「監督の仕事」とは何か。湘南ベルマーレ・曺貴裁監督がロシアW杯で感じた”サッカーの奥深さ”
2018年08月11日
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「日本人のサッカーをやればいい」
日本でも、川島(永嗣)を起用し続けるかどうかが話題になっていましたが、西野(朗)監督は川島を使い続けることに西野さんのストーリーを持っていたと思います。
イングランドは(ジョー・)ハートを選外にして若い(ジョーダン・)ピックフォードを使っていましたが、これもそういうストーリーを描いたうえのことでしょう。それがないと選手も納得しませんから。まあ、ハート本人は納得していないかもしれませんが。
今回のワールドカップで、日本は日本らしいサッカーを示す時間が長かった。それは良かったと思いながら、監督としては日々変化する選手たちをひとつにして、本番で100パーセントの力を出させるためのマネージメントが求められているのだなと改めて思いました。戦術そのものよりも手法の部分ですね。
各国それぞれのサッカーがある。スペインならティキ・タカと失ったらすぐに奪い返す守備、ドイツは力強さと速い攻撃、ブラジルは個の能力を生かす、というような特徴があるわけですが、チームの特徴が際立っていればいるほど、試合が進むにつれて研究されて力が出しにくくなる傾向が出ていました。1つの方向に振り切ってしまうと、かえって勝利の確率は高くならずに、弱点をつかれてしまう。
65パーセント以上のボールポゼッションを記録したチームの勝利が3割と少しぐらいしかなかった。つまり、ボールを保持すればするほど勝てない。
ボールを保持して、崩し続けて、点をとるのがサッカーなんだというのは本質としてあると思います。一方で、崩さなくても点が入るならパスなんか回し続けなくてもいいという考え方もある。どちらも大事だと思うのですが、どちらかしかできないと、自分たちが望む試合にならなかったときに打開できなくなってしまいます。これはたぶんビジネスや教育でも同じではないでしょうか。
例えば、ある学校で「うちは数学に力を入れていく」という方針があるとします。当然、数学の授業は多くなるわけですが、だからといって英語が不要というわけではない。むしろ独自性を出そうとすると、それ以外のものが大事になってきます。何かに特化する場合、それ以外の要素が同時に引き上げられるようになっていないと、実は難しいんじゃないかという思いは以前からずっとありました。
一時期、日本はバルセロナ化したらいいんじゃないかという議論がありましたよね。スペイン人もそんなに体が大きいわけではないし、身体能力でないところで勝負したほうがいいんじゃないかという論調。僕はそのときに「それは違うんじゃないか」と思っていました。バルセロナのサッカーはあのメンバーだから成立しているのであって、スペイン全体であれをやっているのもバルセロナしかない。(イビチャ・)オシムさんは「日本人のサッカーをやればいい」と言っていましたけど、僕はその意見に賛成です。
(中略)
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