「運動で必要なのは身体と筋肉だけ」は誤解。スポーツ科学の第一人者が語る”脳”を鍛える必要性
2018年09月23日
コラム「”運動で必要なのは身体、筋肉だけ”といった偏見や誤解を解きたい」そう語るのはスポーツ科学の第一人者、深代千之氏です。深代氏が強く訴えるのは運脳神経を鍛えることです。どの「時期」「年代」が最適なのか、どうすれば運脳神経が育まれるのか、深代氏の言葉に耳を傾けます。
『子どもの学力と運「脳」神経を伸ばす魔法のドリル』より一部転載
著●深代千之 写真●ジュニサカ編集部、佐藤博之
動きの引き出しを増やして 「運脳神経」を鍛える
身体を動かして、脳にたくさんの神経パターンの引き出しを作る力。これを私は「運脳神経」と呼んでいます。運動神経ではなく〝運脳〞神経という造語で表現するその定義は、「思い通りの身体の動かし方を身につけるための脳と身体の協調性」です。
脳と身体の〝協調性〞と定義しているのは、「運動で必要なのは身体、筋肉だけ」といった偏見や誤解を解きたいという思いがあるからです。運動神経という従来の言葉では、「身体を使う運動」と「頭を使う勉強」をまったく別のものとしてとらえる間違った認識につながってしまいます。まずは運脳神経をいつ鍛えるべきかを説明します。
運脳神経を作るには、最適な「時期」「年代」があります。この時期を考える上で根拠として使われるのが、アメリカの医学者・スキャモンが出した「スキャモンの発達・発育曲線」(図1)です。これは 20歳の成長発育のレベルを100%として考え、人が誕生してから身体の組織が発達・発育していく特徴を、4つのパターンに分けてグラフ化したものです。
生殖型は、睾丸、卵巣、子宮、前立腺などの発育を指します。14歳あたりから急激に発達するのが特徴です。一般型は、全身の計測値(頭径を除く)、呼吸器、消化器、泌尿器、循環器、心大動脈、筋全体、骨全体、血液量などの発育を示します。リンパ型は、免疫力を向上させる扁 へんとう 桃、リンパ節などリンパ組織の発達です。
12歳ごろまでに急激に成長し、思春期を過ぎると大人のレベルに戻るのが特徴です。
注目したいのは、脳や脊髄といった中枢神経や、視覚と中枢神経のリンクなどの発育を示す、神経型の発達曲線です。出産直後から急激に発達し 3〜5歳で大人の約 80 %にも達していることがわかります。12歳ごろには約100%になります。
神経型の発達時期にさまざまな運動を経験し、神経回路に刺激を与えることが、運脳神経を高める上ではとても大切なのです。一度経路が出来上がれば、そのあとに消えることはほとんどありません。一度自転車に乗れれば一生乗れるのはこのためです。
【図1】
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