川崎フロンターレ vs 大阪市ジュネッス U-12年代最高峰の戦いから見えた「戦術的駆け引き」/ジュニサカ取材日記⑦
2018年12月31日
コラム
「8人が目指す全員のゲームの組み立て」を現実にした戦術的なプレー
後半はスタートから大阪市ジュネッスFCが主導権を握りそうだった。それはセンターハーフを経由する攻撃の組み立て回数が徐々に増えつつあったからだ。彼にパスが通ることで、やはり相手のポジションのズレを生み出せる。事実、川崎フロンターレは彼への警戒が強まることで、その両脇や背後に綻びが生じていた。
このあたりから一気に試合が動いた。
川崎フロンターレも守備のポイントがはっきりしたことで攻撃への予測も図りやすくなった。そこで、大阪市ジュネッスFCの一瞬の隙を突いた川崎フロンターレは、ディフェンスの背後のスペースに左サイドバックが抜け出してシュートに持ち込む。一度は相手に弾かれるもセンターハーフがこぼれ球に反応してプッシュ。先制ゴールをあげることに成功した。
その直後から、大阪市ジュネッスFCはセンターフォワードの強みを生かした攻撃を全面に押し出してきた。
すると失点から3分後の後半10分、センターフォワードをポイントに相手守備を中央に寄せた大阪市ジュネッスFCはワンツーなどでボールを前進させつつ、左サイドハーフがディフェンスの脇にあるスペースをうまく突き、同点ゴールを決めた。
試合展開でいうと、川崎フロンターレが先制ゴールを入れた直後からボクシングでいうと殴り合いのような感じだった。冷静さよりも積極的に自分たちでゲームを動かす気持ちが勝り、ゴールへの貪欲な、本能的なプレーが選手たちの心身を支配していた。それは得点の時間帯にも示されている。
後半8分 川崎フロンターレ
後半10分 大阪市ジュネッスFC
後半14分 大阪市ジュネッスFC
後半15分 川崎フロンターレ
後半の様子を、大阪市ジュネッスFCの清水亮監督はこう分析していた。
「2失点目も『3-2-2』に変えて攻撃的にいかないかん状況だったんですけど、交代選手を入れた直後に修正したらよかったなと感じています。『2-3-2』ではバランスよく守備ができていたので失点せずにいきたかったんですけど、攻撃的に出なあかんタイミングでゴールは取れたんですが、すぐ返されちゃうみたいな。
ジュニアユースではよくやるんですが、ジュニアで攻撃と守備の時にフォーメーションを変えるところまでを求めるのは難しかったです。
相手ベンチからも指示があり、『3-2-2』で相性が悪いのは『2-3-2』なんで、僕も相手の監督だったら『2-3-2』にするし、戦術的にやってきたなと思いました。だから、とにかくサイドを避けながら中央中央から攻めさせました。そして、ボールを取られたら即守備に回ってボールをサイドに動かさせることを実行しました。それが効いていた時に勝ち越しゴールを決めたんですが、一瞬の隙でやられてしまいました。一瞬の綻びみたいものはありましたね。
やっぱり、ゴールを入れた後にすぐ決められるのは弱いチームの典型やなと思います。『集中、集中』と、いつも言っても隙は必ず生まれます。後半の途中、『3-2-2』に変えたくらいから殴り合いみたいな試合になったんで、あの時にうちはゴールを奪えたらなという思いはありました。
延長戦はすでに体力がなかったんで、『2-3-2』に変えて一度落ち着かせました。正直『PKで勝てたらな』という延長戦でした」
実は、大阪市ジュネッスFCは今大会まで公式戦で『2-3-2』を使うことはなかったという。しかし、この『2-3-2』がベスト8の東京ヴェルディ戦でおもしろいようにハマり、先制ゴールを決められながらも3対1と快勝した。そのイメージを大切に『2-3-2』がベスト4のアビスパ福岡戦、さらにはこの決勝戦でのベースシステムの採用となった。
結果的に、延長戦では川崎フロンターレがサイドを張り出させて3トップ気味にしたため、大阪市ジュネッスFCは4バック気味の対応となった。だが、彼らは登録選手11人で4日間7試合というハードスケジュールを目一杯戦い、延長戦の段階ではディフェンスから攻撃までつなげる体力は残っていなかった。
勝負はPK戦で負けてしまったが、今大会のベストチームだった。
それはサッカーに不可欠な肉弾戦、技術の質とそれを実現させる判断とメンタル、またチームとしての戦いを可能にする戦術的な思考という点において、失礼ながら町クラブとは思えない戦いを試合ごとに見せてくれたからだ。
それが評価されるように大阪市ジュネッスFCは、今大会の「most impressive Team」を受賞した。これは「ゴールキーパーを含めた8人が目指す全員のゲームの組み立て、日本サッカーが目指す理想像に近いプレーをしているチーム」を、JFAの技術委員が選考する賞だ。
この「8人が目指す全員のゲームの組み立て」を現実にした戦術的なプレーは、川崎フロンターレの高田栄二監督も「うちよりも上だった」と認めており、その苦い表情には「本来であれば、Jクラブの自分たちがそれをやれなければならない」という思いのようなものがにじみ出ていた。
しかし、この決勝を戦った両チームには『相手ありきのプレー』というジュニア年代に足らないサッカーの重要な要素が入っていた。その背景には、両チームの指導者が選手たちにトレーニングから『相手』という要素をしっかりと認識させていることが挙げられる。来年はこういった試合展開、選手たちのプレーがもっと数多く見られることを期待したい。
【特設ページ】JFA 第42回全日本U-12サッカー選手権大会【取材日記】
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