なぜ育成年代から「頭の中」を鍛える必要があるのか? その意義を考える【6・7月特集】
2018年07月17日
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サッカーを深く理解していればシチュエーションによって認知内容は変わる
――チーム内でルールすら決めていないのに、多くの指導者は試合の時だけ良いプレーだの悪いプレーだの評価しています。試合で急に指導者独自のルールが飛び出すのは、勝負がかかったからです。
末本氏「先月、うちの6年生チームでこんなことがありました。GKから近くのDFにパスをつけたのですが、相手に狙われてゴールを決められました。その時に横にいるGKコーチが後悔していました。
その試合のその時間帯では、得失点差が絡んでいたから失点をしないことが大事で、それを優先してプレーしなければならない状況でもありました。だから、たとえチームとしてDFにボールを渡して丁寧につないでいくことを大切にしていても、その文脈では『よりゴールに近い選手を見て、そこから選んでいくことを彼自身が選べるようなトレーニングをしていなかった』と。
その試合は大量得点が必要でそこまで3対0だったのですが、チームとして上位に進出するためには7対0ぐらいで勝たなければいけなかった。もう6年生なので試合の得点差、時間帯によって『プレーの選択』や意味が変わってくることを選手たちに理解させることも必要だよね、と指導者間でそういう話になりました。
レアル・マドリードの子どもたちは本当にサッカーを知っていました。日本でも『ヨーロッパの子たちたちは毎日質の高いサッカーをよく見ている』という話題が上がりますが、私たち指導者がそこに逃げてしまったら単なる怠慢だと思うのです。質の高いサッカーを目にする環境がないのであれば、選手たちに基準を作り、それに応じて正しい選択をしていけるように普段から仕向けていかなければならないと思うのです」
――6年生になって「サッカーとはこういうものだ」と教え始めても子どもは頭がパンクするだろうし、何より体を使う技術的なプレーとオフ・ザ・ボールの頭脳的なプレーは小さい頃からの積み重ねが必要不可欠です。
末本氏「指導者も小学校低学年の頃からボールを持っている選手以外の選手に目を向けることが大切だと思います。私が勉強に行ったスペイン・バレンシア州のあるチームでは、キッズの子どもたちに対して、ボールを持っている選手以外のオフの選手に『離れよう』と声をかけていました。その年代では見えるものが少ないので『まだ早い』と考えることもできますが、オフ・ザ・ボールの選手に離れることを促しながら、ボールを持っている選手に選択肢を与える方法はとても興味深かったです」
――ボールを持っている選手たちに選択肢を与えるため、周囲の選手たちにアドバイスをしてどこに動くのかを教えるわけですね。
末本氏「その方が明らかにプレーしやすいですから。選択肢が2つ以上ある状態でプレーするのか、自分で何とかする1つしかないのか。それはボールを持っている選手からすれば大きく違います」
――足下だけがうまい選手に『心の余裕を持て』と言ってもプレーには判断が伴い、頭を使うわけなのでそれだけでは解決できません。
末本氏「サッカーが決闘だったら足下だけを磨けばいいんですけどね。ゴールと相手だけしかいない1対1勝負だから。でも、サッカーは味方がいて、相手がいるチームスポーツです。いかにその局面をチームで解決していくか。
私たちも生きていると、人生の場面、場面で様々な問題を解決していくわけですが、サッカーも同じです。小さい頃から『この状況はどう解決していくか?』を繰り返しトライしているから、大きくなるほど『この状況はどうすればいい』という経験が蓄積されているわけです。頭の部分への取り組みは早いに越したことはありません。頭を使ったプレーのトライ&エラーが蓄積されているほど伸びしろに関わってくる。そのしつけと習慣は育成の指導者が伝えていきたいですね」
――そういうことが前提で議論できるようになった時、日本サッカーが全体的に一つ上に底上げされるのでしょうね。
末本氏「試合を見ても、トレーニングを見ても、今はチームスポーツという捉え方ではないですから。足下のうまい選手たちが行き詰ってしまうのも、『頭を鍛える』ことへのアプローチをおろそかにしているから。でも、そこはすごく時間がかかる部分です。だから、保護者も選手も簡単に結果が出て見えやすい足下の技術を磨くことに走りがちなのだと思います。でも育成を長いスパンでみると、頭を鍛えることは未来への投資です。
以前、バルセロナスクール福岡校のU-12チームと試合をすることがありました。一人一人の能力はそこまで高くありませんでしたが、サッカーを知っている選手が多く、認知に優れていたので良いポジションを取るのです。個人の質で上回られることはあっても、ポジションで優位に立たれる機会がなかったので非常に有意義な経験でした。
ボール扱いや身体能力の高い選手でなくともプレーできるというのがサッカーの良さです。認知力が高くて、いいポジションをとっていれば相手より一歩二歩先にプレーできる。だからこそ頭の部分を大事にしてほしいと思うんです。サッカーに出会った頃は足下に比重が大きいのは仕方ないです。でも、5・6年生になってもそれが続いてしまうのはかなり問題です。その年代では技術トレーニングを多くとも40%ぐらいにして、頭を使う戦術的な部分もトレーニングしていかなければなりません」
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