競技人口が少ない。チームの消滅。女子サッカー界の現実から見えた課題【1月特集】
2019年01月30日
育成/環境北信越の現状と、長野の選手出場機会は?
――北信越ではどの県の女子サッカーが強いのでしょうか?
小林氏「福井と新潟でしょうね。新潟はアルビレックス新潟レディースの影響が大きいです。また、福井は『福井丸岡RUCK(ラック)』というフットサルが強いチームや強い学校があります。富山もU12年代は強いです。昨年のキヤノンガールズエイト北信越は富山が優勝していますから。でも、富山にはU15のチームがあまりないようです。4種のチームはあるのですが、その上のカテゴリーの女子クラブが少ないので、中学から他県に流れる傾向にあるようです。そこは知り合いの指導者が悩んでいました」
――他県ですが、新潟の女子サッカーは小中高とカテゴリーのつながりがあるのでしょうか?
小林氏「アルビレックス新潟レディース、グランセナ新潟FCレディースと強豪クラブがあるので、ヒエラルキーという意味ではそこにつながるようなものがあると思います。でも、新潟も南北に長い土地なので、南側はやや乏しさは感じます。U15も点在はしています」
――北信越エリアで指導者間の交流はありますか?
小林氏「北信越大会があるので、少しはあります。ただオープンマインドかどうかはどうでしょう」
――オープンマインドに関しては、全国的に同じようなことが言える部分でしょうから北信越エリアに限ったことではありません。でも、情報交換、あるいは学びのいい機会になることは確かです。
小林氏「私自身もすべてがオープンマインドにしているかは自信がありません。でも、立場上、『長野県全体のレベルが上がってほしい』からいろいろなことを言うようにしています。でも、ライバルチームになると奥歯に物が挟まった物言いになります。思いや考え方があって、受け取る側も素直に聞き入れられないものもあると思います。
サッカーにおいて、私は『まず執着心が前提だ』と思うし、そこをベースに積み上げていってのパスサッカーだと感じています。地元の指導者と話をすると、意外とストーミングの部分は聞き入れられていないように感じています。やっていると言いながら、激しさはない。ということは、聞き取っている中身が自分のサッカー観の範疇のもので発言の本質にまで至っていないのだ、と。一方で、私も言われて届いていないことがあるでしょうね」
――もう少しだけ聞かせてください。女子の試合の出場機会については現状どうなのでしょうか?
小林氏「チームによって様々です。女子の場合、学年がまたがって1つのチームになるため、特に選手本人が『お姉さんたちと試合をやるのが無理!』と怖がる場合もあり、そこはメンタル的なサポートが必要になります。本人がチャレンジできるさじ加減がありますし、当然チャレンジさせない選択もありえます。松本ウイングの場合は、年度始めに保護者会を開いて説明をしています。大まかな一年の試合スケジュールを伝え、県内での活動と県外遠征でこういうところに行きます、と。
うちは年間二回の県大会と年度末にある県外遠征については実力主義で戦います。ただし、可能性があれば出場機会は与えています。通年で参加しているU11リーグやオープン大会、女子のフェスティバルはなるべく均等に、もしくは全員に出場機会を与えます。年度始めに方針説明をしっかり行うので、親御さんの理解は得られています。いいプレーは評価し、うまくいかなかったら質問やアドバイスで気づきを与えるように努めています」
――どうしても女子委員・U12部会長という肩書きを持っていらっしゃるので聞かざるをえないのですが、他のチームを見てどうですか?
小林氏「長野県の女子チームについては、出場機会を与えないというのはないと思います。何が影響しているのかはわかりませんが、女子の場合はどの指導者も出場機会を与えようという意思はあるようです。もちろん決勝トーナメントに入ったらベストメンバーを組むし、それで戦うことが多いです。そこは議論にもなるし、いいことではないのかもしれませんが、各チームで選手と保護者に対して筋は通していると思います」
――女子は男子と環境の違いがあるので複雑ですね。
小林氏「東京や神奈川は電車で移動し、1時間とかからない距離に女子チームがいくつかあって試合をできる環境があります。長野県で言えば、中央(中信)エリアならそれが可能だけれど、一歩エリアを外れるとできないし、中央エリアであっても選手たちに目を向けると広域から集まっています。他県でも地方に行けば、私たちと同じような課題を抱えているのではないかと思います。いつもチームとしての存続と隣り合わせの状況です。いろんな背景があるし、そこを含めて話を進めないといけません。課題そのものが複合的にまたがっていますから。だから、4種統合でいろんな悩ましい問題が出た部分もあるんです」
――今回は立場上、答えに難しい質問にも女子サッカー界のために本音を語ってくださり、感謝します。きっと県内をはじめ、全国の女子サッカーに関わる方々は察してくれるはずです。この小林さんのインタビューをキッカケに、別の地域の方がジュニサカWEBのSNSにコメントを残してくださり、また違うエリアの女子チームの指導者に取材できることを期待したいです。このたびは長い時間いろんな話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。
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