東京Vの知将が語る日本人選手の特徴。スペイン人選手よりも優れている点とは?

2018年05月13日

インタビュー

日本がスペインより優れている点とは

――外国人監督にとって異なる文化、言語を持つ国で指導するためには、あなたのようにしっかりと出向く国、文化、国民の特徴を理解し、受け入れる必要があります。日本に来る前に日本についての書物を読んだなど、具体的に行ったことは何かありますか?

 本を読んだことはないですが、先にも話した通り日本で指揮を執ったスペイン人の監督仲間に話を聞きましたし、インターネットで日本の基本的なことは調べました。スペインでの常識が日本の常識とは限りませんので、例えば私の今の生活においてはシャワーを浴びる時間についても注意しています。

 スペインでは自分が好きな時にシャワーを浴びることができますが、日本では夜10時以降のシャワーは 避けるようにしています。また、テレビの音声ボリュームもスペインで生活する時よりは大幅に下げています。

――あなたほどの監督ですら、日本に適応しようと生活様式から変えているのに驚きました。

 自分が行く国に適応することはとても重要ですし、適応することは監督として海外で成功するための唯一の方法です。

――ただ、欧州トップレベルのラ・リーガで成功した監督が日本のようなサッカーで見ればアジアの小国に来て生活スタイルから変えることは簡単でないように思います。「自分はこうなのだから」と初めから適応する気を持たない監督もいるでしょう。

 私は欧州やスペインのサッカーの全てが優れている、逆に日本のサッカー全てが欧州に劣っているとは思っていません。もちろん、世界のサッカーにおいてスペインが強国として認められているのは事実ですが、だからといってスペインの全てが優れていて、全てを日本に持ち込もうとは考えていませんでした。中にはすでに日本の方が優れているものもありますし、スペインから持ってきてもここには適していないものもありますので、それを取捨選択することが重要です。

――では具体的に、日本のどういった部分が現段階でスペインより優れていて、スペインサッカー界に持ち帰りたいものですか?

 いくつかありますが、中でも日本人選手が体質的に持っている向上心はスペインに持ち帰りたいです。例えば、練習後に居残り練習をして個人の課題をクリアしようという意欲、練習前の1、2時間前からクラブハウスに来ていいコンディションを作るために準備をすること。

 スペインでは練習開始5分前に来て慌てて着替えてグラウンドに出てくる選手がプロの世界でもいました。日本では私が何も言わなくとも練習1、2時間前に来てジムで自分なりの準備を行い、練習後も多くの選手が時間をかけて自分なりのクールダウン、ジムトレーニングを行って帰宅します。

 こうした選手はスペインにも確かに存在しますが、パーセンテージとしてはかなり低いものです。ヴェルディでは全選手がそうです。

 例えば、私はスペインでテニス王者のラファエル・ナダルがある大会で優勝した2日後に大会で上手くいかなかったサーブ練習に取り組む姿を見たことがあります。しかし、プロのサッカー選手で、ある試合でクロスのミスを犯した選手が翌週の練習でクロスの個人練習をしている姿を見たことがありません。

 あるカンファレンスでこういう話をした際、「1部のプロ選手に個人練習は必要ない」とい 批判を受けたことがあるのですが、私は1部のプロ選手でも毎試合犯すミスがある以上、そのミスをクリアするための個人練習は必要だと考えています。

 スペインでは1部の選手にもなると「自分が全てを知っている、出来る」と考える傾向にありますが、決してそうではありません。1部でも酷いクロス精度の選手がいますし、代表に入るような選手でも何本もトラップミスを犯しているのをこの目で見てきています。自身の課題を克服するための練習をすれば、必ず選手としてのレベルは向上するのですから、取り組む必要があります。

 実際、私は現役時代よりも今の方がいいキックを持っています。なぜかというと、監督業をスタートした当初は特にGKに対して両足で何本ものクロス、シュートを蹴っていたからです。日本では私が指摘するまでもなく選手が自ら練習後にグラウンドに残り、自分の課題をクリアするための個人練習に励みます。

 ある程度こちらでその量、時間をコントロールしなければ彼らはオフの日にも練習するでしょう。こうした日本人選手が体質的に持つ向上心というのは是非スペインにも伝えたいところです。

(続きは、フットボール批評issue20でご覧ください)

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