湘南ベルマーレ・曺貴裁監督が語る“監督論”。「監督として最も咎められる言動は…」
2018年02月13日
コラム自分は無力
J2優勝を決めた昨年10月29日のファジアーノ岡山戦後の監督会見で、僕はこんな言葉を残している。
「5年後とか、10年後とか、未来とかを考えてやることは、もう僕にはできないと思うようになった」
内容を伴いながら勝ち続けて、次につながる若い選手を育てて送り出し、ベテラン選手たちのモチベーションも落とさせない――できないと言いつつ、監督である以上はやらなければいけないけれども、僕自身はそんなスーパーマンではないと思うようにした。
できることは目の前の試合に対して真摯に向き合い、選手たちの「勝ちたい」という気持ちを最大限引き出してあげて、それに乗っかるかたちで試合終了のホイッスルが鳴り響くまで見守ること。自分は無力だ、こんなことしかできないとある意味で開き直るのには大きな力がいると気がつかされたし、そういう過程を踏まないと人間の言葉は本物にはならないと思うようにもなった。
無力だからこそ、監督という存在は必要だとも思うようになった。ベンチやテクニカルエリアで戦況を見つめながら、選手たちが意識して実践している部分も重要だけれども、それと同じく、ある意味でそれ以上に無意識のうちに実践している部分が実はすごく重要だと気づかされた。
脳内の新皮質と旧皮質で言えば、僕に言われたからこうしようというのが前者であり、いわゆるトランス状態に入ったなかで自然と体が動くのが後者となる。あえて言わなくても、日々の練習やミーティングを介して全員が心のなかの奥深い部分に刷り込ませていたからか。昨シーズンは最後まで、J2で優勝しよう、J1へ戻ろうという言葉を僕からは発しなかった。
【商品名】『育成主義』
【発行】株式会社カンゼン
【著者】曺貴裁
【判型】四六判/256ページ
【発売】2018年2月20日
2017シーズン、J2優勝! 選手育成によって湘南ベルマーレを強靭なチームに作り上げた名将・曺監督による指導論とは。
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