最低限、教えるサッカーの共通理解とは?「中学2年生くらいまでは“サッカー”をやらなくていいんじゃないか」

2022年12月06日

育成/環境

サッカースクールmalva(以下、マルバ)の浅野智久代表へのインタビュー第2回までは、サッカーに必要な感覚の磨き方や、固定概念にとらわれない指導を教えていただいた。第3回ではそれをサッカーの育成に一般化すべく、話をさらに掘り下げていく。

【第1回】マルバが求めるピッチでの「感覚」とは? サッカースクールが11人制で全国優勝できた理由
【第2回】「いいサッカー選手」は「自分の範囲」が広い。成長の可能性を狭めかねない既成概念とは?

インタビュー・文:加藤健一(ジュニサカ編集部)


才能を潰している部分もある

――ワーチャレに出るようなレベルの高いチームは、「こういうサッカーがしたい」というところに選手を当てはめていっているような気がします。

「皆さん、サッカーというのは“こう”というのがあると思うんです。海外からも学べる時代ですし、情報はたくさんあるじゃないですか」

「でも、僕はあまりサッカーを学んでいなくて、子どもたちを学んでいるんですよ。だから、マルバはボールを取りたいとか、ゴールを決めたいみたいな純粋な感覚を磨く場所なんです」

「正直、別にサッカーはどうでもよくて、長い人生でどう考えて生きていくか。どう自分の良さを出して生きていくかが一番大切だと思っています」

「サッカーって選ぶことの連続じゃないですか。パス、ドリブル、守る、攻撃する……。それって人生も同じだし、それをもっと大切にしたい。あと、中学2年生くらいまでは“サッカー”をやらなくていいんじゃないかなと思っています」

――ここでいう“サッカー”はどのようなものを指していますか?

「もちろんサッカーをやるんですけど、システムとか11人でどう攻めるか、守るかみたいなことはやらなくていいと思います」

「アルゼンチンとかブラジルを見ていても、ここで奪おうというのがあるじゃないですか。でも日本はみんなでやろうというのが強い。それがいいところでもあるけど、もうちょっと変えていかないと世界と戦っていくのは無理だと思うし、才能を潰している部分もあるんじゃないかなと。そこはもうちょっと考えていきたいですね」

最低限、これは教えないといけない

――中には育成年代で伸び悩む選手もいますよね。

「『こうしたい』より『こうしなさい』が先に来るからなのかな。もっと子どもたちの狙いが見えるような形があるといいですよね。自分で『こうしたい』と考えている選手と、人から教わって積み重ねていく選手だと、伸びしろがあるのは前者だと思うんです」

「マルバで選手を選ぶときもそれを考えています。狙いがあって面白い選手を選んでいけたらいいですね。そういう選手がチームにいると、能力のある子も伸びていくはずです」

――最低限、これは教えないといけないというものは無いんでしょうか。

「相手を困らせたいというのはベースとしてあります。困らせるためにどうするかを基準にして、ボールを持っている人ともっていない人がどちらも見える状態だと困らない」

「相手にとって得なのか困るのか。相手が迷う中にヒントがあるというのが全員の共通理解ですね」

「1対1で仕掛けるとコースが空く。コースが消されたら運ぶ。運ぶと見せかけてパスを出すとか。そうやってエリアを突破する方法を学んでいくと、スペースを覗けるようになっていく。これがベースにあれば、考える質がグッと上がります」

――ベースになる考えを理解しているからこそ、成長する環境が活きてくるんですね。

「サッカーって分かりにくいじゃないですか。どれが正解なのか分からない。でも、これを知っているとうまくなるんですよ。マルバは1対1とか言われるけど、実は2対1の作り方とか、いろんな角度から覗くとか角度をつけるとか、そういう部分を大事にしていますね」

<関連リンク>
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