“強者を倒すための戦術”の磨き方。新型ハイプレスの最先端
2016年11月08日
コラム「ポゼッションサッカー」という『矛』への対抗策は、スペースを与えないように自陣にブロックという『盾』を作るという策が定番とされてきた。しかし最近になって、その構図に新たな変化が見られるようになった。それは「ハイプレス」という『矛』を用いる方法である。しかし、この『矛』に『矛』で挑むという現象は、ある賢人によって10年前の日本で既に出現していた。発売中の『フットボール批評issue14』から一部抜粋して紹介する。
文●西部謙司 写真●Getty Images
『フットボール批評issue14』より一部転載
「強い相手に強かった」オシムの戦術
イビチャ・オシムが日本代表監督に就任したのが2006年、ちょうど10年前だった。
オシムは旧ユーゴスラビア代表監督として知られていたが、日本代表に招聘されたのはジェフ市原(当時)での手腕があったからだ。オシム監督は、それまで中位にとどまっていたチームを一気に優勝を狙える位置まで押し上げていた。
戦術的な特徴は、「強い相手に強い」ことだ。
力関係が上のチームと対戦するときの定石は、引いてブロックを作ってスペースを与えず、カウンターアタックから少ないチャンスを生かす、いわゆる堅守速攻である。ところが、オシムの戦術は籠城戦ではなかった。マンツーマンで敵陣深くからでもプレッシャーをかけていった。籠城作戦がいわば「弱いまま勝つ」方法だとすると、城外にうって出るオシムの戦法は、ときに力関係を逆転させてしまう破壊力を示していた。
アジアでは強豪だが、ワールドカップに出れば格下扱いになる日本。世界の中位。その点で、上位を食っていけるサッカーは確かに魅力的だった。
イタリアのように、カウンターアタックを研ぎ澄ませて世界一を獲ることもできる。今年のユーロでは、ポルトガルが大会途中からカウンター型に転換して初優勝を成し遂げた。UEFAチャンピオンズリーグでも、アトレティコ・マドリーは堅守速攻型の第一人者として3シーズンで2度もファイナリストになっている。強力なボールポゼッションのチームに堅守速攻型のチームが対峙する、これは現在の基本的なゲームの形といっていい。
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