守備のスペシャリスト対談! 日本人が「マンツーマン」ではなく「ゾーン」が合っている理由

2018年09月05日

インタビュー

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ポジションを先取りする「チャンネルサイド」

松田 その先取りの感覚を言葉にしたのが 「チャンネルサイド」。たとえば、こちらのセンターバックとサイドバックの間に相手のフォワードが流れながら受けようと走り出すことが多いのですが、そのときにセンターバックの選手が相手のフォワードに対して真正面で構えてポジションを取るのではなく、相手のフォワードが走り抜けてボールを受けたいポジションに先取りして埋めてしまうんです。

図15
【センターバックの選手が相手のフォワードに対して真正面で構えてポジションを取るのではなく、相手のフォワードが走り抜けてボールを受けたいポジションに先取りして埋めてしまう(❶)。予め半身を覗かせておくことで相手がもっとも狙いたいスペースを消すことができる】

 つまり、予め半身を覗かせておく。相手のボールホルダーとも駆け引きをしているとも言えるのですが、それでフォワードが走り込む先のスペースにパスを出させるのを諦めさせて、手前の足下でパスを受けさせればこっちの勝ち。

岩政 それがセンターバックが出くわす一番多い場面ですよね。マンツーマンの対応ならば常に相手を外へ外へと追い込もうと考えますが、ゾーンは一番相手が狙いやすいところ、つまり、相手にとってもっとも簡単な攻めの形となるエリアを先に防ぐことなんです。そのポジションを先取りして埋めてしまえば、相手はセカンドオプション、サードオプションを選ばないといけなくなる。すると、相手は「背後へ抜けるアクションがばれた」とばかりに次は足下に入れたがるようになる。でも、日本人の場合、足が速い選手はたいがい足下がうまくありません。そこにガツンとアタックにいけばボールが取れることがほとんどだから、僕は対応が簡単だった。

松田 その場合、ボランチもプレスバックして挟み込みに来ているからね。

岩政 そうです、そうです。

松田 全体がコンパクトな状態であれば、たとえフォワードの足下に入ったとしても、もちろん、そこに通るパスコースが切れていればもっといいのだけど、仲間がすぐに来てくれる距離感があれば簡単に奪えるんです。つまり、それが組織があるということです。

――岩政選手は鹿島でも「チャンネルサイド」を意識した守り方をしていたんですか?

岩政 僕がいたときはそうでしたね。僕は内田選手に鹿島でも日本代表でも同じように伝えていたことがあって、「この二つだけは守ってくれ」と言っていたのは、「ボールサイドに来たときは必ず縦方向から切ってくれ」と。内田選手の前方の相手がボールを持ったときに、それを内田選手が中から切って対応してしまうと、(中央にいる)相手のフォワードが内田選手の背後へ走って受けようとするんです。そこに僕は付いていきたくなかった。

 でも、内田選手が縦を切って立ってくれれば、ボールホルダーは僕がいる中へとボールを入れてくるか、もしくは、浮き球で内田選手の頭を越えるしかないんです。浮き球で出されたとしても、僕が多少遅れても後ろからガツンといって潰せるから、「浮き球だったらいいよ」と伝えていたんです。

 ボールが逆サイドにある場合は、僕が少しボールサイドに寄せるから、そうすると可能性としてあるのは僕の頭上を越えていく浮き球なんです。だから内田選手に「その浮き球だけはカバーしてくれ」とお願いしていました。その二つだけは守ってくれ、と。その他の約束事は何もなかったけれど、それで十分に守れました。

松田 センターバックとサイドバックの関係だけではなく、ボランチとの関係も出てくるともう完璧なんでしょうね。

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