力に差のある子の指導は?

2012年06月05日

コラム

池上正さんが子どもに対する悩みや、保護者・コーチの子どもを取り巻く大人に関する疑問や悩みに答えるこのコーナー。今回のお悩みは「力に差のある子の指導は?」です。

◎練習(トレーニング場面での悩みやギモン)

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(質問者:小学4年生コーチ)

コーチをしています。実力の差が開いてしまった子どもたちの練習方法についてです。4年生でサッカーは好きなのですが運動が苦手な子がいるのです。練習には来るのですが、正直言って他の子と一緒に練習ができないほどです。こういった実力差のある子どもたちには、どういった指導がいいのでしょうか?

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ミニゲームを軸にした練習を。
実力差のある集団にこそ成長がある

 町の少年団やクラブであれば、運動能力に差があったりとさまざまな子どもが集まるのは当然のことですね。クラブのホームページの選手募集には「初心者OK! 初めてボールを蹴る子でも大丈夫。一緒にサッカーを楽しみましょう!」などと書かれているのをよく見かけます。

 相談された方はおそらく、ご自分が狙いとするトレーニングにその子がついてこれないことを気にしていらっしゃるのでしょう。そんなときは、練習の中で試合をする機会を増やしてあげてください。ミニゲームであれば、その子はコートにいられます。なかなかボールに触れないかもしれませんが、みんなと一緒にボールを追いかけることはできるはずです。

 その中で、子どもたちにこんなふうに話してみてください。「○○君もボールを蹴りたいと思ってるんじゃないかな? パスしてあげたらどう? パスしてからまたすぐにもらいに行ってあげたらいいんじゃない?」

 これと関連したことで、大学の授業中に学生に尋ねたことがあります。「実力差のある子が集まってサッカーをすると、何が育つでしょうか?」
  学生たちは「相手を思いやるやさしさ」とか「協力する心が育つ」などと答えました。一方で、同じレベルでやるとののしり合いやけなし合いが起こりますね。「そうやって切磋琢磨することでサッカーはうまくなるんですよ」と言う人もいますが、大学生に「どっちがいいですか?」と尋ねたら、「いろんな子どもがいる環境のほうがいい」と答えました。

 例えば、人数が多くなると、ひとつの学年をうまい子の順番でA・Bと分けたりしますね。でも、言ってしまえば、Aの中でも力が上か下かはあります。特に子どもはそういう序列をすぐに見極めます。みんなより秀でていると「うまいと思って調子に乗ってる」と叩かれ、少し下だと「下手くそ」と虐げられることもあります。同じ小学校だと、サッカーの力の序列がそのまま学校生活に持ち込まれ、うまい子が下手な子をまるで家来のように扱う、支配するといった問題が出たというチームの話も聞いたことがあります。

 そういうクラブは、大人も下手な子を一緒に責めてしまってはいないでしょうか。「あの子、うまくいかないみたいだね。助けてあげたら?」逆にそんなふうに促すと、パスを出したり試合でシュートを決めさせようと懸命に考える子が現われ、その子たちは技術的にも精神的にも大きく成長していきます。

 練習メニューの選択は重要ではありますが、指導者の一番の役目はそこではありません。順天堂大学サッカー部監督の吉村先生は「指導者は練習方法をどうするかではなく、選手のモチベーションをどうやってアップさせるかが大切。そこがベースではないか」とおっしゃいます。私もその通りだと思います。

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