Jクラブはどう地域と共存すべきか。湘南ベルマーレが行う「育成の価値観」を共有するための取り組み【短期連載】

2018年03月28日

コラム
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昨年、サッカーサービス社が『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017』の分析講習会を行った。その中では、日本の指導に対する課題がいくつも挙げられた。実際に大会を振り返っても、FCバルセロナを相手に、日本のチームは何もやれなかった印象しかない。子どもたちがFCバルセロナと戦い、普段どおりにプレーしていたかと問われたら「Yes」とは言えない。だが、自分たちのスタイルをそのままぶつけて真っ向勝負を挑み、「日本のチームもこれだけやれるんだ」という力を見せることができた唯一のチームがあった。それは「湘南ベルマーレスクール選抜」だ。そこで、湘南ベルマーレのアカデミーダイレクターを務める浮嶋敏氏に、同クラブの育成について話を伺った。第4回目のテーマは「地域との共栄と還元の方法、その先に考える育成とは?」。全4回の短期連載としてお届けするので、Jクラブの育成に関する取り組みをぜひご一読ください。

■ 第1回
「どうサッカーを捉え、指導に落とし込むか」。湘南ベルマーレが体現する“ボールを奪う意識”

■ 第2回
湘南ベルマーレの「止める蹴る」指導法。意識すべき“3つのタイミング”

■ 第3回
「ジュニア年代から育てるのが育成の基本」。湘南ベルマーレが掲げるクラブの“アイデンティティー”

取材・文●木之下潤 写真●山本浩之、工藤明日香


育成の価値観を地域指導者と合わせて指導法を還元するか?

――一貫指導と言っても、クラブのすべてのコーチ陣が「強化特待クラス」を把握し、選手個々のいろんな情報が共有されていないと難しいです。

浮嶋「湘南ベルマーレは一貫指導に関しての内容をまとめ、コーチ陣は共有しています。そして選手たちはトレーニングの中でそれを学んでいきます。ジュニア年代はゴールデンエイジと呼ばれる重要な時期の選手たちなので個人のテクニックを中心に個人戦術、グループ戦術のところをトレーニングしています」

――さすがJクラブです。ただ一方で、湘南地区の選手たちを育ててトップに輩出するには地元のタレントをうまく育てなければいけません。特にジュニア年代がスクールである以上、他の選手たちは地元クラブが育成することになります。そうすると、湘南地区の指導者たちに自分たちが培った育成のノウハウを還元する必要があります。

浮嶋「湘南地区だと全小学校を回った巡回指導を行っていますし、サッカー指導に関しては、年間10〜12回ほど指導者講習会を開催しています。あとは、U-11を対象とした『COPA BELLMARE』という大会を主催しています」

――タレントを集める立ち位置にいるプロクラブとしては、地域の指導者たちのレベルアップに関与することも大事な役目の一つです。ストレートに指導者の育成には人が必要です。その点についてはどうでしょうか?

浮嶋「まさにそこが、私がダイレクターになって一番難しさを感じるところです。湘南ベルマーレはホームタウンが多いので、それだけ地域のサッカー協会の数も多いんです。当然、人数が多いからこそクラブとして数多くの指導者育成を行なっていくことは容易ではありません。

 そこで、地域の子どもが参加する大会を開くのがいいと思い立ちました。ブラジルのパルメイラスやスペインのビジャレアルなど海外クラブを呼び、世界を肌で感じてもらうようにしました。この大会は選手だけのものではありません。指導者のための大会でもあるんです。直に世界の指導を見て学ぶための場でもあります。

 実際に、指導者同士の交流の場も設けています。私たちにとって勉強になるのはもちろんですが、私たちだけが勉強をしても意味がありません。だから、指導者の方々にいろんなことを直接学んでもらうためにもこの大会を始めました。地域振興という意味合いも含めているので、代理店を介さずにクラブのスタッフたち一同で毎年手分けしながら準備をしています」

コパベルマーレ

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