ごはんは量ではない。吸収されなければ意味はない。いわきFC「食」への取り組み

2018年09月27日

コラム

2017シーズン天皇杯全日本サッカー選手権でJ1の北海道コンサドーレ札幌を撃破するなど、衝撃的なジャイアントキリング旋風とともに脚光を浴びたいわきFC。天皇杯での躍進をキッカケにJ1のクラブにも勝るとも劣らない施設やクラブのヴィジョンに掲げる「日本のフィジカルスタンダードを変える」というセンセーショナルな言葉が様々なメディアに取り上げられ話題となった。一方で彼らは「育成」にも力を入れ、着々と地域に根差したクラブになっている。前回までは、アカデミー全体のビジョンを紹介したが、今回はそこから「食」に対する取り組みにフォーカスする。

【連載】いわきFCの果てなき夢

取材・文●藤江直人 写真●ジュニサカ編集部


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食べても吸収されなければ意味がない

 静寂に包まれていた広大な空間が、午後7時を回ったあたりから急ににぎやかになる。いわきFCのクラブハウスや練習場と同じ敷地内にそびえ立つ、親会社の株式会社ドーム(本社・東京都江東区、安田秀一代表取締役CEO)の巨大な物流センター、ドームいわきベース(DIB)の1階にある食堂「DNSパワーカフェ」が、未来を担う子どもたちの笑い声であふれ返るからだ。

 J1から数えて6部にあたる、東北社会人サッカーリーグ2部南を今シーズンの主戦場としているいわきFCのトップチームの選手たちには、朝昼晩と一日3度の食事、名づけて「いわきFC定食」が日替わりメニューで「DNSパワーカフェ」にて提供されている。

 ドームが栄養バランスを計算したうえで、東京・北区にあるトップレベル競技者用専用トレーニング施設「ナショナルトレーニングセンター」の栄養管理食堂業務を、開業時から委託されている「エームサービス株式会社」(本社・東京都港区、代表取締役社長・山村俊夫)へメニューの作成を依頼。献立をドーム側が再確認したものに、選手たちが笑顔で舌鼓を打っている。

 以前は朝昼晩ともに1200キロカロリーずつが提供されていた。しかし、朝食に関してはちょっと多いのではないか、という選手側の声を受けて、今年に入ってから700キロカロリーに変更。その分、昼食と夕食のメニューが1400キロカロリーずつで作成されている。

 そして、食事もトレーニングの一環という考え方は、いわきFCのアカデミーの子どもたちも対象となっている。昨シーズンから活動するU-15とGirls U-15、そして今シーズンから立ち上げられたU-18の子どもたちが、夕方から行われる練習後を終えてから続々と集結してくる。

 メニューに関しては、U-18はトップチームの夕食と同じものが提供される。ある日の夕食では「主菜:サーモンムニエルのトマトソース、副主菜:鶏ささみのマリネ」で、さらに「白米、汁物、小鉢、乳製品、卵、果物」がついている。

 U-18の子どもたちに対しては、このなかで白米が400グラムから300グラムに減らされている。今年からいわきFCを担当し、定期的に通っているドームの「ドームアスリートハウス ニュートリションチーム」の田中初紀さんは、白米の量を減らした理由をこう説明する。

「高校1年生になったばかりなので『そんなにご飯、食べられないよ』という子どもが多いんですね。食べる力というものも大事ですけど、食べても吸収されなければ意味がないので、ベースを300グラムにして、食べられない子はさらにちょっと減らすとか、食べられる子は逆にちょっと増やすようにしています。この年代ですと、体の大きさも個々によって全然違うので」

 これがU-15およびGirls U-15となるとメニューのなかの副主菜、前出の献立で言えば「鶏ささみのマリネ」が抜かれ、後者はさらに白米が220グラムに減らされる。タンパク質を多く摂取するために添えられる副主菜だが、中学生年代の子どもたちには逆に多いと栄養士の資格をもつ田中さんは言う。

「U-15に関しては、一日当たりにとるタンパク質を体重の2倍に当たるグラム数にしようと、たとえば50キロの選手ならば100グラムを取ろう、と考えています。当然ですけれども、U-15とトップの選手たちの体は全然違いますし、小さな体にたくさんのタンパク質を取らせようとしても吸収できないので。その意味で、副主菜を抜くようにしました」

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【ドームアスリートハウス ニュートリションチームの田中初紀さん】

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