ジュニア年代では、数的優位のゲームを取り入れよう【後編】

2014年01月23日

コラム

ポジションの適性を見つけるのはゆっくりと

 私が今まで30数年見てきた子どもたちを振り返ると、作り上げられてきた選手が多いように感じます。「ここをやりなさい」と言われるがままに。例えば、中学に上がってきたとき、「僕はサイドバック」と言うのですが、相手とガツガツやりあっている姿を見るとサイドバックの選手じゃないよね、ということが多い。「そこじゃない方がいいんじゃない?」ということが多々ありました。

 したがって、ジュニアではあまりポジションを決めつけない方がいい。本当にその子に合ったポジションを見つけられるのは、おそらく中学2年生の後半からか、中学3年生だと思います。ゼムノビッチさん(千葉県サッカー協会テクニカルアドバイザー、元清水エスパルス監督)は、「中3ぐらいから(その子に合ったポジションの)スペシャル・トレーニングをすべきだ」と言います。日本にはこういった発想がなさすぎるそうです。

 例えば、シュート練習を行う場合、全員がシュート練習をしませんか? ゼムノビッチさんは、「池上さん、センターバックにシュート練習が必要ですか?」とよく言います。私は「なるほど。だったら違う練習をした方がいいね」と話しました。

 日本の指導者は子どもたちの特徴を見つけるのはうまいのですが、残念ながら「特長」ではないようです。どうも、よいところではなく、欠点やネガティブな部分に目がいきがちです。「この子は走れないからGKにしよう」といった消去法の考え方。これは教育観の差だと思います。欧州ではまず長所を伸ばそうとします。よいところを伸ばすことで、実は少しずつその子の短所をカバーできるようになるのですが、日本は正反対でスタートすることが多いですね。

 俊足の子がいたとしましょう。すごく足は速いけれど、足元の技術がない。その場合日本だと、センターフォワードやアウトサイドのワイドアタッカーに起用し「ボールがきたらシュートしなさい」と言うだけ。まあ、ここしかないかという、消極的な扱いをしている気がします。

 一方、欧州では唯一の俊足という長所を大事に、それを活かせるように技術をアップさせる指導をします。「そこしか使えないから」という見方ではなく、「君は足が速いから、こんなプレーを覚えると、もっといい選手になるよ」という指導の仕方です。「足が速いからこそ、最初のボールタッチはこう、ポジショニングはこんなふうにしてごらん」「もっと完全に裏をとれるよ」「ここでちょっとコントロールさえうまくなれば、もっといろんなことができるね。どう?」と声をかけたりします。長所を活かすためのコーチの引き出しが多彩なのです。

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