子どもを「伸ばす親」「ダメにする親」
2018年10月18日
メンタル/教育日々、何気なく繰り返している親の習慣が子どもを伸ばしたり、ダメにしたりします。あなたは大丈夫ですか? 子どもを伸ばすためにはどうしたらいいのでしょうか。保護者が意識したい「3つ」の習慣を『子どもを「伸ばす親」と「ダメにする親」の習慣』(明日香出版社)の著者であり、NLPという心理療法をトレーナーとして実践し、自身が開校する学習塾などで成果を挙げる池江俊博氏に教えて頂きました。子どものためにもぜひチェックしてみてください。
『ジュニアサッカーを応援しよう!VOL.46』より転載
取材・文●鈴木康浩 イラスト●須賀ハフリ
本来ミスとやる気は関係ない
親として子どものやる気を引き出そうと、しっかり教育しているつもりが、日々の言動や習慣によって知らず知らずのうちに子どもをダメにしてしまっている――。
逆に、本記事で紹介する、親が意識すべき習慣を実践すれば、子どものやる気は引き出され、ぐんぐん成長していく。
子どもの『やる気スイッチ』を押すコツがあるという。お話を聞かせてもらったのは、『子どもを「伸ばす親」と「ダメにする親」の習慣』(明日香出版社)の著者であり、NLPという心理療法をトレーナーとして実践し、自身が開校する学習塾などで成果を挙げる池江俊博さんだ。NLPとはかつて欧米のカリスマセラピストが実践していたメンタルトレーニングを体系化したもので、スポーツや政治、ビジネスシーンなど世界のあらゆる分野で効果を発揮する心理手法だと言われる。
「人間は同じ物事があっても、落ち込む人と、落ち込まない人がいます。トレーニングによってできるだけ落ち込まないようにする。NLPは、そのやり方を自分の中に入れる、といった手法の集まりなんです」
池江さんに今回、子どものやる気を引き出せる親、そうではない親、をテーマに話を聞いた。
「子どもによってやる気を見せる子と、そうじゃない子がいます。ここで大事なことは、親が子どものやる気をどこで判断しているのか。子どもがちょっとしたミスをしたときに、やる気がない、と感じる親もいるでしょう。しかし、本来は、ミスとやる気は関係がないものなのです」
子どもが一生懸命にやっているサッカーの試合でミスをしたとする。本来、ミスとやる気は関係ないにもかかわらず、子どものやる気を引き出そうとピッチサイドから怒鳴ってしまう親は往々にしている。
「そういう親の声で『よし!』とやる気が出る子どももいます。しかし、逆にやる気がなくなる子どももいます。勘違いしやすいのは、指導者や親が“やる気がない”とする子どもに檄を入れようと大きな声を出したとき、子どもは反射的に聞いてしまうなのです。それで大人が『子どもに伝わっている』と錯覚を起こしてしまう」
池江さんは「やる気を引き出すには、内部的な動機付けがすごく大事」だという。そのためのポイントがあるので、わけて紹介してみたい。
親の「3つの習慣」が子どもを変える
1.子どもに共感してあげる
たとえば、子どもが積み木を上手に積み上げたとしよう。「このときに親も一緒にになって、『できたね!』『やった!』と喜んであげるのです。すると、子どもはより大きく達成感を感じることができて、頭の中の喜びのホルモンがたくさん分泌されます。そういう脳の思考回路がどんどん発達していきます。
脳科学の本を書かれている林成之先生が『同期発火』という言葉を使われていましたが、子どもが最初はつまらないと思っていることも、親が楽しそうにしていると子どもは親の反応を敏感に感じ取り、同じように脳が楽しいように反応し始めるものなのです」
逆に、子どもが何かを成し遂げたタイミングにもかかわらず、親が「ふーん」などと実にそっけない反応していると、子どもは『あまり喜んでくれていないな』と思うものです。感情の表現の仕方がわからなかったり不器用だったりする人は知らないうちに子どものやる気を奪い取っているので注意したい。
2.子どもを否定する前に共感する
たとえば、子どもが「このおもちゃ買って」と言い出したとする。親としてはつい「ダメ、また今度ね」と軽くあしらってしまいがちだが、すぐに否定せずに、まずは共感の言葉がけが大事だという。「すぐに『ダメ』と言いたくなってしまう場面でも、否定をする前に、『このおもちゃ買って』と子どもがねだったときに、『あなたはこれが欲しいんだね』と共感を示してあげてから、『でも、今日は買えないんだよ』と続けるのです。
いきなり否定してしまうと、子どもは『自分は認められていない』と受け取る可能性があるので、否定する前に共感というワンクッションを入れましょう。これは大人同士でも同じで、私が意識していることですが、誰かから質問があったとき、答える前に『こういう質問ですよね?』と繰り返してあげると、質問者は『ちゃんと自分の質問は尊重されているんだな』という感覚になるのでコミュニケーションがうまく進みやすくなります」
3.子どもの心を決めつけない
少年サッカーの試合にも勝ち負けの結果が出る。子どもが試合に敗れた直後、表情が沈んでいる場面があったとしよう。「子どもが心底悔しがっているのがわかるのであれば、『悔しいよね?』と寄り添うことは自然でいいと思います。ただし、子どもが本当に悔しがっているかどうかわからないときでも、親が一方的に『悔しいよね?』と子どもに親の感情をぶつけてしまうのはどうでしょう。感情の主体は誰にあるのか。子どもにも感情があれば、人格もあれば、価値観もあります。まずそれを親として尊重してあげる必要があります。尊重してあげるという行為自体も、子どもへの共感を示すことになります」
以上が大きなポイントになるが、これらを日頃実践できていない心当たりがある人は気を付けたほうがいいだろう。
