サポーターから愛される選手 岡山一成 「岡山劇場」の光と影
2013年03月15日
サッカーエンタメ最前線サポーターは敵か味方か?――。3月9日(土)発売の『サッカー批評 ISSUE61』では、Jリーグ20年目の応援論として、サポーターの実態に迫っている。
知られざるサポーターの生態からサポーターネット炎上史まで、さまざまな視点で日本の応援スタイルについて特集を組んでいるが、その中には“サポーターから愛される選手たち”として、プロ選手のインタビューも盛り込まれている。
そこで今回、サッカーエンタメ最前線では、誌面で登場する岡山一成選手(※現在、未所属)のインタビュー記事を一部紹介したい。岡山選手が巻き起こしたパフォーマンスは、「岡山劇場」として認知され、多くのサポーターから愛されている。日本の応援スタイルについて、岡山選手はどう感じているのか。
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岡山劇場の光と影
クローズ後の苦悩
川崎フロンターレ、柏レイソル、ベガルタ仙台でサポーターと一体になる画を確立した稀有なプロフットボーラー、岡山一成。等々力では牛乳ケースの上に乗ってゴール裏と交流する文化にめざめ、日立台では柏に家を買えと叫ばれ、ユアスタでは「オー・シャンゼリゼ」を合唱した。サポーターと歓喜を分かちあう、楽しげな岡山劇場の光景。しかし光あるところには影がある。コンサドーレ札幌の最後には、劇場はクローズしてしまった。光が射したあとに生じた苦悩とはなんだったのか。
――ピッチにいてサポーターの力を感じることはありますか?
岡山 はい。選手の立場として、サポーターとリンクした試合は、自分たちの実力以上のパフォーマンスが出せるんですよ。サポーターが勝たせてくれた試合を経験した選手は、その力を感じる。あれを味わいたくて、おれはまだサッカーをやめないでいるんですよね。純粋な勝ち負けだけだったら、もう行きついている部分はあるんですよ。あの感覚をサッカー以外で味わえるんだったらそっちにいくけれども、選手、スタッフ、サポーターがひとつの生き物になって成し遂げたという感覚はほかにない。サポーターのおかげで勝てた試合は全部覚えてますよ。
――具体的には?
岡山 いや、それを言いだしたら、全部言わなあかんから(笑)。
――わかりました。とにかく、サポーターの力が選手を後押しするという実感を得ているのはたしかなんですよね?
岡山 ちょっと長くなりますが、それには韓国であったことを話さないといけないですね……ぼくが浦項スティーラーズに在籍していたとき、ACLでサンフレッチェ広島とホームで対戦したあと、広島の選手たちに焼肉をふるまったことがあるんですよ。そのとき槙野(智章)に「岡山劇場を見て自分もやりたいと思って始めました」と言われたんです。おれもゴンさん(中山雅史)が、「中山隊長ゴンゴール」のチャントを歌われながらジュビロのサポーターと喜びを分かちあう光景を眼にして、フロンターレで「岡山劇場」を始めた。それがサンフレッチェ劇場に受け継がれて、広島のサポーターが浦項に来てくれたことに深い感慨がありました。で、ここが重要なんです。
――どう重要なんですか?
岡山 話はだいぶん遡るんですが、高校卒業後、済州ユナイテッドFCの前身となるクラブに留学した際にお会いしたキム・ギドン選手が、その浦項にいたんですよ。2011年に39歳で引退したKリーグ最高齢得点記録を持つレジェンドなんですけど、18年ぶりに会ったのにぼくのことを憶えていてくれていて、ようサッカー選手続けてたなぁ、と言ってくれたんです。そうして、食堂で隣の選手に「おまえずれろ」と言ってぼくを真横に座らせてくれた瞬間に、ぼくはジャイアンの横にいるスネオ状態(笑)、「オカヒョン(兄)」になってしまったんです。向こうは儒教の教えで序列の意識が強いですからね。それで話が弾み、ぼくのいたクラブはみなJの強豪だから、すごい!となったんです。
その彼らがさかんに言っていたのは、Jリーグのクラブを紹介してほしい、ということなんです。プロが先行していたKリーグから見て後発だったJリーグが、歴史を重ね、既に見下す存在ではないということも大きいんですけれども、べつに目的はお金を稼ぎたいからじゃないんです。あのサポーターの声援のなかでサッカーがしたい、と彼らは言うんですよ。
――それは意外ですね。
岡山 ACLはめっちゃ燃えるんですけど、Kリーグで燃えないのは、観客がまばらだから。浦項スティーラーズは専用だから一万人入ったら雰囲気はいいですけど、ポスコ(親会社の製鉄会社。前身はポスコのサッカー部だった)の工場から社員動員で、サポーターではない。
それに対してJリーグの映像には熱狂的に応援するサポーターが映っている。「なんであんなに入るの?」と言われる。おれは彼らに「そこがファンとサポーターのちがいやで」と言うんです。ファンは行って楽しんで応援する。サポーターは支えて一緒に戦う。ファンもサポーターも応援という一文字にしたら応援や。でもサポーターはいっしょに戦う。そこがサポーターとファンの決定的なちがいなんや、と。
――サポーターの重要性にKの選手は気づいたんですね。
岡山 はい、応援されたら力になる、と。逆を考えてほしいんですけど、応援されないと不利になるんですよ。応援に対して選手が聞く耳持たないんだとしたら、その選手が悪いよ。それに、たしかにサポーターが100人くらいしかいなかったら物理的に届かないかもしれないし、選手がいいサッカーをしてくれないとサポーターが増えないというのはそのとおり。でもサポーターの声は絶対届く。サポーターが自分たちの声は届いていないというのは、それは言い訳。究極的には人数を増やせば必ず届くんだから、届くことを信じて応援するべきなんですよ。特にアウェイではね。
※『サッカー批評 ISSUE61』P034-037より一部抜粋(文●後藤勝)
この続きは『サッカー批評 ISSUE61』(3月9日発売)にて掲載。インタビューでは、その後J1昇格、J2降格を味わった現在の心情に迫っている。
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