チャンスは選手がつかむものではない。指導者が与えるもの。湘南・曺監督「試合に出て活躍することだけがチャンスではない」

2018年02月20日

育成を考える

2年ぶりにJ1の舞台に挑む、湘南ベルマーレ。チームを率いる曺貴裁監督は若手選手の育成に定評がある指導者だ。監督として多くのこだわりを持つ曺監督だが、なかでも選手に対して「チャンスの与えかた」には強いこだわりがある。本日発売となった『育成主義 選手を育てて結果を出すプロサッカー監督の行動哲学』から一部抜粋して紹介する。ぜひ、多くの指導者に参考にしていただきたい。

著●曺貴裁 再構成●ジュニサカ編集部 写真●松岡健三郎

『育成主義 選手を育てて結果を出すプロサッカー監督の行動哲学』より一部転載


MTK_4529のコピー

チャンスは与えるもの

 昨年4月9日に行われた明治安田生命J2リーグ第7節の東京ヴェルディとの試合は、湘南ベルマーレの歴史上に長く刻まれていく90分になると思っている。

 先発メンバーとして送り出した11人のなかには、青森山田高校から加入して2年目のMF神谷優太、市立船橋高校から加入したルーキーのDF杉岡大暉、湘南ベルマーレユースから昇格した同じくルーキーのMF石原広教と、十代の選手3人が名前を連ねていた。

 ベルマーレの監督を務めて6年目を迎えていたが、僕の記憶が正しければ、十代の選手を3人同時にピッチへ送り出したのは初めてだった。加えて、石原はこの試合がリーグ戦デビューだった。後半21分からは神谷に代えて、高校3年生だった16年5月にユースからトップチームに昇格させていた、石原と同期のMF齊藤未月も投入している。

 キックオフ前の時点で、スペイン人のミゲル・アンヘル・ロティーナ新監督に率いられるヴェルディは首位に立っていた。ひるがえってベルマーレは、敵地で行われたカマタマーレ讃岐との前節を0対3のスコアで落とし、順位も首位から4位に転落。舞台となった駒沢陸上競技場のピッチには間断なく雨が降り続き、強い風も吹きつけていた。

 プレッシャーがかかる状況のなかで、十代の4人は勇敢に戦い抜いてくれた。逆転勝利を収めた後の監督会見。若い選手たちを起用している意図を問われた僕はこう答えている。

「チャンスは与えるものだと思っています」

 J1に初めて昇格した川崎フロンターレのアシスタントコーチに就任し、指導者の道を歩み始めた00年から、僕は「チャンスをつかめ」という言葉を選手たちにかけたことがない。

 サッカーに限らず、スポーツ全般において「チャンスは誰にでもある」とよく言われる。この言葉がどうにも嫌いで、振り返ってみれば、サッカーをはじめた小学生のときから違和感を抱いてきた。

 府立洛北高校時代に、国体に臨む京都府選抜に選ばれたことがある。合宿などで「ここにいるみんなはチャンスをつかんだんだ」と、指導者からハッパをかけられるたびに首をひねったものだ。

 自分のなかではチャンスとは思えなかった。サッカーをする環境に恵まれていることに、心から感謝はしていた。環境だけでなく、切磋琢磨するチームメイトたちにも恵まれたが、それを自分のなかでチャンスだとはとらえられなかった。

 たとえば活躍した選手が「あのときはチャンスだと思って必死だった」と振り返ったとする。誤解を恐れずに言えば、その類の言葉はほとんど嘘だと思っている。成功を収めた人間はそんな心境でプレーすることはない、というのが僕の持論だからだ。

 小さなころからスポーツに取り組み、上のレベルに行きたいと望んだ子どもたちの数は、プロとして活躍している選手の何十倍、何百倍、いや、それこそ何千倍もいるはずだ。

 どこかで挫折して、夢をあきらめた瞬間を振り返るときに「チャンスをつかめなかった」という言葉をよく聞く。あるいは「チャンスがあったんだけど、力がなくて」とも。果てして正解なのだろうか。

チョウキジェ

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