サッカー選手は両目を理想的に使いこなすことが重要!? ドイツ代表も実践する“ライフキネティック理論”の具体的な手法とは?
2014年07月18日
コラム視野を鍛え、同時に体で表現できるのが大切なこと
少し前回のおさらいです。ライフキネティック理論では、複数のコーディネーション運動と認知・視覚能力が問われる課題を、同時、あるいは順番に行うとご説明しました。その中でこんなトレーニングも行いました。
7~8人で、2つのグループに分かれて円状になります。まず、青色の柔らかいボールを手を使ってパスしていきます。その際、誰からパスをもらい、誰にパスをするのかを覚えておき、その順番通りにボールを回していきます。ここまでは簡単です。
次に、赤色のボールで同じことをします。ただし、違った順番で! さらに、同じことを黄色のボールでもやるのです。この時、人の円状には3色のボールが回っていく3つの順番が完成したことになります。その順番の記憶を思いだしながら、まずは2つのボールを同時に使ってパスを回します。これが難しい。
「えーっと、赤の時はクレアからパスをもらって、リカルドにパス。青の時は、ソーニャから、あれ、ソーニャってどこ?」と、私がちょっと混乱していると、「キチ! はい、パス!!」と、全く逆の方向からボールが飛んできます。これに反応しきれなくて頭にボールが当たると、みんなで大笑い。再度、順番を確認して「次こそは!」と、みんなで気合いを入れてトライするのですが、飛んでくるボールを取って、パスすることを意識した瞬間、順番を覚えている脳の回路がショートするというか、頭の中が真っ白になるというか、とにかくみんなの動きが一斉に止まってしまうのです。
私のグループはすでに2つのボールが限界。うまくいかなくて、みんなで顔を見合わせて笑い合ってしまいました。隣のグループは結構うまくできていましたが、3つのボールで失敗。さすがに、そこが限界のようでした。
ルッツによると「例えば、ボールの大きさを代えるとか、1つのボールは足でパスするとか、赤のボールは両手で取らないといけないとか、条件を変えるだけで際限なく難易度を上げることができます」とのこと。これだけ難しいことにチャレンジしたのだから、相当の刺激が脳に与えられたはず(笑)。でも、さすがに1回やっただけでどうこうなるものではないようです。
ルッツは、ライフキネティック理論のトレーニングについてこう伝えていました。
「ライフキネティック理論のトレーニングは、長い時間やればやるほどいいものではありません。1週間に1回60分間、もしくは、週に2~3回15~20分間のトレーニングを推奨します。効果が出るまでは、6~8週間はかかりますが、これまで集めたデータだと、上記の条件でトレーニングをした大人の97%、子どもの91%がパフォーマンスアップをしたという結果が出ています」
ドイツ代表やドルトムントも随分前から取り組んでいます。それだけに長期的なプランが必要だということですね。朝10時から夕方18時まで、食事休憩以外は理論と実践でびっちりのスケジュールでしたが、とても興味深く、楽しいセミナーでした。また機会があれば、ジュニサカさんで詳しく紹介したいと思います。
プロフィール
中野 吉之伴
(なかの・きちのすけ)
1977年、秋田県生まれ。武蔵大学卒業後、育成年代におけるサッカー指導者のエキスパートになるためにドイツへ渡る。地域に密着したアマチュアクラブで経験を積みながら2009年7月にドイツサッカー協会公認A級コーチライセンス(UEFA Aレベル)を所得。SCフライブルクでの研修を終え、フライブルガーFCでU-16・18 監督を兼任。2014年よりU-19の3部に所属するFCアウゲンのヘッドコーチに就任。スポーツ新聞社の通信員としてドイツを中心に欧州サッカーを取材する傍ら、多数の媒体で執筆も行う。
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