「コーチには人間そのものの勉強が必要」。パフォーマンスアップの秘訣は『何をやるのか』ではなく『どんな心でやるのか』

2017年09月27日

メンタル/教育

メンタルは大切です。サッカーなどのスポーツを上達させるうえでは、日々練習にどう取り組めるかが重要になってくるからです。今回は『スラムダンク勝利学』(集英社)など多数の著書を発表し、スポーツドクターとして様々なコーチや選手のメンタルトレーニングを行う辻秀一先生の言葉から子どもたちの『パフォーマンスの質を高める方法』を考えます。

取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部

ジュニアサッカーを応援しよう!VOL.46』より転載


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人間の行動の仕組みは2つ。何を、どんな心でやるのか

――スポ根という言葉がある通り、日本には「勝負を決めるのはメンタルだ」と発言するコーチが存在します。でも、実力差が大きければ勝てる可能性が低いという現実も見なければなりません。辻先生はスポーツの価値をどのようにお考えですか?

辻秀一先生(以下、辻) スポーツは勝つこともあれば負けることもあります。ただ勝つことだけを目標にすると負けることに価値がなくなってしまいます。でも、負けを許容することを含めてスポーツです。だから、私はスポーツの価値を“人間を育むための存在”だという捉え方をしています。

――なるほど。日本サッカーの父と呼ばれるデットマール・クラマーさんは「サッカーは少年を大人に育て、大人を紳士に育て上げる」という言葉を残しています。

 サッカーコーチ(以下、コーチ)は子どもたちを上達させるためにサッカーを指導するから当然、サッカーを知る必要があります。でも、同時に子どもを指導するわけだから人間をマネジメントしなければなりません。だから、人間を知ることが必要です。人間がどんな仕組みで行動をするのかを理解できれば、子どもをマネジメントできると思いませんか? そう思うとコーチには人間そのものの勉強が必要で、学ぶべきはサッカーだけではない。どちらも考えて指導をしなければなりません。

――辻先生はいろんな分野のコーチやリーダーに独自の理論「辻メソッド」を伝えられています。率直に、人間はどんな仕組みで行動をしているのですか?

 この考え方はパフォーマンスなどを含めてすべてに当てはまります。人間の行動を作っているのは『何を』『どんな心でやるのか』という2つの要素です。この基本的な考えが徹底的に頭の中に入っているかが、私のメソッドでは重要になります。コーチは普段から『何をやるのか』を一生懸命に考えますし、それは選手も同じです。ただ、多くのコーチは子どもに心が大事だと口にしていますが、私には大事にしているように思えません。極端な例を挙げたら、うまくいかなかった時に『メンタルが弱いからだ』と心のせいにしていることがあるからです。

 よくスポーツは心技体が大切だと言いますが、私は心体技だと考えています。心が備わらないと体はついていかないし、体がついてこそ技が発揮できる。結果に直接関わるのは技であり、『何をやるか』を瞬間的に考え、それを遂行するために体と技が必要なので体を鍛え技を磨くのです。ピラミッド構造でいえば、心が頂点で、次に体、心と重なっています。結果を上から見れば技と体ばかりが目に入り、心はほとんど隠れています。だから、みんな心を忘れてしまいがちです。パフォーマンスやコーチングも『何をするか』という技の部分は変えられるけれど、それは人間がやっていることなので必ず心の存在があってやっているものなのです。

――つまり、『どんな心でやっているのか』が大事になるということですね。

 人間は心が揺らいでとらわれて、機嫌の悪い『ノンフロー』の状態で何かをやっていると、その何かをやるパフォーマンスの質は悪くなるのです。逆に、揺らがずとらわれないで、機嫌のいい『フロー』の状態で何かをやるとどんなパフォーマンスの質も上がる。『何をするのか』がいくら変わっても、心がフローの状態なので体がついてきて技が発揮できるのです。この人間の原理原則が頭の中にたたき込まれているどうかでパフォーマンスの質は大きく変わってくるのです。

 たとえば選手のプレーパフォーマンスを、コーチの指導パフォーマンスだと置き換えたらコーチの心がノンフローの状態だと指導パフォーマンスの質は落ちるわけです。『どんな心でやるか』はすべてに関わってくるので、ノンフローの状態だと判断も決断も学習もすべてにおいての質が下がります。だから、そもそもコーチがフローの状態である『揺らがずとらわれず、機嫌がいい』状態で何かをやることが大切なことなのです。

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