畑喜美夫×幸野健一 両氏が語る、いまサッカー界の育成に必要なこと -“選手が主役”の指導法「ボトムアップ理論」が子どもの自立を促す!-(前編)

2013年10月06日

コラム

体罰や暴力問題のない世界で、子どもたちが主体的になって、「個」と「組織力」を伸ばしていく育成。こういった育成は、子どもたちの“自立”を伸ばすことにつながるといわれる。今回は、それを数十年前から提唱し続けてきたお二人に話を聞いた。
ひとりは、先日発刊された『子どもが自ら考えて行動する力を引き出す 魔法のサッカーコーチング ボトムアップ理論で自立心を養う』の著者で、安芸南高校サッカー部監督の畑喜美夫氏。もうひとりはJリーガー・幸野志有人選手(現・V・ファーレン長崎)の父としても知られ、サッカー界の育成における問題を解決すべくサッカー・コンサルタントとして活動する幸野健一氏。両氏の言葉に耳を傾けたい。

文●小澤一郎 写真●編集部

 


ボトムアップの手法が子どもたちの能力を引き出す

――待望の新刊(『子どもが自ら考えて行動する力を引き出す 魔法のサッカーコーチング ボトムアップ理論で自立心を養う』)が発売されましたが、どのような狙い、想いを持って執筆にあたられたのですか?

畑喜美夫氏(以下、畑氏) 原点は、やはり私が小・中学校の時に在籍した大河FC(広島大河フットボールクラブ)で浜本敏勝先生から受けた指導です。もう30年ぐらい前から主体的に物事をやりながら、先輩の木村和司や後輩の森島(森島寛晃)、田坂(田坂和昭)、他にも十数名のJリーガーや日本代表を育て、それが1つの街クラブでできていたわけです。

例えば、高校サッカーで言うと、1割がJの下部組織や私立、県立でスポーツ科を持つ強豪ですが、他の9割のチームには個の能力が高い選手が入ってきません。そこで何をベースとしていきながら戦っていくのかとなった時には、子どもたち自身が持つ能力を引き上げていくしかない。そういう環境で自分が小・中学校で教えてもらった自主自立の精神を上手く今の高校生年代にも伝えていけないかと思い、ボトムアップの指導を始めました。

ただ、そういう指導を実践するにしたがって、ボトムアップという手法で育成年代の子どもたちの能力を引き出すこと、そしてそれを日本独特のストロングポイントとして確立していく必要があるのではないかと考えるようになり、そういう想いを今回の書籍に込めました。

――現在、サッカーコンサルタントとして活動されている幸野さんですが、畑先生の新刊を読んでの感想は?

幸野健一氏(以下、幸野氏) まず背景として、私自身が34年前の17歳の時にイギリスに渡り、なぜ日本と世界の間にそこまで差があるのかという秘密を探しに行った旅があります。当時の私は、日本が元々サッカーで追いつけない理由の1つとして、彼ら先進国の中には練習法の中に魔法のレシピがあるからだと考え、それを探し求めて何度もヨーロッパを行き来していました。

しかし、結局そんなものは何一つなくて、むしろ日本の方が緻密に練習をやっているぐらいでした。ただ、実際に私も向こうの家庭でホームステイをして、子どもを大人として扱って自立を促す家庭の教育、躾(しつけ)が見えてきました。サッカーは彼らが生み出したスポーツでもありますから、そこで彼らのように小さい頃から自立させ、子どもたちがピッチの中で自主的に判断して自分でやるという本質が、すでにサッカーには含まれているのだと気がつきました。

3年前に畑先生がやられている活動を見聞きし、私の中でまさに「これだ!」という確信が芽生えました。畑先生のボトムアップ理論を私自身も勉強させていただく中で、これを普及させることが結局は日本サッカーの強化の近道になると感じました。また、日本の未来ある子どもたちの99%はプロにならないわけですから、その子どもたちが社会人になった時に、格差社会が進むこれからの厳しい時代の中で生き抜く力を付ける指導が必要になります。この本はそういう意味では指導者や保護者はもちろんのこと、むしろそれ以外の全ての大人にこれからの子どもを育てる上で是非読んでもらいたい本だと思っています。

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