サッカーはすぐに上手くならない。美術から学ぶ「才能」の正体【サッカー外から学ぶ】
2019年06月13日
育成/環境「あの子はサッカーの才能がある」「相手チームの10番はセンスのあるプレーをする」。ジュニアサッカーを観ていてこういった話を耳にした、もしくは感じたことはないだろうか。ではその「才能」や「センス」のあるプレーとは一体どういったプレーなのか。具体的な言葉で説明できる人はどれほどいるだろうか。今回の連載「サッカーを“サッカー外”から学ぶ重要性」は、美術・芸術分野の世界から「才能」や「センス」といった言葉の正体について考えていく。
文●大塚一樹 写真●Getty Images、ジュニサカ編集部
「絵がうまく描ける」のって絶対才能ですよね?
先日、18歳でA代表デビューを飾った久保建英選手が話題だ。彼の才気溢れるプレーを見て「サッカーの才能」について考えさせられたコーチも多いのではないか。ジュニア年代のサッカーコーチならば、久保選手の少年時代のプレーを目の当たりにした人も多いはずだ。“久保くん”は、当時から技術はもちろんボールフィーリング、認知、選択、実行、どこを切り取ってもズバ抜けていた。彼に関わったコーチの多くが言うようにそのプレーは「教えてできるプレーではない」し、「育てようと思って育てられる選手でもない」。
では才能の前に育成は無力なのか? もしかしたら、ある一定の才能に対してはそうなのかもしれない。しかし、久保選手ほどではないにしても、「教えなくてもできる子」はいるし、「時間をかけないとできるようにならない子」との差を感じることはある。
前置きが長くなったが、今回は子どもたちの「才能」について考えてみたい。学ばせていただく「サッカー外」の識者は、『絵はすぐに上手くならない デッサン・トレーニングの思考法』の著者でデッサンスクール『トライトーン・アートラボ』でプロ向けの指導も行う成富ミヲリさん。
そう、子どもたちを残酷に「あちら」と「こちら」に分ける「絵のうまい・下手」。美術、芸術の世界をヒントに、「才能」について考えてみようという試みだ。
「絵がうまく描ける人は生まれつきうまく描けると思っている人って多いですよね? 美大に行くような人は子どものころから絵の才能があったんだと。傍観者として語る分にはそれでいいと思うんです。私も『絵がうまいんですね。才能ありますね』と褒められたとき、プロとしていちいち否定したりはしませんし、才能があることにしておいたほうが有利に事が運ぶこともありますよね(笑)。でも、絵がうまくなりたいと願う人、講座に来るような人が才能の有無を前提に上達の話をしたときには、少しお話をして考えてもらうようにしています」
どう描いてもうまく描けない。犬や猫、特徴を捉えてうまく描ける子がいる一方で、自分が一生懸命「写実的に」描いたのはどう見ても「写実的ではない」…。そういえば図工や美術で絵を描く機会はあっても絵の描き方を教わったことはない。うまい人ははじめからうまかったし、下手な人はずっと下手なまま。多くの人はこれを「才能の有無」と結論づけて生きてきたのではないだろうか。
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