「知らなかった」ではすまされない熱中症対策。正しい水分補給の“効果”と“限界”

2018年07月23日

コラム

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水分補給や休息だけでは限界がある

――パフォーマンスという観点でも、 水分補給はとても重要なものです。

安松「水分補給は体温を下げるためでもあります。それはパフォーマンスに大きく関わることです。人間は2%の体重減少をさせないのが基準です。熱中症の場合、体重が4%以上減少してしまうと意識が遠のくなどの症状が現れます。ようするに、夏場は汗をかいて2%の水分が体から外に出てしまうので、それを補うために水を飲むわけです。例えば、40㎏の子どもなら体重が800g以上減ってしまうとアウトです。でも、1%でも体重減少が起こればパフォーマンス自体は下がってしまいます。だから、パフォーマンスを維持するためにも水分補給をこまめにするのが大事なのです」

――例えば、練習や試合の前後に体重をチェックする方法もあります。

安松「理想は練習や試合の前後で体重を測ったとしたら±0%です。2%の体重減少の数値は国内外問わず、世界基準としてうたわれていて、夏場の脱水は安全対策には欠かせないことです」

――安全対策でいえば、夏場の脱水症と熱中症は切っても切れません。

安松「体重を測ってチェックするのが一番わかりやすい方法です。毎朝おしっこを確認して量がちゃんと出ているか、色が濃くないかをチェックし、いつもと違うようなら朝食時に水分を十分に取るなどのリカバリーをすることができます。簡単だから気軽にやれます。他にも体温を測る方法がありますが、平熱は子どもによって異なるし、そもそも自分の平熱を知りません」

――確かに平熱ってわかりません。

安松「体温上昇のリミットは40.2か3と言われています。それぐらいまで体温が上がると、脳が体に様々な指令を出します。気分が悪くなる、足が痙攣するなど、脳が体に対して危険のシグナルを送るのです。だから、夏場は40度に達しないように体を冷やすのは大事です。気温が高いということは当然体が温まるのが早いから40度に到達するのも早くなります。つまり、夏場はペースが早まるわけです」

――体温上昇が早いわけですね。

安松「ええ。体から熱を逃す方法は大きく2つあります。一つ目は蒸発させる水分で熱を逃す。二つ目は熱の移動で熱を逃す方法です。最近は便利ですから100円均一ショップに行けば、霧吹きやハンディ扇風機が売っています。例えば、水にアルコールを少し混ぜて体に吹きかけ、ハンディ扇風機などで汗を蒸発させてもいい。ただ子どもは熱を逃す体表面積が小さいので、実際には水の蒸発に頼るだけでは難しい部分があります。だから、体が真っ赤になるのです。

 そうすると、熱の移動が現実的です。例えば、アイスノンや氷水に浸したタオルで冷やすというのも有効です。手先、足先、頭の先で熱交換を行うだけで随分違うので、最近は育成年代の代表チームでも『手掌冷却』といって、練習の合間に手や足を氷水入りのバケツに入れるようなこともしています。これは冬場にも言えることで、手袋やネックウォーマー、ニット帽で温めることも重要なのです。もちろん温かくなれば脱いでいかないと、汗が出て行くだけなので着たり脱いだりの調節が必要不可欠です」

図2
※クリックで画像を拡大することができます。

※参照:「サッカーにおける暑さ対策マニュアル」

――科学的な知見を持つと、夏場でも冬場でも環境への対応は大切です。

安松「そもそも気温が30度を超えると水分補給や休息をするだけでは限界があります。運動自体を控えないと、子どもの体温は上がる一方です。ただ気温31度でも湿度が20%だったら涼しく感じてプレーができたりします。それは体温調節のメカニズムで説明すれば、汗が蒸発するからなのです。つまり、環境面を考慮するには気温だけでなく、湿度も関係します。これについては世界共通の指針として発信され、サッカーの公式戦で採用されているWBGT(表2)と呼ばれる指標が示されています」

――WBGTは知りませんでした。

安松「湿度が高いと汗が蒸発しないので熱が体外に逃げません。つまり、早めに40度を超えてしまいます。一方、気温が30度を越えても湿度が低ければ汗が蒸発して熱が体外に逃げるので、意外と涼しさを感じるはずです。すでにWBGTの指標に従ってJFAも、大会規定を作り実行しています。それはジュニアなどの育成年代だけでなく、すべてのカテゴリーに対してです」

――命にかかわる問題ですから。

安松「夏場も交代しないチームはたくさんあります。個人的な意見ですが、強制的に交代をさせるようなルールを設けて、選手を保護することも必要なのではないでしょうか。アメリカの育成の大会ではそういうことはあるようです。もっと言えば、気温が高い中でプレーして体は疲れ切っているわけです。パフォーマンスを考えるのなら交代した方がいいし、命に関わる危険も回避できるわけです。交代選手の試合経験を生むこともできると思います」

<関連リンク>
「夏休みのうちにどれだけ心身ともに追い込めるかが大切だ」。日本の“夏トレーニング”に対する違和感


<プロフィール>
安松幹展(やすまつ みきのぶ)

立教大学コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科准教授。自身もサッカー選手として国体成年2部東京都選抜選手などの経歴を持つ。現在は立教大学女子サッカー部監督を務める。日本サッカー協会フィジカルフィットネスプロジェクトメンバーでもある


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