昨年度2冠のセンアーノ神戸から読み解く「8人制サッカー」の捉え方
2017年12月22日
コラム大切なのはクラブの”メリット”ではなく、子どもたちの”メリット”
街クラブはJクラブの育成組織とは異なり、ジュニアユースやユースを持たなければ選手たちの成長を目にするのはジュニアの間だけになる。子どもも大人も本番から学ぶことは大きい。失敗するから成功するためにその過程を考えて練習し、試合に挑む。もし試合に出場する人間が限られたとしたら。試合に出たとしてもわずかな時間しか与えられなかったら。
選手たちのサッカー人生はその後も続く。大事なことは勝つことではない。それはバトンを渡される側に立つジュニアユースやユースのクラブにも同じことが言える。一貫した指導を受けられない選手が大部分を占める中で大切なことは何なのか。
「うちは中学校に上がる段階で、Jや他の街クラブ、勉強がやりたい楽しくサッカーがやりたいと中学校のサッカー部など自前 のジュニアユース以外を選択する子もいます。本音はみんな中学生までは見たい。でも、子どもたちが選んだ道だから応援しています。選手というのは、みんなで育てなければいけないんです。だから私は進んだ先のクラブの方々と連絡を取り合うし、そういう関係でありたいと思っています」
JFAが8人制サッカーを推し進めて、 五年(※)が経過した。本当に切り替えて良かったのか。あらためて検証しようという声は聞こえてこない。育成の現場では賛否両論様々な声があるが、特に大会運営などで今更変えるとややこしい問題もある。だが、最も優先すべきことは選手たちだ。
「いろんな考えがあるでしょうが、大切なのはクラブとか組織とかのメリットではなく、その子どもにとってのメリットです」
大木監督は育成の本分を口にした。
「個人的に1人審判には賛成です。街クラブはスタッフが足りないから主審副審の3人体制にされると、選手にかける時間が削られます。学年によっては3チーム分の選手がいて、うちはどのチームになっても試合数を平等にしています。全国大会は別に、基本的に試合には全員を出場させるようにしています。もし3人の体制にされると試合数も減ることになる。そういう意味でも、私は8人制に賛成しています。ピッチもこれまでのもので2面作ることができるし帯同するスタッフが一人二人で済めばチーム単位で行動がとれる。そうすればいろんな子の育成ができます」
全少の決勝を、JFAの田嶋幸三会長が視察に来ていた。試合後には囲み取材を受け、いくつか答えていた中に「交代選手の 少なさ」に触れていた。JFAが発行している全少向けの“8人制趣旨開催ハンドブック”には次の内容が書かれている。
「少子化や複数チーム参加の奨励などを鑑み、ピリオド制はとりません。自由な交代を活用して、どんどんみんなプレーさせてください。条件として、1試合あるいは一定数の試合内においての選手全員の出場時間の制限を設定するなど、細かく規定で縛ることはしませんが、全員にプレーしてほしいというのが本来の趣旨です。規定で縛ってしまうと、逆に出場したくてもできないチームが出てしまったり、あるいは規定の言葉のみに反応して様々な問題が出てくる懸念があるからです。趣旨を理解して実施していただくことが重要であると考えています」
主催大会だからか、会長は選手の試合経験を増やすという意味で「縛りを設けたほうがいいのなら……」と、課題として持ちかえると言っていた。当然だが、協会発信でしか変えられないものが存在する。理想だけでは進まないものもある。
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