池江さんは「こういう記事を読んだときに『自分は関係ないな』『これを誰々にやらせよう』などと真っ先に思ってしまう人ほど気を付けたほうがいい」という。まずは何よりも我が身を振り返る。そういう素直さ、謙虚さこそが、子どもと接するときの姿勢として出る。「その素直さをもって、親がまず子どもの言葉をちゃんと受け取っていると、子どもはすべてを受け入れてくれる人に対して心を開きやすくなり、子どもも親の言葉をしっかりと耳に入れるようになります」
子どもを伸ばすために意識したい親の習慣
1.子どもに共感してあげる
子どもが何かを達成したときに親も一緒に「やった!」と共感をしてあげると、子どもに喜びのホルモンがより分泌され、脳の思考回路がどんどん発達していきます。
2.否定する前に共感してあげる
子どもが駄々をこねても、真っ先に否定せず、一度受け入れる 『共感』を示してから否定するようにします。すると子どもは自分を否定されているという感覚になりません。
3.子どもの心を決めつけない
子どもにも感情や、人格や、価値観があります。親が自分の感情を押し付けることなく、子どもを尊重する姿勢そのものが、子どもへの共感を示すことにつながります。
まず親が変わること、指導者が変わること
池江さんは「私はダメな親というのはいないと思っていて、表現の仕方を知らないだけだと思っています」という。
「コミュニケーションは自然とできるようになるもの、という思い込みもあると思います。相手のことを気遣っていなくても気遣っているように思われる人もいれば、気遣っているつもりなのに気遣っていないと思われる人もいます。後者はコミュニケーションの仕方を知らずに大人になっているだけだと思いますそして、それはちょっとしたことで変わることができるのです」
親の子どもに対するコミュニケーションが変わったことで、子どもが激変したケースがある。
小学生低学年のその子は、成績も悪く、何をやるにしても自信がなくオドオドしていた。池江さんが観察すると、塾の先生が子どもに答えを求めているのに、すぐに母親が割って入って答えを言ってしまっていた。池江さんは問題解決に動いた。
「まず親と話し合ったうえで小学生低学年のその子を幼稚園児のクラスに入れました。そのなかで自信を持ってもらおうと。それと母子環境を作ってあげたいと思いました。幼稚園児クラスの場合、子どもとお母さんがギュッとハグをする時間があるのですが、それによって、子どもがだんだんと母親に受け入れられている、という感覚を持てるようになったのです」
もう一つは、母親に子どもの話の聞き方を教えたのだという。
「子どもが何かを言ったら、お母さんも言いたいことがあるだろうけれど、まず我慢して『うんうん』『そうなんだね』と言葉を繰り返してあげましょう、と伝えました。すると翌週、お母さんがやってきて『うちの子が、あんなに色んなことを考えているとは思いませんでした』と喜びとともに報告してくれたのです。その週を境にしてその子は変わっていきましたね。程なく本来のクラスにも戻りました。それくらいの子どもには顕著な変化が出てくるので、親の影響は非常に大きいのです」
この場合良くなかったのは、親の子どもへの過干渉だ。
「多くの家庭では母親が一番偉くなってしまいがちです。でも偉いわけではありません。母親が子どもを自分の充足物だとか、過去にできなかったことを自分の代わりに達成してほしいとか、そういう潜在意識で向き合ってしまうものですが、好ましいとは言えません。子どもには一人の人格があることを尊重しなければいけません」
子どもを尊重し、共感する。そんなコミュニケーションを繰り返しながら、親として次のステップに導いてあげる姿勢が大事だと池江さんは指摘する。
「子どもの『やった!』という達成感に共感しながら、その次のステップとして『じゃあこれはできるかな?』とハードルを用意してあげる。それを越えたらまた共感してあげて、ハードルを用意して、と繰り返していくうちに、子どもはどんどん高いところを目指していきます。ほとんどの親がやりがちなのが、いきなり高いハードルを設定して『頑張ろう!』としてしまうこと。もちろんそれで頑張る子どももいますが、気持ちが萎えてしまい、やる気が起きない子どもも少なからずいるのです。『やった!』『できた!』『乗り越えた!』という達成感を、親と共感できる喜びを知っている子どもは、高いレベルの目標に対しても、大きな達成感と喜びをまた期待します。それが自然とやる気アップに繋がっていくのです」
これらは何も親と子どもの関係だけでなく、サッカーに励む子どもと指導者の関係にも言えるし、応用できるものだ。子どものやる気のスイッチを押すためには、まず親が変わること、指導者が変わること。池江さんはいう。
「変わろうと思う人は誰でも変われます。ただ、これまでに20年、30年という人生を歩んできたわけですから、一週間で変えるのは難しいと思います。焦らずにじっくり、数か月のスパンでゆっくり取り組んでもらえればいいのかなと思います」
子どものために、あなたもチャレンジしてみてはいかがだろうか。
<プロフィール>
池江 俊博(いけえ・としひろ)
高校卒業後、空自戦闘機操縦士になる。その過程で教育に興味を持ち、七田眞博士に師事、以後 20年以上にわたって0歳からの右脳教育、幼児児童の教育そして保護者指導を行う。人間中心カウンセリング、催眠法を習得。NLPトレーナー(サ ンタフェNLP/発達心理学協会認定、ICNLP認定、INA認定)としてコミュニケーショントレーニング指導、メンタルトレーニング指導。幼児教育、能力開発、プチ速読、経営者研 修など多岐にわたり全国各地で活動。現在は年の半分を海外で指導提供している。
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