ビギナーのサッカー指導者必見! 攻撃時の「オフ・ザ・ボール」の質を高める指導法とは?

2016年07月15日

戦術/スキル

伸び盛りのジュニア年代の子どもたちにとって、「とめる・蹴る・運ぶ」といったボールを扱うテクニックを覚えることは大切ですが、ボールに触れていない「オフ・ザ・ボール」の動きをより質の高いものにできれば、有利な状態でボールを扱うことができることでしょう。しかし「オフ・ザ・ボール」の動きを指導するには、ボールテクニックを習得するようにドリルなどの明確な練習方法はありません。特に指導経験の浅い初級のコーチにとっては悩むところではないでしょうか。そこで、元Jリーガーで、現在はP.S.T.C.ロンドリーナでU-12の指導にあたっている富永英明さんにお話を伺いヒントをもらいました。

文・写真●山本浩之


使用写真

ボールを受ける前に次のプレーを考えることで「オン・ザ・ボール」の質を上げる!

 富永英明さんは、1999年に名古屋グランパスエイトでJリーグデビューしてから、2010年に当時JFLだったブラウブリッツ秋田(現在J3)で引退するまでの12年間の現役生活で、通算197試合に出場し11得点を記録。現在は、神奈川県足柄上郡を拠点とするP.S.T.C.ロンドリーナで小学生の指導にあたっています。

「サッカーでは、ボールを持っていないとき(オフ・ザ・ボール)に、いかに次に起こりうることを予測することができて、準備をしておくことができるのかということが重要です。子どもたちのプレーを見ていると、試合のなかでボールを失う回数の多い選手にはボールを持ってから次の動きを考えるという共通点があります。何か事が起きてから動き出す選手です。したがって、子どもたちに指導するときには、自分がボールをもらえるポジションにいたから、ただなんとなくパスをもらうのではなく、『ボールを受けたら次にどうするのか?』というところまで考えたうえでポジションを取るように伝えています」

 このように『オフ・ザ・ボールのときは次のプレーを考えてポジションをとることが重要』だと言う富永さんに指導するときのポイントを教えてもらいました。現役時代に、フォワードやボランチ、そしてディフェンダーまで幅広いポジションを経験している富永さんは、「それではポジション別(フォワードとディフェンス)に考えてみましょう」とノートに図を描きながら説明してくれました。

顔を出す=パスコースをつくる!

「フォワードの選手は、ワントップの場合を例にすると、前線の起点になるのはひとつだけになりますので、つねに顔を出すことが要求されます。顔を出すとはパスコースをつくるのと同じ意味です」

 図(1-1)を見てみましょう。
図1-1

ボールを持っている(A)からは、相手(a)が間にいるため、味方(B)の顔が見えない。このままで(B)にパスを出しても成功する確率は低い

 ボールを持っている(A)からは、相手(a)が間にいるため、味方(B)の顔が見えません。このままでパスを出しても成功する確率は少ないでしょう。つまりパスコースがない状態なのです。そこで、図(1-2)のように、(B)がエリア①に動くことによって、(A)は(B)の顔が見えるようになりパスが出しやすくなります。これが顔を出すということです。

図1-2

(B)がエリア①に動くことによって、(A)は(B)の顔が見えるようになりパスを出しやすくなる。これが“顔”を出す動き

「このときに指導者が注意して見ておきたいポイントは、選手がパスを受けにいってしまわないかということです。(B)がエリア②までボールを迎えにいってしまうと、相手に近い位置でパスを受けることになり、トラップやターンの瞬間を(a)や(b)に狙われてボールを奪われるリスクが増えてしまうからです」

 顔を出すことはできても、相手の近く(図(1-3)のエリア②)までボールを迎えにいってしまうのは周囲が見えていない選手によく起きる現象なのだと富永さんは話します。ボールを受けることに必死になってしまうと、結局、受けたときには相手に寄せられてしまい、前を向くことができずボールを失ってしまうのだと言います。一方、エリア①でパスを受けることができれば、相手とは距離があるので、(B)は落ち着いてトラップやターンをすることができるのです。

図1-3

(B)がエリア②までボールを迎えにいってしまうと、相手に近い位置でパスを受けることになり、トラップやターンの瞬間を(a)や(b)に狙われてボールを奪われるリスクが増えてしまう

ボールを受けるためのアイデアをたくさん持つ!

