「子どもがサッカーを楽しむ」ことの真の価値とは
2017年12月13日
コラム日本の育成では、「楽しみながら集中してプレーする」ことができない風潮がある。サッカーをするのは「楽しい」が理由なのに…。いつの間にか練習が修行と化し、笑顔でいると「真剣にやっていない」と怒られてしまう。うまくなる練習の中には「笑顔」と「楽しむ」ことがベースである。それはモチベーションと自主性を養うから、身につけたものが実戦に生きる。大切なことは「楽しくプレーしながら学ぶ」こと。つまり、頭に刺激を与えて鍛えることを意味する。ということは、練習後には選手だけでなく、指導者も頭と体がクタクタになっているはずだ。それが指導者も楽しむ一つの形だ。
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企画・取材・文●木之下潤 写真●Getty Images、橋本健、渡辺二美一、ジュニサカ編集部
プレーしながら学び、楽しんだら会得する
指導の基本は『プレーしながら学ばせる』ことです。
日本は少しずつ変わってきていますし、進化しています。しかし、まだ個人の技術を上げることだけに集中していることが多々見られます。その技術が「試合の局面で使えるものか」と問われたら、そこまでに達していないことがたくさんあります。あくまで個人的な意見ですが、『楽しむこと』と『試合で生きる技術の習得』がかけ離れてしまっています。
笑ったり、楽しんだりすることはモチベーションに直結します。だからといって『笑う』とか、『楽しむ』とかが「真面目に練習していないのではないか?」と聞かれたら「それは違う」と、私は思っています。その部分は密接につながっていることなのです。
笑顔で楽しんでいても、規律を持って真面目に練習することはできます。
日本では、「まだ同じことを何度も繰り返すことが真面目に練習だ」という概念がかなり残っています。これは、私が関わったあるクラブの指導者と選手たちの間にも存在していました。私が何度か教えると、子どもたちは笑いながらプレーし、サッカーを楽しむようになりました。もちろん、それは私のやり方だから日本の指導者たちにすべてが当てはまるわけではありません。日本の文化を反映させているわけではありませんし、あくまで私の指導で「楽しむと真面目に練習を両立させた」ことを示したに過ぎません。
しかし、それでも「子どもは楽しんで練習した方がたくさん身につけられるものがある」と断言できます。日本と海外の文化に違いがあるのは承知しています。また、海外ではスキンシップをはかることが一般的ですが、日本ではそうではありません。受け入れられる行為行動もあれば、伝わらない行為行動もあるでしょう。
ただ、私が子どもの頃は「学校へ行く前、ハグをして家から送り出される」のが当たり前でした。母親や父親にそうされることで「安心して自分の存在を確認し、毎日学校に行く」ことができたのです。そして、それは体調が悪いときに大きな意味を持ちました。
「自分は、どの国の人間だ」という前に一人の人間だから、スキンシップやボディコンタクトはどの国の人たちにとっても必要だと思うのです。まだ既成概念がなく大人の常識が通用しない子どもならば、ポジティブなスキンシップを活用することは意味のあるものになり得ます。ハイタッチといった喜びを表現するジェスチャーも積極的に取り入れたらいいのではないでしょうか。もちろん日本でもなされていますが、私が感じるのは「心がネガティブなときにスキンシップをとる」ことです。
例えば、失敗しても「問題ないよ」と伝えるような…。
子どもたちが楽しくプレーする上で、大切なことは「まず認知・共感してあげる」ことです。そして、指導者が子どもたちにそれを伝えるときに重要なことは「子どもの目線に合わせること」なのです。そのような行動をとって「あそこにボールがあるのは見た?」と問い、会話が始まっていくのです。その同じ目線という大人側の行動が、ジュニア年代の子どもたちにとっては大事なことです。
もしその行動をとらなかった場合、子どもたちの立場からしたら「大人の方が大きいし、僕より上から状況確認ができる。だから、見えるんでしょう」という解釈ができます。しかし目線を合わせていれば、その解釈も変わります。ミスを修正するときも、指導者が子供の立場を理解して守ってあげている姿勢を見せたら、ミスも素直に捉えられます。
例えば、目線を合わせずに立った状態で頭をなでようとしたとします。すると、もしかしたら子どもは上から手が伸びてきて怖いから思わずよけてしまうかもしれません。
【現在は、タイのフットサル代表の監督を務めるミゲル氏。(写真●Getty Images)】
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