スペインの育成年代でも目につく「プレーをしない」スタイルの弊害とは
2015年10月28日
コラム育成年代で目につく「プレーをしない」サッカースタイル
ラシンユースを指導していたころの私は、正しいトレーニングのやり方を理解していませんでしたが、サッカーのことはよく知っていて、選手を正当に評価できました。私が指導していた選手はいつも「正真正銘のサッカー」をプレーしていました。私を指導したユースやトップの監督たちは、私に意見を求めて来ました。後にラシンで3つのユースチームの監督になりましたがアシスタントコーチはいませんでした。その後、ジムナスティック・トレラベガの選手になりましたが、2 つのクラブの同意のもと、ラシンのユースチームの指導は続けました。
私はこの経験のおかげで実体験と知識が一致し始めました。当時の選手育成の現場をよく観ると、監督やクラブ関係者は、早熟で、背が高くて、屈強な選手だけを探していました。この選手たちは試合には勝ちましたが、フィジカルだけに頼って勝利を得ていただけで、技術、賢さを無視し、プレーの質を忘れてしまいました。後に彼らと同じくらいのフィジカルを持っていて、プレーの知識を持った選手が出てくると、フィジカルのみが優れていた選手は挫折し、サッカーを辞めてしまうこともありました。
育成年代のサッカーの話に戻りましょう。最も目につくのは、強さ、戦いを重視した、「プレーをしない」サッカースタイルです。スペイン代表とFC バルセロナのおかげで、「正真正銘のサッカー」を行うチームは増えていますが、その数はまだ少ないものです。多くのチームは、ボールを大きく蹴りだす、「ダイレクトサッカー」を行っています。
育成年代における指導、選手たちの学習に関する大きな問題について説明します。多くの監督は、試合に勝つことだけを目的として、選手たちに指導してしまいます。その指導例は次のようなものです。
●背の高い選手、早熟の選手を起用し、ヘディングでプレーさせる。
●屈強な選手で、ゴールからの距離を考慮することなくどこからでも強いシュートを打たせます。大きなゴールを守る小さなゴールキーパーがいる状況では、簡単にゴールが決まるでしょう。
●スピードと持久力があり、個人プレーで突破させる。
●強くて、勇敢で、相手のプレーをフィジカルコンタクトで潰させる。
これらの資質に頼る指導をすることで、他の手段について習得できる可能性を消し去ります。結果として、選手たちが成長し、高いレベルの対戦相手と対峙すれば、単調なプレーで相手の守備を破ることはできないでしょう。攻撃的なメソッドを利用したトレーニングを通して、選手たちが学んでいれば、こういった状況を招かずに済むに違いありません。
<関連リンク>
・バルセロナが実践するジュニア年代の戦術指導方法とは?
・14歳までのバルサ育成哲学。さまざまなポジション経験が将来のサッカー人生につながる
プロフィール
著者:
ラウレアーノ・ルイス
1972 年にバルセロナのユース監督、1974 年にバルセロナのカンテラ(下部組織)を統括するコーディネーターに就任し、独創性あふれる練習法によってクライフに先んじてバルセロナのコンセプトを作り上げた“バルサメソッドの創始者”。これまで、約3 万人の選手を指導し、そのうち約1000 人のプロサッカー選手、うち約50 人の代表選手を輩出してきた。バルセロナの代名詞とも言える“ロンド”の発明者としても知られる。
訳者:
高司 裕也
(たかじ ゆうや)
1982年大分県生まれ。2004年に東京学芸大学教育学部卒業。自身も大学卒業時代までサッカーに打ち込む。2008年にスペイン、バルセロナに渡り、カタルーニャ州サッカー指導者ライセンスレベル2を取得。その後、2011年6月に株式会社BalonQ Sport & Formationを設立し、日本とスペインの架け橋として、シャビ・キャンプ、国内サッカーキャンプ、指導者クリニックの事業を手掛ける。現在は、四国リーグFC今治のオプティマイゼーション事業本部長としてチームの強化に携わる。
⇒世界最高峰のチームを作り上げた育成法を伝授! FCバルセロナの、トレーニング法、サッカー哲学をすべて公開! なぜ一流選手を育成できるのか? どんなトレーニングをしているのか? FCバルセロナの強さの秘密が一冊の本に!
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出版社:株式会社カンゼン
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