怒鳴ることをやめたい。でもやめられない…。そんな人は知っておきたい“スポーツオノマトペ”とは
2017年06月23日
コラム怒鳴ることはよくないと思っていても、つい怒鳴りすぎてしまい子どものやる気を削いでしまった…。そのような経験をしたことがある保護者や指導者は多いのではないでしょうか。今回紹介したいのは「スポーツオノマトペ」。オノマトペとは、フランス語で、擬音語、擬態語のことで、これらを一流のスポーツ選手が活用し、絶大な効果を上げているといいます。スポーツオノマトペ研究の第一人者である藤野良孝先生の話から「スポーツオノマトペ」が生む効果を紹介します。
文●戸塚美奈 イラスト●舌霧スズメ 写真●Getty Images、ジュニサカ編集部
※『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.26秋号』P131-135より転載
※この記事は2013年9月18日に掲載した記事を再編集したものです。

いろいろな効果が生まれる「スポーツオノマトペ」
――「スポーツオノマトペ」とは、あまり聞きなれない言葉ですが、一体、どういうものか教えていただけますか?
簡潔には、スポーツや体育の運動場面で使われる、擬音語・擬態語のことです。特に、スポーツオノマトペは、身体や運動機能の促進・制御に働きかける作用があります。スポーツマンガの描き文字にある、「シュッ」、「ダーッ」などを思い浮かべていただけるといいですよ。「言葉」というより「音」に近いです。
――そのスポーツオノマトペですが、実際、効果にはどういうものがありますか?
まず、コーチングのテクニカルな部分を教える方法として有効活用されています。コーチが適切なオノマトペを使ってスポーツの動きを表現することで、伝達する意味の含有率を高めることができます。
1を言って10のことを伝える効果があるんです。たとえば、野球の長嶋茂雄さんはスポーツオノマトペの達人です。「ビューッと来たら、バシンと打て」というようなアドバイス、文字にしてしまうと稚拙なイメージがありますが、「ビューッ」、「バシン」の音に長嶋さんは絶妙な抑揚をつけていて、さらに音に身振り手振りを連動させることで、選手に精緻な動きを伝えているのです。
また、選手自らがオノマトペを発することで、運動パフォーマンスを促進させる効果もあります。陸上ハンマー投げの室伏広治選手が、ハンマーを投げるときに出す「ンガァァァーッ!」という声。この声によって、本来人間が持っている生理的な制限をはずして、爆発的な力を出しやすくしていると考えられています。
――いろいろな効果が望めそうですね。では、サッカー指導の現場では、どのように使えば効果的ですか?
サッカーの試合で、選手が単純なミスをしてしまったときに、指導者はつい、怒鳴ってしまうことがよくあると思います。「どこ見てパスを出してるんだ!。右から味方が上がってスペースができてるのに、ぜんぜん周りが見えてないぞ!」と。
すると選手は、反省と同時に「言われなくてもわかってるよ」という気持ちになります。周りを見られずにパスができなかったことは、本人が一番よくわかっていることだからです。これでは、自分と監督からとで負のフィードバックが2回起こってしまいます。
――なるほど。
そこで、指導者は怒鳴る言葉をオノマトペに置き換えてみる。「左右と前後を『パッパッ』と確認な」というように。
試合中は、短くシンプルに伝えることが原則で、「左右と前後を早く見て」、ということを、「パッパッ」というオマノトペを使うことで、ソフトに伝えることができるんですね。言われた子は、周辺の背景もイメージで思い浮かべることができ、コーチの言っていることを咀嚼しやすい。「そうか、あそこでパッと見ておかなきゃ!」とポジティブにとらえることができます。
――スポーツオノマトペは、たくさんの情報を短い「音」に集約することで、相手に伝えやすくし、また、選手をネガティブな感情にさせない効果があるわけですね。
そうですね。また、オノマトペを使った場合と怒鳴った場合とでは、子どもの感じ方にはっきりした違いが見られます。怒鳴ってしまうと、子どもは否定されたと感じますが、オノマトペで伝えると、「その通りだ」とプラスの反省ができるんです。

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