自律神経のバランスを整えてパフォーマンスアップ!【後編】
2013年12月08日
コラム自律神経は連鎖する。叱るときは1対1で
――どの世代、どのスポーツでも感じることですが、チームメイトがミスしたところを見ると、連鎖的にミスが続くケースがあるように思います。
小林 それは、自律神経が連鎖するからです。自律神経のバランスが悪い選手を見ると、自分にまで影響が及びやすい。その逆もあり、バランスがいい選手を見ると、バランスがよくなっていくのです。
――何だか、不思議なものですね。
小林 たとえば、電車に乗っているときに若い人が高齢者に席を譲っている姿を見ると、気持ちが安らいだりしますよね。スポーツでも、ひとついいプレーが生まれると、どんどんつながっていきます。よく「奇跡の大逆転」という言葉がありますが、自律神経から見れば奇跡でも何でもない。大逆転につながるファインプレーが必ず起こっているのです。
――練習や試合の中で、怒られている仲間を見ると、自分まで怒られているようになり気持ちが落ちていくこともあると思います。それも、自律神経の連鎖につながる話なのでしょうか。
小林 そのとおりです。怒られているのを見ると、周りの雰囲気が悪くなる。逆に褒めているのを見ると、雰囲気がよくなる。これは副交感神経が上がっていくからです。
――「褒めて育てる」とよく聞きますが、こういった効果もあるのですね。
小林 もちろん、悪いことに関しては怒ることも大事ですよ。でも、たいていの指導者は、感情をあらわにして交感神経で怒っている。これは怒っている子どもに対してもいい影響がないうえに、怒っている指導者自身の交感神経も上がり血流が悪くなります。いいことは何ひとつありません。
――なるほど、怒っている指導者の側にも悪影響があるとは考えていませんでした。
小林 日本人は集団の前で「見せしめ」として怒ることが多いですが、周りの雰囲気が悪くなるのでやめたほうがいいでしょう。褒めるときはみんなの前で褒めて、何か厳しいことを伝えるときは1対1にする。私はイギリスに留学したことがありますが、怒られるときは必ず別室に呼ばれて1対1でした。
――1対1のほうが、指導者の思いが伝わってきそうですね。
小林 そう思いますね。私が思うのは、怒るのではなく叱る。愛情をかけて、時間をかけて、諭すように叱る。そうすれば、副交感神経が上がっていくのです。私は中学時代、野球をしていましたが、とても厳しい指導者でした。でも、叱り方がうまかった。「お前ならできるだろう! 何でできないんだ!」とよく言われました。
――「お前ならできるだろう!」と言われると嬉しいですね。
小林 「お前ならできるだろう!」が「おれに期待してくれているんだな」と思うんですね。子どもにとって、ものすごく意味のある言葉ですね。だから、叱られているのに頑張ろうと思えた。こういった叱り方ができるようになると、子どものやる気を引き出すことができるのではないでしょうか。ぜひ、この記事を機会に、自律神経のバランスを整えることがどれだけ大事かを知っておいていただけると嬉しいです。
プロフィール
小林弘幸
順天堂大学医学部教授 日本体育協会スポーツドクター
1960年、埼玉県生まれ。1987年、順天堂大学医学部卒業。06年より現職。近年では交感神経と副交感神経について研究している。『なぜ、「これ」は健康にいいのか』(サンマーク出版)『「これ」だけ意識すればきれいになる』(幻冬舎)など著書多数。
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