 ただ、子ども(B)によっては、図(1-4)のように(A)から(C)にパスを出してもらい、自分は(C)からボールを受けることだけをイメージして(A)には顔を出さないで待っていることもあるでしょう。

図1-4

(B)は、(A)から(C)にパスを出してもらい、自分は(C)からボールを受けることをイメージしているが、このときにエリア①に顔を出すこともイメージできていればパスの選択肢は2つに増える

「これは決して悪いことではありませんが、このときにエリア①に動くことで(A)から直接パスを受けることができるというイメージも持っているかが重要です。オフ・ザ・ボールのときには、ボールを受けるための選択肢をたくさん用意しておく必要があるからです。

 かたくなに(C)からのパスだけを待っているのでは、(A)から(C)へのパスコースを塞がれてしまえば『僕はもうパスをもらうことができません』とあきらめるしかなくなり、チャンスは減ってしまいます。そうではなくて『あれがダメなら、これもある!』というように(A)から直接パスをもらうポジションというのも自分のなかで準備しておくことが大切になってきます。

 ボールがサイドにあるときも同じです。『クロスボールをダイレクトで合わせることのできるポジションはどこなの?』か『味方選手がボールを落とすところはどこなのか?』、あるいは『味方が空けたスペースに入り込むことはできるか?』などとボールを受けるためのアイデアを3パターンくらい用意できているかということです」

ファーストコントロールは、いつでもシュートが打てるところにボールを置くイメージで!

 こうしたことからオフ・ザ・ボールの動きを整理してみると、フォワードの選手であれば、『顔を出してパスコースをつくれているか?』と『次のプレーの選択肢として、パスの受け口をたくさん用意しているか?』がポイントになってくるようです。

 さらに、ゲーム形式の練習や試合でオフ・ザ・ボールからオン・ザ・ボールに切り替わるとき、フォワードの選手が『自分がシュートを打ちやすいところをつねにイメージしてボールを置けているか?』をチェックしていると富永さんは言います。

「子どもたちのなかには、オフ・ザ・ボールの動きをよくして、せっかく相手のプレッシャーのないフリーな状態でボールを受けることができるのに、ボールをなんとなく足元に止めてしまう選手がいます。ボールを一度止めてから蹴りやすいところに置きなおしているようでは、相手選手にすぐ寄せられてしまいます。

 だから、子どもたちには、シュートのイメージを持つように『すぐにシュートが打てるようなファーストコントロールをしよう!』とアドバイスをします。足元にボールがすっぽりはまってしまうとシュートは打てませんので、自分がシュートを打ちやすいところにファーストコントロールで置けるように心がけさせましょう。

 この『シュートを打つためのファーストコントロール』ができるようになれば、シュートを打つフリをして、相手が飛び込んできたらドリブルに切り替えたり、相手がこなければそのままシュートを打ったり、プレーのバリエーションも増えることでしょう」

 次回は、ディフェンスの選手のオフ・ザ・ボールの動きについて、富永さんに解説してもらいます。


プロフィール

富永 英明(とみなが ひであき)
1976年8月27日生まれ。福井県鯖江市出身。国士舘大学時代には関東大学リーグで得点王に輝く。1999年に名古屋グランパスエイト入団。プロ12年間で通算197試合に出場し11得点を記録した。長身をいかして、フォワードから中盤、そしてディフェンスまでをこなすユーティリティープレーヤーとして活躍。現役最後のシーズンは、ブラウブリッツ秋田で選手兼任としてコーチも務めた。2010年に引退。日本サッカー協会公認サッカーB級コーチ。第1種高等学校教員免許を取得。現在はP.S.T.C.ロンドリーナ(神奈川県足柄上郡)で小学生の指導にあたっている。
■経歴
北陸高校 - 国士舘大学 - 名古屋グランパスエイト - サガン鳥栖(レンタル移籍)-湘南ベルマーレ(レンタル移籍)-名古屋グランパスエイト - ヴァンフォーレ甲府 - 横浜FC - TDK(ブラウブリッツ秋田)

P.S.T.C.LONDRINA(P.S.T.C.ロンドリーナ)
2000年にフットサルクラブとして神奈川県足柄上郡に設立。2003年には第8回全日本フットサル選手権で日本一に輝く。トップチームはFリーグの湘南ベルマーレフットサルクラブとして活動。Fリーグ出場最年少記録(15歳9か月14日)を持つフットサル日本代表の植松晃都選手を輩出している。ジュニア年代は、フットサルスクールの選抜チームとしてサッカーの活動もしている。


カテゴリ別新着記事

お知らせ



school_01 都道府県別サッカースクール一覧
体験入学でスクールを選ぼう!

おすすめ記事


Twitter Facebook

チームリンク