“強者を倒すための戦術”の磨き方。新型ハイプレスの最先端
2016年11月08日
コラムなぜ戦力的に不利なチームが逆転現象を起こせるのか
矛型の最上位チームであるバルセロナに対して、戦力で劣る同じ型のチームが勝利しているのは意外だが、籠城戦よりも実は効果的なのだ。
バルセロナのサッカーは70パーセント近いボールポゼッションがベースになっている。対戦相手はほとんどボールを奪うことができない。だから引いてスペースを狭めて守るのだが、そうすると今度は攻撃ができなくなる。バルセロナはポゼッションして押し込んでいるので高い位置からのプレッシングが効く。陣形はすでにコンパクトになっていて、素早くプレスすれば相手から高い位置でボールを奪回できる。
あるいは苦し紛れのロングボールを蹴らせて回収する。どのみちバルセロナの攻勢が続き、やがて耐えきれなくなって失点してしまう。
ポゼッションとハイプレスの循環を断ちきらないかぎり、バルセロナを圧倒して勝つようなゲームは不可能である。それには、引いて構えるよりもハイプレスでバルサのビルドアップを破壊してしまうほうがいい。リーガ・エスパニョーラでは、すでに定説となっている考え方である。ところが、ハイプレスを外されてしまうと、今度は戦列が伸びてしまっているのでまともに攻撃されるリスクが跳ね上がる。バルサ相手にハイプレスが通用するのは、せいぜい15.20分程度なのでどのみち引かざるを得ない。
セルタやセビージャが違うのは、ハイプレスの機能している時間がずっと長いところにある。同時に、自分たちもバルサのハイプレスを外せるパスワークを示せなければならないが、ビエルサ派のチームはその点もぬかりがないのだ。
本流バルサと傍流ビエルサ派の最大の違いは戦力差である。ただ、例外的なアタッカーを抱えるがゆえにバルサやレアルには、ハイプレスを貫徹しにくい悩みもある。その点では、メッシやロナウドのいないビエルサ派にはハイプレスを貫徹できる強みがあるともいえる。打ち合いになれば決定力の差が出やすいものの、ハイプレスで抑え込んでしまえばメッシやロナウドにはパスが供給されなくなるので互角以上の勝負にも持ち込める。同種のサッカーをしているのに、それで戦力的に不利なほうが勝ってしまう逆転現象が起こりうるわけだ。
オシムはビエルサ派ではないが、Jリーグにこのスタイルを持ち込んだ。「リスクを冒せ」が口癖だったが、オシム監督の本領は冒したリスクを極力コントロールする術を選手たちに植え付けたことだ。いっけん無謀な戦法なのだが、意外にリスクはコントロールされている。ゲームの性質を変えることで戦力差を反故にし、自分たちの土俵に引きずり込んでいた。
(続きは『フットボール批評issue14』でお楽しみください。)
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【発行】株式会社カンゼン
B5判/128ページ
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