湘南ベルマーレ・曺貴裁監督が語る“監督論”。「監督として最も咎められる言動は…」
2018年02月13日
コラム湘南ベルマーレはJ2を戦った2017年シーズン、開幕前は優勝候補の筆頭と目されていた。しかし、蓋をあけてみれば、1対0で勝利した試合は10回。最終的な勝ち点も2位のV・ファーレン長崎とわずかに3差だった。指揮官を務める曺貴裁監督は、J2での厳しい戦いを経て、監督としての仕事に新たな価値観が芽生えたと語る。
『育成主義 選手を育てて結果を出すプロサッカー監督の行動哲学』より一部抜粋
著●曺貴裁 再構成●ジュニサカ編集部 写真●松岡健三郎
「自分ができていないから他人にも要求できない」という甘え
昨シーズンで言えば、ホームにモンテディオ山形を迎えた5月27日の明治安田生命J2リーグ第16節後の監督会見で、こんな言葉を残している。
「お人好しというか、自分ができていないから他人にも要求できない、というように善人ぶるのはくだらないし、やめてほしい」
試合は0対0のままで迎えた後半のアディショナルタイムに、自陣で味方同士が見合うかたちになってボールを失い、パスを受けた選手に決勝ゴールを決められて敗れていた。
会見の後、4月からキャプテンを務めるMF菊地俊介、副キャプテンのGK秋元陽太、けがで戦列を離れていた前キャプテンのFW高山薫とアンバサダーのMF藤田征也をスタジアム内の一室に集めて話し合いの場を設けた。
4人には監督会見と同じく、ちょっと乱暴に聞こえる言葉を投げかけた。ベルマーレの公式ホームページ上にはその日のうちに監督会見の全文が掲載されるので、僕が口にした「善人ぶるのはくだらないし、やめてほしい」という言葉を介して、そこに込められたメッセージを感じ取った選手たちもいるはずだ。
試合に負けた直後は監督、選手ともに冷静になれないのでは、と思われたかもしれない。ただ、居合わせた全員が常に冷静な状況でできる仕事ではないし、冷静になれないからこそ僕は話し合いの場をもちたかった。
すべての内容が悪い一戦ではなかった。全体的に引いてカウンターを狙うモンテディオの術中にはまることもなかったし、シュートまでには至らなかったものの、攻撃面でチャンスも作れた。
そうした部分はもちろん認める。そのうえで勇気が込められたプレーを数多く繰り出せたかと言えば、答えは残念ながらノーとなる。リスクを冒すことに対して向き合っていない、もっと言えば逃げていると思えてならなかった。
戦術うんぬんの問題ではなかった。16年シーズンまでJ1で戦っていたチームにひと泡吹かせてやろう、という思いで向かってくる相手に、何も横綱相撲を取れとは望んでいない。ちょっとした部分を修正できないのは、選手たちが勝敗を分ける細部にこだわっていないからだと僕は指摘した。
選手は向上心が高ければ高いほど、自分はまだまだと思う。その心がけはいいけれども、自分ができないから周囲にも要求できないという思いを抱いているのは、僕には善人ぶっているように見えた。
4人との話し合いは、気がつけば1時間半も続いていた。16試合目で喫した4つめの黒星と、それに続く緊急会談がきっかけとなったかどうかはわからないけれども、お互いが遠慮せず、忌憚のない要求をぶつけ合うことに対する問題意識は、モンテディオ戦を境に大きく高まったと思っている。
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