「問いかける」だけではない。プレーの”選択肢”を広げるために指導者ができること【6・7月特集】

2018年06月13日

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状況の把握にもスキルが必要。全体から部分へと目を向ける。

 少し状況を把握することを紐解いたが、そういう分析をしていくことにもスキルが必要だ。実は、その点について自分の考えを後押ししてくれたのは「つくば言語技術教育研究所」の三森ゆりか氏だ。欧米の母語教育を長年研究され、日本の国語教育の在り方について警鐘を鳴らされている方だが、以前取材した時に「絵の分析」について触れ、こんなことを教えてくれた。ちなみに、同氏はJFAが行う様々な講習会で「言語技術教育」の講師も務めている

「絵の分析も問答と同様にスキルが必要です。まずは設定から読み取ります。場所はどこ? 季節はいつ? 天気はどう? 時間は何時? 次に人物や物に焦点を当てていくのです。誰がいる? 男の子か女の子か? その子は何をしているのか? どんな音がする? どんな匂いがする? どんなことを考えている? どんどん掘り下げていくのですが、訓練すれば徐々に絵の内容を掘り下げて見えるようになります。

 いつも全体から部分へと見ていくと、その関係性がわかるようになります。そうすると最終的には、部分から全体へと逆の見方ができるようになるのです。もし絵の分析のやり方を方法論として指導しなければ、どこから何を見たらいいのかがわかりません。サッカーで例えるなら移り変わる状況の中、判断が必要な瞬間に「なぜそうプレーするのか」という理由を見つけ出せなければ成功しても失敗しても上達しません。理由をもって積み重ねるから成長するのです」

 三森氏は「絵の分析」と「状況判断」は深くつながり合っていると語った。これは「ピッチを俯瞰して見る」ことにも通ずる。サッカーでも状況の見方を方法論として指導できなければ「状況把握→認知」へ昇華できない。状況を把握するとは、目の前のことだけでなく、もっと広いエリアの状況までも含まれる。

 サッカーで例えると、自陣のゴール前であれば「ビルドアップ」、「ゲームメイク」といった状況につながるし、相手ゴール前に近づけば「チャンスメイク」、「ゴールを決める」という状況につながる。当然エリアによって「ボールを運ぶのか」「ボールをキープするのか」「チャンスを作るのか」「ゴールを決めるのか」という目的と優先順位が変わるため、その中の状況によって目で収集する情報の見方、そして選択肢として選ぶ優先順位も変えなければならない。

 ボールを持っている選手とボールを持っていない選手では役割が違うから「敵」と「プレースペース」と「味方」に対する状況の把握の仕方が変わるし、分析の仕方も変わる。しかしそれがプレーとして成り立つのは、ボールを持っていない選手はエリアによってチーム全体の戦い方がある中で動き、ボールを持っている選手はそれを理解した中で選択肢を探すからだ。つまり、チームメイト同士でプレーイメージが一致していなければ「選択肢」は成立しない。

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