「指導者を誰もがあこがれる職業に」 中国でサッカースクールを経営する日本人の夢
2016年02月05日
コラム中国・上海のスクールを国内最大規模に育てあげ、中国でサッカーの普及活動に励む日本人たちがいる。千葉将智と野口大輔の二人だ。日々環境が変貌していく激動の中国で彼らが見ているものとは何か。そして、中国サッカーに見る彼らの夢とは。『アジアフットボール批評 special issue02』から一部抜粋して紹介する。
(文●張寿山 写真●Getty Images)
『アジアフットボール批評 special issue02』より一部抜粋
近代スポーツを受け入れたアジアの異なる歩み
アジアのサッカーがようやく日本でも注目されつつあるなかで、以前からアジアでのサッカーの普及や強化に携わってきた多くの日本人がいることも、少しずつ紹介されるようになってきた。本誌1号で紹介されたプレーヤーやコーチ、投資者に加え、草の根レベルで現地に定着し、サッカーという文化の普及に取り組んでいる人々がいる。
このレポートでは中国・上海で十年以上も前にサッカースクールを立ち上げ、普及活動に取り組み、現在の上海で双璧といわれるサッカースクールを経営している2人の日本人を紹介する。彼らの活動と取り組みを知ることで、アジアという必ずしもスポーツ文化が根付いてはいない社会において、普及に取り組むことの難しさや意味が見えてくる。同時に、今後新たな人々がアジアのサッカーに携わろうとするときに、何が求められるのかを示唆している。これは同じ時期にヨーロッパからスポーツを受け入れ、それぞれの方法で咀嚼してきた、アジアスポーツ発展史の多様性を知ることでもある。近代スポーツを受け入れた側のアジアの一員として、日本のスポーツ文化の現在位置を知ることが、アジアで普及に携わることの意味も教えてくれるのではないかと思う。
中国のなかで上海は最もライフスタイルの西欧化が進み、豊かな人々があふれている都市である。だが、アメリカ人がニューヨークをアメリカ社会の典型・理想とは思っていないように、中国人も上海という街を、中国社会の典型でも理想とも思っていない。この、人口2400万のメガシティは、グローバリゼーションの最前線で進化し続けている。「政治的主張」を除けば、世界で最も自由で何でもありの場所であり、同時に優れた社会インフラを持ち、多様な人材、多様な市場が存在し、そして多様な階層の人々が暮らしている。
とはいっても、そこでは当然中国社会の持つ特徴や矛盾が顔を見せる。そのなかのひとつが子どもの教育である。人民の平等を求め、共産主義革命を経て成立した中華人民共和国も、今では格差の拡大が社会問題となっている。この格差を乗り越える術として、学歴は最も有効な方法であり、今の中国は世界でも指折りの学歴偏重社会になっている。これは、清朝まで千四百年間続いた「科挙」という学力だけで人材育成・選別を行うという伝統への先祖返りと言っても良いかもしれない。中国で成功するエリートは、一流大学に合格することが必要絶対条件であり、親にとって子どもに学力以外の能力を身に着けさせることの意義はないに等しい。このような大前提がある社会で、スポーツが人々の人生にとって、とても大切で価値のあることだ、といった考え方はまだほとんど認知されていない。中国の人々にとってスポーツは、ごく一部の「スポーツエリート」が競技として行うものか、それを見て賭けをするなどして楽しむ対象のどちらかでしかない。
小学生の早い段階で「スポーツエリート」候補となった子は体育専門学校に送られ、そこでアスリートとしての人生を歩み始める。それ以外の子の親にとって、サッカー、バスケ、陸上といったスポーツスクールに子を行かせるのは、英語や音楽や絵画といったお稽古ごとと同じである。つまり、スポーツで子どもの健康を維持することは、学業で良い成績を得るのに役に立つかもしれない、という程度の位置づけでしかない。サッカースクールに子どもを通わせる親に、子どもの将来にメッシを夢見たり、スポーツを通じて豊かな人生を送って欲しいといったりする意識は皆無といってよいだろう。もちろん、健康のためのスポーツという意識は広がりつつあるが、それはどちらかというと「健康長寿」であり、豊かな人生とは必ずしも同じ意味ではない。

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