受け継がれるべき志を知る ジュニアサッカー パイオニアたちからのメッセージ
2013年02月05日
インタビュー<追悼特別記事>
去る1月11日(金)に、大阪府の枚方フットボールクラブ創設者の近江達さん(享年83歳)がお亡くなりになりました。枚方FCといえば、昭和44年(1969年)に創設された歴史ある町クラブであり、創造性豊かな指導を理念として、個の育成にも定評のあるクラブです。
今から約6年前、近江先生には『ジュニアサッカーを応援しよう!VOL.3』(2006年12月6日発売)の連載企画「ジュニアサッカー パイオニアたちからのメッセージ」にて、本誌にご登場いただきました。
日本サッカーの育成活動の礎を築かれたパイオニアである近江先生のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ここでは、当時のインタビュー記事を紹介いたします。
(写真協力●枚方FC)
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※『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.3』P154-163より転載(文●木村元彦)
ジュニアサッカーの普及、強化に真っ向から携わってきた人物にスポットを当てる連載企画。近江達は外科医という仕事を続けながらも、大阪・枚方を舞台に天才ドリブラー佐々木博和ら、多くのテクニシャンを輩出してきた。とにかく「サッカーの面白さを伝えたい」という熱き思いは未だ冷めることを知らず、いまだバリバリの現役プレーヤー。“ありきたりな型にはおさまらない”パイオニアの話に耳を傾けていきたい。
教育をしているほうが下手で
教育されていないほうが上手
――枚方FCのホームページにある先生のコラムを拝見させていただきました。たいへん興味深いのが、昭和40年代から外科医として病院勤務をされながら少年サッカーの指導を始められた。ここに既存の学校教育やサッカー指導に対するオルタナティブな反問を感じます。戦後のジュニアサッカーの指導の姿勢というのは、そういう形でほとんどの方が身銭を切り、ボランティアベースで始められたということを感じたわけですが、まず、先生がサッカーを教えようという一番大きなモチベーション、お考えになったことは何だったんですか?
「とにかく、僕は小学校3年の時からサッカーを始めましてね、小学校の先生が遊んでくれたもんでそれが始まりでね。遊びですから、1対1的なことですわな。ちゃんとしたサッカーじゃなくてね。それがきっかけで、自分がなんとなく、サッカーに合うような気がして大好きになって始めたわけです。僕の中学、神戸三中っていって、神戸一中の次にサッカーが盛んなんですけども。割合、個人技が好きでドリブルが好きなところでね。で、関学(関西学院大学)に割合多く進学したんですよね。関学、神戸一中、三中というそういう流れですわね。まあ、僕ら、10代ですから何もわからんし、言われた通りやってただけですけどね。だけども、戦後になってだんだん、ヨーロッパのサッカーチームが時々日本遠征に来てやりだして、テレビが始まって、はっきり向こう(欧州)のサッカーとこっちが違うという感じがしだしたわけです。それからヤンマーにネルソン吉村が来た。彼はすばらしい技術を持った日系ブラジル人ですね。ブラジルで生まれ育っただけで、同じ日本人でも全くスキルが違うわけです。そんなことで、日本のサッカーというよりも、サッカー教育がおかしいなと感じたわけです」
――そうですね。同じ民族、人種ですから、身体的な特徴が言い訳にならない。違うのは日本とブラジルの教わる土壌ということですね。
「それが、日本のサッカー教育への不信感というか、出てきたわけです。我々はこんなに必死に練習して、鍛え抜いている。なのにどうして違うのか。勝ち負けでなくて、上手さとかね、サッカーの試合における常識とか。結局、ブラジルなんかは、特に指導を受けているわけでもないそのへんの兄ちゃんを捕まえても上手いと。教育をしているほうが下手で、教育されていないほうが上手やというのはおかしいやないかと。それで、自分が指導をやることにおいては、そういうことを取り入れていこうと考えたわけです」。
――なるほど、枚方FCというのは特にテクニックが高いと評判ですが、日本型の指導体系ではなく、いわゆるブラジル流の遊びのサッカーでやったほうが上手くなるんではないかという仮説から始められたわけですね。
「そういうことです。だから私がやった練習メニューはほとんどゲーム的。ゲームというといろいろな語弊がありますけど、とにかく相手がおって練習をやるという前提ですね。日本の練習というのはほんとに基礎、基本がほとんどでしょ。今はそうでもないけども。ほんとに、当時はサイドキックからインステップ、何々キックのフォームが悪いとか、そればっかり言うてたからね。そういうことじゃなしに、とにかくブラジルが上手くなるのはなぜか、我々もそこから考えようとしたわけです。実際、僕らの中学でもサッカー部に入らなくても、ただ遊んでいるだけで上手いのがおったんですよ。そういうことをよく見ていたので、これは間違いないということでそちらの方法論をどんどん取り入れたわけです」
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