品名】『認知→判断→実行の回路を繋げるジュニアサッカートレーニング』
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2025/6/5

【書籍紹介】
頭の中を鍛え、「判断」から「実行」に移す
最先端メソッドを現場レベルへ

のべ50万人の子どもを指導してきたジュニア年代のエキスパートがわかりやすく「言語化」

オシム監督にも師事した池上正氏が『ヴィセラルトレーニング』といった最先端とされるトレーニングのアプローチ手法について、誰でもわかる平易な表現を用いて言語化すること、そして実際のトレーニングに落とし込んで表現することで、ジュニア年代も含めたあらゆる指導者たちの理解を深めることを目的とする。

池上氏は「現代の子どもたちは”頭が動くトレーニング”によって、よりサッカーがうまくなる」と語っている。「頭が動く」とは、子どもたちが「判断」をする前に「無意識レベル」で「認知」できるようになることを意味する。

本書を手に取った指導者や子どもたちの「無意識レベル」に働きかけ、「認知→判断→実行」の回路をスムーズに繋げる、そのサポートとなる一冊。


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