震災を乗り越えて――。ソレッソ熊本が挑んだチビリンピック全国大会
2016年05月10日
コラム一番悔しい負け方をしたけれど…
そして迎えたチビリンピックの全国決勝大会。この大会のレギュレーションは独特で、3ピリオド制(プレー時間36分:12分×3ピリオド)で競われます。選手は、第1、第2ピリオドは総入れ替えしなければならず、自由に交代できるのは第3ピリオドだけ、同じ選手の出場は最大でも2ピリオドまでに制限され、全ピリオドに出場することはできません。そのためチームの総合力が試されるのです。
選手たちには、チーム一丸となって「支援をしてくれた仲間に結果で恩返しをすること。熊本の人たちに勇気と元気を与えられるようなパフォーマンスをすること」の他に、もうひとつの目標がありました。それは、関東第1代表の大宮アルディージャジュニアと対戦すること。大宮アルディージャの森田浩史監督は熊本県出身。ソレッソ熊本の広川監督とは高校の同級生だったのです。「広川監督に勝ち星をプレゼントしたい」との思いが選手たちにはありました。しかし、ソレッソ熊本は大宮アルディージャと予選リーグは別のブロックだったため、対戦を実現するには、最低でもベスト4まで勝ち進まなければなりません。でも、心配は無用でした。ソレッソ熊本は、初戦を3-1と勝利で飾ると、予選をB組の2位で勝ち抜き、準決勝進出。A組1位の大宮アルディージャと対戦することとなったのです。
その準決勝、第1ピリオドの開始早々に、大宮アルディージャに先制されてしまいますが、第2ピリオドになって広川豪琉くんの間接フリーキックは相手選手にあたり、そのままゴールネットに吸い込まれていきます。ソレッソ熊本は同点に追いつくと、勢いそのままに、第3ピリオドには清永賢志郎くんのゴールで勝ち越しますが、直後に大宮アルディージャの猛攻がはじまります。何度もコーナーキックに逃れましたが、ついに残り時間1分のところで同点弾を許してしまいます。延長戦では試合が動かず、決着がついたのはPK戦。軍配があがったのは大宮アルディージャでした。その瞬間、ソレッソ熊本の挑戦も幕をとじました。
試合を終えて、ベンチでうなだれる選手たちに広川監督はこんなメッセージを送っています。
「今回の大会(全国決勝大会)は、みんなが九州大会で勝ち取った権利ではあるけれど、決して当たり前のことじゃないんだよ。いろいろな人たちに支えてもらったからこそ、この舞台に立つことができた。支援してくれた人たちに結果でお返しできるのが一番よかったかもしれないけれど、みんなの取り組む姿勢に間違いはなかった。一番悔しい負け方だったと思うけれど、みんなが持っているものは全部だせたと思う。これからも、その恩をしっかりと自分なりに返せるようにがんばってほしい」
広川監督は準決勝のゴールを「2点とも、ぶかっこうで泥臭いゴールだった」と言いますが、それは選手たちにとって、今の自分たちの力をすべて出し切り、精一杯走り切った何よりの証であり、最高の褒め言葉なのではないでしょうか。
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