プロになることがゴールじゃないでしょ?  興國・内野智章監督のブレない理念

2019年02月08日

育成を考える

今年興國高校からレノファ山口へサイドバックの選手として加入した起海斗選手は元々右ウイングの選手だった。興國を率いる内野智章監督は高2のとき起選手にこう訊ねた。「プロになりたいのか? ポジションにこだわるのかどっちや?」。なぜ内野監督は起選手にポジション変更を求めたのか。毎年のようにJリーガーを輩出し続ける興國高校サッカー部の秘密に迫る『興國高校式Jリーガー育成メソッド ~いまだ全国出場経験のないサッカー部からなぜ毎年Jリーガーが生まれ続けるのか?(著●内野智章)』。内野監督インタビュー最終回。

取材・文●吉村憲文 写真提供●興國高校サッカー部


【内野智章監督インタビュー第2回】日本で「人と同じことをやっていても選手は育たない」。それが興國の流儀


内野監督

リーガでできる選手を育てたい

――4月になるとまた新しい選手が入ってきますが、プロを目指すことを考えると彼らには実質3年ではなく2年くらいしか時間が残されていません。しかも日本の場合は戦術的な部分を学んでいないジュニアユースの選手が沢山います。
 
「組織的な守備は(大学やプロという)次のステージに投げてます。それを隠すつもりもありません。監督が変われば守備戦術は変わるので、最低限度の守備は教えているつもりです。
 
 この選手は守備できるよなと思っていても大学にいくと違うと言われたり、進学する大学によっても違ったりします。結局、指導者によって守備の目線は違います。うちはフルコートマンツーマンでいって、逃げ道をなくせと言っています。そんなことをするチームはほとんどありませんが。
 
 人に食いついている段階で『あいつ守備できない』と言われますが、そうでないとボールを奪う力はつかないんです。それでも、高3のトップチームで、リーグ戦や選手権の予選とか、結果も求める段階ではゾーンをやらせています」
 
――選手が入ってきて、この選手の特徴を生かすにはこのポジションだ。そうすればプロになれるという見極めは、何を基準に、どのようにするのでしょうか?
 
「自分の頭の中には需要と供給のバランスがあります。日本のJリーグ、大学サッカー。その中での需要と供給という。それがまずひとつ。

 次に興國が今のスタイルを選んだのと同じで、特化しないと(プロのスカウトに)見てもらえない。

 そのふたつがあって、特徴のある選手、例えば左利きの10番タイプ。日本には似たような選手がいます。でもサイドバック(SB)だったらどうやろ? 世界を見ればジョルディ・アルバ(バルセロナ)やマルセロ(レアル・マドリード)みたいな選手がいます。彼らが日本にいたら本当にあのポジションなのか? っていう発想、感覚と論理的なものが色々あります」
  
――左SBでJ2レノファ山口に決まった起海斗選手にはいつポジション変更を?
 
「高2ですね。『プロになりたいのか? ポジションにこだわるのかどっちや?』と訊くと、『プロになりたいです。でもSBは正直やりたくないです』と言いました。

 最初はひとつ上に大垣(勇樹/現・名古屋)、島津(頼盛/現・金沢)がいたので『じゃあ、自分が出たい右のウイングで試合に出れる?』『いや、無理です』『自分のポジションにこだわって、ベンチを温めるか、それとも修行のつもりでSBやるか? だってSBは高い位置をとればサイドハーフと同じやし、インサイドを取ったらトップ下やボランチと同じやし。当然ウイングやってもSBと入れ替わって守備をすることもあるやん。全部つながってくるから』って説明をしたうえで、『どっち?』『SBで出ます』と。
 
 ただ本人の中では3年になったら、もう一度右のウイングに戻るもんだと思っていたようです。新チームになってもポジションが戻らないので『あれ?』っていうのがあったみたいですが。
 
 それでも(SBとして評価してくれた)山口にオファーを貰うよりも前に、自分の中で納得したみたいです。大垣や西村(恭史/現・清水)、島津のことでプロのスカウトと話していても、実際にいい左SBがいないと。2年の起のプレーを見て、スカウトが『あの選手楽しみですね』っていうんです。それを起には伝えていました。
 
 同時に『前をやりたいのであればやってもいい』とも言っていました。同じ学年の中川(裕仁/愛媛に加入)の存在もありました。起は彼ほど速くないし、彼ほどシュートも上手くない。そういった色んな要素もありました。自分の中で価値を見出していったのもあると思います。中3で彼を見た時に、『将来的にSBもありやな』っていうのはありました。手元に置いてみて最終的に見極めればいいと考えていましたが。
 
 僕の中にはリーガでプレーできる、プレミアでできる、ブンデスでできる選手を育てたいというのがブレずにあるんです。そこで見た時に起の場合は1列目としてはスピードが足りないんです。本人にハッキリいいました。

『(右ウイングとして)Jリーガーにはなれるかもしれない。でも左利きのブラジル人助っ人がきたら負けちゃうだろうな』と。『中村俊輔のようなMFのプレースタイルで、自分の才能が開花すると思うか?』と訊いたら、『それはないと思います』『俺もそう思う。プロにはなれるかもしれない。その才能はあるかもしれないけど、なることがゴールじゃないでしょ』と。

 JリーグでもFWは外国人と勝負しなくてはいけないと、Jのスカウトと常々話していますから。実際それができるかどうかは1年生の時にスペイン合宿に連れていって確認をします。いい選手は『外国人も手こずっているわ』って」

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