「プレーヤーズ・ファースト」を実践するための大人の心得
2014年08月30日
コラム小さなヒントを重ねることで急激に成長する子どもたち
四つ目は、あまり自分で考えてプレーしていない子や自分のプレーに満足している子に「ヒント」を与えることです。足元の技術が高かったり、ドリブルが速くて自分で次々とシュートを決めてしまう子には、周りを見ることの重要性を伝えます。例えば、プレーをストップさせてから、「顔を上げてごらんよ。ゴール前に誰かいない?」と質問します。もしくは、ドリブルをしている最中でも「次のプレーは見えているのかな?」などと声がけします。
そのような小さなヒントを重ねていくと、子どもたちはわずか1時間半の練習で驚くほどプレーが変わります。私の練習はマッチ(試合)→トレーニング(練習)→マッチと流れていくのですが、最初の試合でそれぞれがドリブルばかりしていた子どもたちが最後の試合はパスをつなぎ始めます。それを「プレーの質が変わった」と表現します。
最後の五つ目は、楽しくサッカーをすること。本当に楽しいと、子どもでも大人でも集中します。その状態をスポーツ心理学では「ゾーン」、もしくは「フロー状態」などと呼びます。ゾーンに入ったときこそ一番技能が伸びる状態なのです。
集中を促すため、対人や勝ち負けのあるメニューを与えますが、勝敗や出来不出来によって罰やペナルティを与えたりはしません。プレミアムスクールでは2人組でパス交換しながら競争をしました。「よーい、ドン!」「よし、行け!」とどんどん行きます。
何度かやってから「じゃあ、最後(ビリ)の人はどうする?」と質問しました。「罰ゲーム!」という声が上がりましたが、「池上コーチのところには罰ゲームとか、ないよ。遅いからって悪いことじゃないからね」と話しました。
子どもの成長速度は、それぞれ。遅い速いはあります。でも、みんなが楽しく、一生懸命やるのが大事。そのような価値観を子どもたちと共有できる人は、すでに「プレーヤーズ・ファースト」の実践者のはずです。
プロフィール
池上 正
(いけがみ ただし)
1956 年大阪府生まれ。2012 年2 月より京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクター。著書に11年12 月現在で14 刷と版を重ねるベストセラー『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11 の魔法』『サッカーで子どもがみるみる変わる7つのビジョン目標』(ともに小学館)。DVDブック『サッカーで子ども力をひきだすオトナのおきて10』(監修=カンゼン)。近著に『叱らず、問いかける??子どもをぐんぐん伸ばす対話力』(廣済堂出版)がある。大阪では子育て支援センターでアドバイザーを務めたこともある。
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