メキシコ発ドリブル指導法 ストリートサッカーからの進化を図る徹底した基礎トレーニング

2013年06月22日

サッカー練習メニュー

ドリブルを得意とする選手の発掘、育成にも余念がない


 図2は相手を抜くドリブルを対象としたトレーニングです。ひし形の2つの辺のうちどちらに抜いてもいいという設定によって、オフェンス(OF)にDFをだますことを促します。また、DFはひし形の中しか動けないというルールによりOFがフェイントのタイミングを計りやすくしています。「一度抜けてしまえばDFが追ってこられないから」とシュートまで時間をかけていると、コーチがものすごい勢いでボールを奪いに行く、もしくはこっそりと2人目のDFを送り込むこともあります(笑)。

 では、実際にクラブレベルでどのようにドリブルという技術を捉えて指導にあたっているのかをお話します。

 僕が所属しているクルス・アスルというクラブでは、トップチームからU-12まですべてのカテゴリーにおいて、パスサッカーのスタイルを大切にしています。

 パスがドリブルよりも優れているというわけではありません。クルス・アスルでは、ドリブルは「パスコースがないときにボールを失わないための手段」「中盤での組み立ての段階、もしくは相手ゴール前にて相手の意表を突く手段」として考えられています。もちろん「パスより早くボールを運べる選手はいない」という考えが根底にはあるのですが、いつ・どこでドリブルをするかの状況判断をできる選手が、大切となります。そのためにもパスサッカーの中でアクセントとなる選手、すなわちドリブルを得意とする選手の発掘、育成にも余念がありません。

 ここでいうドリブラーとは、高いコーディネーション能力が基盤にあり、なおかつボール扱いや身体的スピードにも優れた選手です。クラブは、そのような能力を持った選手の発掘に力を入れています。そして、その原石を見つけた後は才能を磨くために、選手が自ら積極的にチャレンジできる環境をコーチが整え、忍耐強く見守ることが、必要とされています。しかし、それは手を加えないということではありません。選手たちは、ピッチを分割した3つの各ゾーン(ディフェンディングサード・ミドルサード・アタッキングサード)における目的を意識することや、置かれている状況での周りとの関係によるパスとドリブルの使い分けの指導を受けます。その前提には、「パスより早くボールを運べる選手はいない」「ドリブルは相手の意表を突く1つの手段」というクラブの指導指針も含まれます。

 このように、クルス・アスルのドリブルという技術の捉え方をピッチの中で実践できるようになるためには、次のチェックポイントが指導する際に大切となります。①走る姿勢のイメージでドリブルを行えているかどうか。②顔を上げてドリブルをしているかどうか。③周囲の状況がしっかりと見えているかどうか。④ボールをコントロールする際の足の部位の正しい使い分けができているかどうか。⑤リズム感を持ってドリブルができているかどうか。

 ここでいうボールコントロールする際の足の部位の正しい使い分けとは、先にも述べたような、ボールを運ぶ際にはアウトサイドで、方向転換はインサイド、意外性のある方向転換またはボールを相手から守らないといけないときには足の裏で、といった3つの部位を基本として、この基本的な使い分けをU‐12年代にドリル練習で徹底的に練習します。これらの使い分けはあくまで理論に沿った1つの指針であり、実際にDFがいる設定のトレーニングやゲーム形式のトレーニングの中でドリブルを用いたときに、その基本通りのボールタッチを行わなくても目的(DFをかわしてシュート、パスコースがない状況にて味方がパスコースを作るまでの間ボールを失わないなど)を達成すればコーチはポジティブなフィードバックを行います。しかし基本通りに行わずに失敗した場合には「なぜ足の裏でキープしないんだ!!」といった具合に修正されます。目的が達成されればその手段は問われませんが、達成できなかった場合には達成しやすい方法として基本の重要性を説きます。

 そして、“リズム感”とは、走っているときの歩数とボールを触る回数との兼ね合いのことを意味します。2歩に1回のボールタッチを基本リズムとし、先ほどの3つのタッチ(アウトサイド、インサイド、足裏)でのドリブル練習を両足で行います。ただし、あくまでも基本のリズムをベースに習得させていきながらも、状況に応じて3歩に1回や4歩に1回といったリズムに変化をつけていく応用性も同時に兼ね備えていくことが求められます。

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