「監督の仕事」とは何か。湘南ベルマーレ・曺貴裁監督がロシアW杯で感じた”サッカーの奥深さ”
2018年08月11日
未分類日本代表はロシアW杯で2大会ぶり3度目となるグループステージ突破を果たした。ベスト16では強豪ベルギー代表を相手に2点を先行。逆転負けを喫したものの「日本らしいサッカー」を世界中に示した。また、ドイツ、スペイン、アルゼンチン、ブラジルといった強豪国がベスト4に残れなかった今大会。 「サッカーの奥深さ」を感じたという湘南ベルマーレの曺貴裁監督はロシアW杯はどのように映っていたのだろうか。
取材・文●西部謙司 写真●Getty Images、フットボール批評編集部
勝利には「ストーリー」が必要
ワールドカップはほぼ見ていますよ。グループリーグは全部ではないですけど、ライブで見て、午前3時ごろからの試合は後追い再生とかで。今回は面白いですよね、ワールドカップ。見ていると面白いから試合がすぐ終わっちゃう(笑)。
これまでワールドカップで優勝するチームというと、ペレとかマラドーナみたいな、指導者が育てられない選手がいるという印象でした。育てるのではなく、生まれてくるのを待つしかないレベルの選手がいないと勝てない。でも、今回はそうでもない。知恵を出して努力を続けていけば、ひょっとして我々でもこれぐらいのチームはできるんじゃないかと思えた。いや、思えるだけで現実はそんなに甘くないんですけど、ただただ羨ましいだけという感じはしなかった。ちょっと「身近」になってきた気がするんですよ。
グリーズマンなら何とか近づけるんじゃないかと思える。凄い選手ですよ、グリーズマン。でも、どうにもならない存在かというとそうでもない。勘違いを承知でいえば、イングランドなら日本が対戦しても何とかなるんじゃないかと。ベスト4がいつもより身近になった。Jリーグでもよく「湘南は個がいないよね」と言われますけど、そういう意味では我々にとっても「元気が出るワールドカップ」でした。
Jリーグで「湘南はカウンターだけじゃん」とよく言われるのですが、カウンターアタックは特徴というより、単にサッカーに必要なもののひとつなんです。日本戦でベルギーが決めた3点目のようなのは、カウンターというスタイルではなくて、あれをやる力がチームの土台にあるかどうかというだけ。なぜカウンターが必要なのか、どういうときに、どんな相手に効くのか、それをスタッフや選手が積み上げていった結果としてのカウンターなのであって、ただ速く攻めるだけのカウンターなんか決まるわけがない。
ストーリーが必要なんです。その場しのぎでは世界でもどこでも勝っていけないのだと思います。日本は 今回、ワールドカップの約2カ月前に監督を交代しました。ただ、そこに 監督を代えた人に覚悟があって、どうなってほしいかがあれば、チームは良くなる。ブラジルやドイツは、その点でストーリーを作れていなかったのかもしれませんね。ある程度まではあっても、次の段階をどうするかで困っていたようにも見えました。
ドイツは4年前に圧倒的な力を示して優勝した。4年後に向けてどういうストーリーを描いたのか。その準備はもちろんしてきたでしょう。ただ、結果的に4年前を再現しているように見えてしまった。
8年間、ほぼ同じメンバーでチャンピオンを目指すのは非常に難しいと思います。メンバーが同じなら、 相当サッカーを変えるしかない。例えば、(トニ・)クロースをCFにして(トーマス・)ミュラーをCBにするぐらいの変化がないと難しい。2回同じことを起こすのはまず無理なのではないでしょうか。
ただ、マンネリでは歩みが止まってしまいますが、かといって新しい選手に賭けるだけというのは浅はかすぎる。戦術だけでも選手だけでもなく、サッカーは相手によって、あるいは天気によって、食べ物によって勝利に導かれる。ピッチだけで語れる時代ではありません。
ドイツも前回からはさまざまなアプローチを変えてきているのですが、結果からみるとそれが選手に火をつけるところまでいかなかった。CLに出ているクラブの主力ばかりで、前回大会も優勝している中で、さらに今回も優勝するぞという気持ちが浸透しているようには見えなかったですね。けれども今回グループリーグで敗退したことで、次はまた若い世代を中心に起き上がってくるのではないでしょうか。
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